第4話 超危機(バスト的な意味ではなく)
俺は咄嗟に廊下の角に隠れてしまった。でも気になる!!
そーっと顔を出し様子をうかがう。春奈に馴れ馴れしく話しかけているのは、高校生の二人組だった。
俺の通ってる学校は中高一貫校だ。割と田舎な地域だから生徒数も少なめで、部活動を合同でするくらいだ。校舎も隣り合っていて、ちょくちょく廊下で高校の生徒とすれ違うこともある。
もしかして、は、春奈の部活動の先輩とかか?
「文芸部ってさ、女子2人だけじゃん? しかもさ、君みたいに可愛い中学生の後輩だけ。だからさ、俺ら男での手助けがあったほうが楽でしょ?」
「そうそう、力仕事でいるっしょ?」
そう言って半ば強引に春奈に何やらOKをさせようとしている。一体なんのことだ? てかこいつら、春奈の先輩とか、知り合いじゃ無さそうだな……。
少し身構えている春奈が、顔を強張らせつつ、小さな口をそっと開いた。
「ぶ、部員以外の人の手助けは、な、無くても、問題ないので……。で、ですから、結構ですっ……」
恐る恐る頑張って告げた春奈。明確に拒否の反応を示していた。なのに、
「ふ〜ん……、君もあの子みたいに冷たいね」
2人組のうち、背の高い方がつまらなそうにつぶやいた。
「えっ……!? ど、どういうことですか?」
春奈が戸惑う。すると、もう1人の、緩いパーマをかけたやつが続く。
「だよねぇ〜、ついさっきさ、俺ら同じように冷たくあしらわれたんだよねぇ〜。君の先輩にさ」
「えっ……!? ほ、
「「そうそう」」
上級生の男子2人が、キモいくらいハモって頷いていた。嫌味のある笑みを浮かべながら。
「あなたたちみたいな人は必要ありません、ってきっぱり断られてさ〜」
緩いパーマをかけた上級生が、髪の襟足をいじりながら不満そうに言った。
「そ、それなら、もう私に聞かなくてもーーー」
「俺らとしては心外なんだよね」
春奈の言い分を、背の高い上級生が遮った。
「そのなに? たまたま廊下でさ、文芸部の穂花ちゃんが、顧問と話してるのは聞いてさ。純粋に作業手伝いたいって思って声かけたのに、そう無下にされると……」
「逆に燃えてくるよね〜、そのなに? 中学生の後輩達に良いとこ見せたい的な〜?」
上級生の男子2人が、春奈に詰め寄る。春奈が半歩下がった。だが、
「あっ……!」
春奈が、小さく慌てた声をあげた。緩いパーマをかけている上級生が、春奈の持っていたバインダーを奪っていた。
「じゃあ一緒に行きましょっか」
「あっ、あの!? か、返してっ……!」
春奈がバインダーに手を伸ばしたときだった。
「ひゃっ……!?」
春奈の右手を、背の高い高校生が掴んだ。や、野郎!! な、なに春奈の手、握ってんだ!?
「穂花ちゃんを待たせちゃ悪いだろ? エスコートするよ」
「あ、あの!? 手、手を……!」
「あっ、ずるいぞお前、可愛い後輩の手にぎんの」
「お前は、穂花ちゃんがいるだろ」
「なるほど。じゃあ許す」
上級生2人が嫌な笑いを浮かべながら廊下を進んでいく。春奈を、引き連れて。今にも泣きそうで、怖がってる、俺の……、俺の、大事な、春奈をだっ…………!!
春奈が、あたりをキョロキョロと、何かを探している。きっとそれは…………、口に出さなくても、わかる!!
「だああああ!! お、重すぎるぜぇ!! 本の束がよお!!」
俺は大声を出しながら、廊下の角から飛び出した。
背を向けていた上級生2人が、ぴたりと立ち止まり、振り返ってきた。
「「はあっ?」」
鋭い目つきで俺を睨んでさ。ひえっ!?!? こ、怖え!? 俺なんも悪いことしてないけど!? こ、これだから最近の若者は!! って、俺も若者出すけどねっ!
「そ、爽太ぁ……!」
春奈の、明るい声が聞こえた。
目線が吸い寄せられる。
とても嬉しそうに、顔がほころんでいた。
…………、たく、そんな顔されたら、な、なんとかしなきゃな。
俺は、両足に力を込め、前へ進み出た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます