第2話 突然の裏切り
飛行機から見える景色はいつも物悲しい・・・そう思いつつ綾は東京行きの飛行機の中に居た。
今日は圭吾のバースデー。 得意の手作りケーキは宅配便で送ったし、プレゼントのカフスもバッチリ。
後はいきなり行ってびっくりさせてやろうと綾はわくわくしていた。
わくわくしていたのはそれだけじゃなかった。圭吾と会うのは一ヵ月半前ぶり。
お気に入りの洋服と念入りにセットした髪型、気付いてくれるかしら??
今にもはちきれそうな胸の高鳴りを抑える事が出来ないくらい楽しみだった。
飛行機から降りて、電車に乗り換え、圭吾の家へ。
「あ、もう6時だわ。圭吾が帰ってきちゃう。びっくりさせるんだから急がなきゃ!」
綾が圭吾の家に行くのは今回で3回目。
商店街を抜けて、一つ目の路地を曲がったところが圭吾の家だ。
築10年のアパートの5階の507号室が彼の部屋。綾はドキドキしながら部屋に向かった。
「あれ?電気が点いてる。圭吾が帰って来てるのかしら??」
炊事場の電気が廊下に漏れていた。
“ピンポン”“ピーンポーン”
「は~い」 聞きなれた優しい声が聞こえた。 綾は早る鼓動を抑える事が出来なかった。くらくらするくらいだ。
“ガチャ” 玄関のドアが開いたや否や
「ハッピバースディトゥーユー!」綾は満面の笑みで持ってきたシャンパンを持ち上げた。
「・・・・あ、綾、来るなら来るって言ってくれよ!」
意外な反応に驚きながらも、「ごめ~ん、驚かそうと思って。」「ね、中入っていい?」
圭吾を半ば押しのけるようにして、玄関でブーツを脱ごうとした時。
・・・・・? 違和感を感じた。
しばらくその違和感に綾は気付くことが出来なかった。
あれ?これって女物の靴よね?圭吾って女物の靴持ってたっけ?余りの衝撃に頭が混乱する。
「え・・・?」そして圭吾を見上げたとき・・・その肩越しに女性が立っているのが見えた。
圭吾は慌てて、「ちょっと外に出よう」と言った。
綾は今自分が目にしたものを受け入れられなかった。女性者の靴。肩越しに見えた女性の姿。
圭吾の後ろを2、3歩後ろを歩きながらぼんやりと考えていた。
頭の中で ふんふんふ~ん ふんふんふ~ん いつもの鼻歌がこだまする。
どのくらい歩いただろう・・・混乱した頭は大分すっきりしてきた。
その時、圭吾が重い口を開いた。
「彼女は関係ないんだ、今日、たまたま俺が誕生日だったので祝いに来てくれただけなんだ」
綾は自分の頬が怒りで紅潮していくのを感じた。
「じゃあ、その女性を帰してよ。あたし東京まで来たんだよ。どうしてあたしたちが外に出なきゃいけないの?」
「う・・・うん・・・でも約束をしたんだよ」煮え切らない態度。
「そんなの関係ないじゃん、あたし圭吾の彼女だよね?そうだよね?」
綾は理不尽な圭吾の態度に怒りさえ覚えた。今までこんな感情が自分にあるなんて思いもしなかった。
・・・・・困ったように圭吾はぽつりぽつり語りだした。
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