第5話 圭吾の絶望

圭吾は、絶望していた。

自分から「サヨナラ」を言い放っておきながら、悲しみで溢れていた。

自分で自分が嫌いになってしまいそうな・・・そんな気分だった。

実際に壁に向かって拳を2.3回打ち下ろしていた。

「くっそ~・・・・」

圭吾の頬を涙が伝って、すべり落ちた。

あ~やを悲しませないつもりが結局は悲しませることになってしまった。

こんなことなら、こんなことになるんだったら、あ~やにもっと早く別れを告げるべきだった!

こんな最悪の別れになるなんて・・・

圭吾は激しい後悔と自責の念でぐちゃぐちゃになっていた。



「大丈夫?」 

ドアの外からあの彼女の声がする。

圭吾のことが気になっていったんは外に出たものの、戻って来ていたのだ。

「ごめんなさい、彼女が来るなんて思って居なかったから・・・でも、やっぱり彼女に話した方がいいと思うよ。」


圭吾はしばらくして口を開いた。

「いいんだ。これでいいんだ!あ~やには話さないでくれ!」

「もういいから、ほっといてくれないか?」 

半ば投げやりになりながら答えた。


「でも・・・本当にこれで良かったの?」


いいんだ・・・これで良かったんだ。

俺は間違っていない。これが一番あ~やを悲しませないはずなんだ…。

圭吾は自分に言い聞かせるように、何度も何度も呪文のようにその言葉を繰り返していた・・・

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る