第5話 危機一髪(ちょっとバストあり)
上級生である高校生の男子2人に睨まれる俺。
やばい、めっちゃ怖い!! ほんと今日は最悪だ!! なんで学校に遅刻した日に、こんな目にあわなきゃいけないんだ!!
今すぐにでも逃げたい。でもな、
幼馴染である春奈が、俺をじっと見つめている。上級生に絡まれて強張っていた表情が、少しだけ笑んでいたんだ。
たく……、タチが悪いぜ。カッコいいとこ見せたくなるだろうが。
俺は春奈の方へ歩みを進めて行く。春奈の側にいる上級生2人が、俺への視線を強めていく。てか、睨みつけてくる。ひっ!? こ、恐い!! やっぱ無理かも!? い、いやそうはいかねえ!! は、春奈に、いいとこ見せるんだ!! いくぞ、せ~の、
「あっ! あ〜っ!! や、やっと見ちゅけたぞう! は、春にゃ!!」
俺は大声で叫び、盛大に噛んだ。もう、びっくりするくらい。
ぽかーん。
と、俺を不思議そうに見つめる春奈と、上級生の男子2人。静寂な時間が、廊下にいる俺ら4人を包んでいた。
……は、恥ずっ!! おいおい!! どうせならバカにしたように笑ってくれよ!! 全然カッコよくねえ俺!! うぐぐっ……、と、とりあえず、全力で春奈の救出だ!!
「は、春にゃ!! さ、さすがだな!! す、助っ人ふ、2人もみちゅけるとは!! い、いや〜! 助かりますっ!! 俺1人じゃ運びきれない量なんですよぉ〜!!」
噛み噛みの大声を出しながら俺は、上級生2人に詰め寄る。
「は、はあ……? えっとさ……、君、誰?」
ゆるいパーマ野郎が、気だるそうに言う。俺は声を大にして言う。
「申し遅れました!! お、俺は今日学校に1時間以上も遅刻してきた、だ、ダメ男っす!!」
俺は満面の笑みを見せる。なぜ名前を言わないかって? 個人情報だからなっ!! 後からこいつらに探られたりしたら嫌だし!!(怖いし)
「あはは、きみ、なんか面白いね、というか、結構痛い系の―――、うおっ!?」
イケメン高身長野郎の口を無理やり止めた。やり方は簡単だ、俺の持ってる分厚い本の山を、こいつの胸近くに押し付けてやったのさ。そして、
「この本の山よろしくっす!! めっちゃ重いんでこれ!! 手離しますね!! 足元に激落ちだけ注意してください!!」
「ちょ!? ま、待てって!?」
イケメン高身長野郎が、春奈の手を離した。うしっ!! 計画通り!! そいで、くらえ!! グラビデ!!(ただの本の山の重さ)
「うおっ!? お、おも!?」
イケメン高身長野郎が、両手に抱えた本の山に顔をしかめた。そうだろ、そうだろ、俺はそれを備品室へ何往復して運んだことか。もう、その本の束でラストだが、
「ま、まだまだ、本の山が図書室にあ、あるんでっ!! ささっ、先輩方、我と一緒に運びましょう!!」
と、俺は嘘をついて、上級生2人の腕を掴み歩いていく。もちろん、春奈から離れる形でだ。春奈、今のうちに逃げてくれよ。もちろん俺も頃合いを見て、廊下をダッシュして逃げる!! 走っちゃダメだけど、仕方ないよね、こればかりは。うし、完璧な作戦だ。
「おいお~い、ちょっと待てよ」
「いっ!? いだだだだっ!?!?」
俺の右腕に激痛が走った。一体何が!?
俺の右腕が、背中側にまわっていた。こ、これは!? アニメとか漫画で、強キャラが、雑魚キャラの片腕を関節決めながら身動き取れなくするや~つじゃないですか!?
ゆるいパーマ野郎が、いつの間にか俺の後ろにいた。低い声で、囁く。
「きみ、ウザいねぇ~……」
「ひっ!?」
こ、こわっ!?
イケメン高身長野郎が、俺の前に立ちはだかる。冷たい声で、囁く。
「一体なんのつもりかな……?」
こ、こわっ!?
