第12話 透明リボン
舞散る
散らばった羽が海面を掠める。
生じる無数の波紋をなぞるように天使は白い爪先で波を切る。
走るように滑空する風の支配者。
あの蠱惑的な
チッ…!
『…駐車場で拾っておくべきだった。』
僅かに後悔したものの、彼は紅玉の正体に検討を付け、あらゆる可能性を推し量っていた。今のところ明確なのは、幾らか難点のある
持ち主の概念と倫理観が“少なからず”反映され現実と成っていく…判断基準の全てが適応した主人最優先の
つまり…
かなりの厄介物であるということだ。
『頼むから“アレ”だけはやめてくれよ…。』
『落ち着け。…気配だけでも察知できれば。』
何とかなる…いや、何とかしなくては。
翼を滑らかに翻しぴたりと動きを止めた。
瞬間、空気の塊が一気に押し寄せる。湧き起こる風圧で髪やシャツの袖が重力に逆らった。波立つ気流を掻き分け、大きな翼でふわりと空気を包む………天使は風に身を任せ気流に添うと、
高く、高く、夜に白く浮かぶ。
まるで無重力の
フッと強く息を吐き呼吸を整える。
柔らかな風が立ち、掌に集めた月光が灯り始めた…そよぐ風に月の涙を
「深紅の光、定め
掌に灯る光は
一列に連なり
…あれは…間違いない。
市民プールだ。
カーナビが導いた目的地。
………天使は疾うに光の先へ。
風よりも速く、雲よりも低く。
「…っこれは…。」
降り注ぐ斜陽…真夏の木漏れ日と蝉時雨。
眩しそうにアクアブルーを散りばめて…昼下がりのプールは
檸檬ソーダに溺れる午後が
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます