第7話 灰と憂晴らし
『いらない…要らない。もう何もかも
煙草を
…この煙草の火が消える頃には、また書類の山とにらめっこだ。さながらオフィスとの
煙草の灰が
零れ落ちてそっと崩れた。
『これも…要らない…か。』
散り際のシミを残して男はベンチを後にした。
美しく淡い灰色が彼を追うように舞っていることにも気付かずに…。
そして今、海に独り。
雲間から零れ落ちる月明かりを身に浴びて
潮の
『…心地いい。』
何もかもが俺を満たしていく。
身体の隅々まで爽快な風が駆け抜けて行く。
何処までも尽きることなく溢れる海風。
この世界で生まれるエネルギーの全てが
俺は本当の自分に戻る。
風を纏うて膨らむ衣服
広げた両腕の指先は確かに風を掴み
月光が背中に弧を描く
注がれた光は夜風と共に彼の身体を浮かび上がらせた
…その姿は
海原に降り立つ天の使ひ
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