上級生2人に挟まれる俺。この構図はやばい。カツアゲされてる人みたいじゃん!! お、お金出したら解放してくれるかな? って、そんなこと考えている場合ではない!!
「いっ!? いででっ!?!?」
ゆるいパーマ野郎が、俺の腕関節に、痛みをさらに加えてきた。
「遅刻ダメ
「つっ!? あ、そ、そんなとこっす!? お、俺はその!! 今日学校に遅刻した罰として手伝ってまして!」
「だったら、俺に押し付けちゃダメだよね」
イケメン高身長野郎が、嫌味に言う。
「ほら、返すよ」
「うわっ!? ととっ!?」
まさかのグラビデ返しだった。俺はなんとか本の山を抱える。解放された右腕の関節がまだじんじんと痛いし、本の重量が身に染みる。
「遅刻ダメ
「そうそう、本の運搬はきみの仕事みたいだし。俺らは、春奈ちゃんと一緒に作業するから」
「は、はあ!? ぐぐっ!! ちょ、ちょっと待てーーー、ぐえっ!?」
春奈の方へ向かうのを止めようとしたら、ゆるいパーマ野郎に胸ぐらを掴まれた。
「邪魔すんなって言っただろうが」
こ、こえー!?!?
か、体が、恐怖で、ふ、震える……。
「や、やめてください!!」
と、突然大きな声がした。えっ? なっ!? は、春奈!?
春奈が俺らの方へ小走りで向かってくる。ば、ばか! バストが揺れてるぞ!! って違う違う!! に、逃げろよ!!
ゆるいパーマ野郎が、いやらしく笑う。パッと、俺の胸ぐらを離した。
「あ〜、違う違う、ただのスキンシップだから」
んなわけねぇだろ!? あと春奈のバストをガン見すんな!!
「そ、そんな風にはみ、見えません……! せ、先生に、い、言いつけますっ!!」
「あはは、おいおい、そりゃないんじゃない?」
「そんなこと、ありません! ほんと、最低ですッ! 最低ッ!!」
おいおい春奈!? な、なに言ってんだ!? そんなこと言ったら、
「はあ?」
ゆるいパーマ野郎が春奈に向かって行く。春奈が、思わず身構えた。
「違うって言ってんじゃん。謝ってほしいなぁ〜」
「つっ!? そ、そんな必要、あ、ありません!! 絶対にッ!!」
「んだとこら」
ゆるいパーマ野郎が、春奈に手を伸ばした。や、野郎!! 何をする気だ! さ、させるかぁ!!
「ぐあっ!?」
「そ、爽太!?」
俺は、ゆるいパーマ野郎にタックルをかましていた。本の重さもあってか、廊下にど派手に腰をついていた。チャンスだ。
「は、春奈! 逃げろ!! ぐえっ!?」
「て、てめぇ、覚悟はできてんだろうな!!」
起き上がるのはええ!!
俺はまた胸ぐらを掴まれていた。ゆるいパーマ野郎が、拳をちらつかせていた。や、ヤベェ!?!?
「や、やめてッ!!」
春奈の大声が廊下に響く。もう殴られる、と思ったときだった。
「コラぁぁぁ!! 廊下で何やってんだ!!」
野太い怒声が廊下に響く。その先には、俺の憎き敵(本運びの罰を与えた)、担任がいた。
一気に空気が変わる。上級生2人が、動揺しながら互いに目配せする。ほんの数秒のあと、イケメン高身長野郎が春奈にバインダーを返した。ゆるいパーマ野郎が、俺の胸ぐらから手を離した。そして、慌てて逃げて行く。
「は、あはは……」
た、助かった〜……。
「そ、爽太!?」
膝の力がぬけ、廊下に座り込んだ俺に、春奈がしゃがんで近寄る。フワッと、甘くていい香りが、俺の鼻をくすぐる。緊張のとけた身に、優しく染みわたるようだぜ……、あと一瞬、春奈がしゃがんだとき、ぽいんっ、って揺れたなぁ…………。
このあと春奈が、廊下で、うちの担任に事情を説明してくれて、とりあえず一件落着となった。
俺はその間、ただしゃがみ込んだまま、動けなくてさ……。
俺……………、超かっこ悪りぃな…………、ははっ。
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