第13話 RubyMonadology
何処からかピアノの旋律が聴こえてくる。
幼い頃に見た無人演奏ピアノの音…
水辺の一角に浮き立つ花を添えた
御影石で型どった石舞台は、小洒落た白いピアノ専用である。
西洋式を包み隠さず無人で旋律を奏で続けるそれは、しかしながら純和風の旅館に何故かしっくりきていて…無機質なはずの演奏に
何時の日かあのピアノと石舞台を傍に置きたい。無人演奏の不思議さと美しさ、優雅な
静寂を纏って流れる水
咲き誇る花々の縁取り
黒く光沢を放つ御影石
透明さ際立つ硝子の壁
気品溢れるお香の薫り
流麗な滝の音と重なるピアノの音色が小さな私を包んで離さない。
刻を止めてしまった空間にぬいぐるみと独り…
その空間は柔和な刻の糸が絡みついていて、優しい雰囲気にいつまでも其所に留まっていたくなる。
少女の心に酔いしれる夏の日。
その旋律が私の意識を目醒めさせては奮い
もしも、人魚のように泳げたのなら…水の中で真の自由を手に入れられるのだろう。水を自在に操るセイレーンのように…美しくしなやかに海の記憶を携え水と呼応する。一面に輝くアクアブルーも白い光の檻も…私の意のままに。
少女の世界は碧く染まっていた。
私など入る隙もない程に…。
誰しも幾度かは憧れの姿を想像する。
何時かは理想の姿に…存在する真の姿に。
意外にも、本人がその姿に気付くのは最後かもしれない。他人には“見えていて”自分自身にだけ“見えない”ものが本来在るべき姿なのかも知れぬ。
所詮は人間か…彼らの認識など曖昧この上ない。認知能力も髙が知れている。
ひいては砂上の楼閣…此は言い過ぎかも知れぬが、結果を知れば知る程に私の見識も棄て難くなる筈。
『 』だからこそ言える事かもしれないが…。
時間軸を超え、平衡線上の移り変わりも
至極人の世は愚かで醜いものだ。
無知で傍若無人…無価値な人間の世界を築き続ける意味はあるか。
全くないだろう。
三千世界の重鎮達も此の下らない
申し訳無いが人間諸君…我々は実験材料に、この地球と其処で進化を遂げた人類を用いた事を酷く悔やんでいる。結果として…君達人間では特別な発展も望めず、実質的な成果を得られる事は一度もなかった。
我々の期待を上回るどころか私利私欲に溺れ、享楽に
…………………
ところで君。
幾つか魔法は使えるかね。
それとも術が少なからず遣えるか。
宜しい。
ならば、
終にその硝子は砕け飛散する。
粉々に透き通った夏の午後を風で蹴散らし、平穏な昼下がりを打壊しに参上した模様。
あの
何て。
全ては
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