15:白い餡

 家に戻り、馨は搾乳があると言って先輩と洗面所に行ってしまった。

 これを母乳バンクに寄付することにしたらしい。搾ったものをレミさんが病院まで届けてくれるという。彼女はこの家の仕事がない日でも夕方回収に来てくれるとのこと。

 エルフの乳って、人に飲ませても大丈夫…だよね。


 そんな事を考えていたら二人が乳搾りをする姿を想像してしまった。

 朝からずっと下半身が落ち着いていたので、薬が切れている事など眼中になく、正直油断していた。


 瞬間、下半身が膨れる感覚があった。そして意識が遠のく。


「う~ん、予告なく倒れるとなると必ず付き添いが必要だね」

「浮気防止にもなりますから、私としては構いませんけど」


 そんな会話を聞きながら目が覚めた。

 ちなみに馨の手が股間にあって、白い餡が綺麗に掛かっている。それを興味深げに見ている先輩の眼には星がいっぱい光っている。 


「能条さん、いつもながら手際が良いわね」

「……」

「他意はないから」


 あるとしたらどんな他意だとツッコみたいが、この人がいないと本当に一生意識が戻らないかも知れないという恐怖があって言い出せない。


「それにしても、普段でもこんなに沢山出るものなの。私もい、一応だけどビデオでを見たことがあるけど、そんなにいっぱいは出ていなかったと思うんだけど」

「え、ま、まあ…で…す、ね」

「いつもの十倍は軽く出ていますよ」


 俺が声を上げたら二人が驚いて、体勢を崩してしまった。そして馨の手が──






 先輩が驚いて開けた口の中へ。


「ギャァアアアアア」


 殺人事件の現場を見た時くらいしか出さないだろうという大声で悲鳴をあげる。そこまで嫌わなくてもいいじゃないか。


「タ、タ、タオル」


 俺は先輩がそう言いながらゴクリと飲み込むのをしっかりと見ていた。そんな彼女と目が合う。


「うう~、ちょっと苦くて臭いけど」

「けど…」

「ちょっとだけクセになる、か、も」


 そんなことを言って上目遣いで見ないで欲しい。

 校内でも美人で有名な先輩がそういうことをするのはずるいと思う。


「ま、また…薬が切れた時には馨の世話になるでしょうから、その時は」

「の、能条さんじゃなくて、わた…」

「コホン、悠生は私の彼ですから」


 さすがに先輩の言葉でも聞いてられないことはあるのだろう。俺としてはとても嬉しい。


「先輩、今回のことはどの位で薬の効果が切れるかの目安にもなります。それがわかったと言うことでこの件はおしまいにしましょう」


 いったんはこの場を納めて、とにかく薬を飲まないとまた俺が気絶してしまう。半日と言ってもだいたい十時間前後の効き目のようだから、朝晩の朝食後だと効果がなくなる時間ができてしまうようだ。

 一番の問題は朝の目覚めの時なので、逆算してその時間まで効いているようにすると、夕方に空白の時間ができてしまう。

 頂いた薬は一週間分あるので、後日の診察時に容量なり製剤なりの加減で効果を調整して貰うようにするとして、今週だけは早めに学校から戻り、刺激の少ない暮らしをしようと思った。

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