第3話 嘘だと言って!

「実は今春から一緒に暮らす予定なんだ」

「え?一緒に暮らすって・・・誰と?」

「部屋に居た・・・つまり、彼女と」。

綾は、今耳にした言葉が間違いであって欲しかった。

「そんなの嘘だよね?あたしのこと好きって言ったよね?あたしを一生大事にするって言ったよね?」

綾はぐちゃぐちゃになりながら圭吾の身体をいやいやをするようにしながらドンドンと叩いた。

「嘘じゃないんだ。・・・・君には悪いと思っている」

「嫌よ、嫌。あたしあなたじゃなきゃダメなの!生きている意味ないのよぉぉ。」

綾はまるでだだを捏ねる子供のように泣きじゃくった。

「お願い、嘘だと言ってよぉぉぉ。」


圭吾は 「ごめん。」 と言うと、綾のドンドンと叩く手を優しく解いた。

これ、今日のホテル代と交通費。と、綾の手にお金を握らせた。

この手を離したら、この手が離れたら、あたしたち、終わっちゃう・・・もう会えなくなってしまう。

心ではわかっていても、身体が動かない。まるで鉛のように重たく感じた。

綾が茫然自失としていると。

もういちどごめんと言い圭吾は走って行ってしまった。



どのくらいの時間そうしていただろう。

5分にも感じたし、数時間にも感じた。

綾は歩道の真ん中にうずくまって、動けずに居た。

行き交う人が避けて通っている。

時々吹く風が、綾の濡れた頬を冷たく叩く。

この世の終わり・・・綾はそう感じていた。もうどうなってもいいような気分にさえなっていた。

優しかった圭吾・・・君だけが全てだと言った言葉。甘い口付け。広い胸。

そしてもう聞けない声・・・・・・・涙が後から後から溢れてくる・・・


ぽろろん♪ ぽろろん♪


メールだ。

圭吾かも知れないと、淡い期待を持ちながら綾はメールを開いた。

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