4:脳貧血

 目が覚めたのは二、三分後だろうか。

 全裸のまま部室にあるベンチに寝かせられていた。


「あはは、エルフが人間の男を攫う理由がわかったよ」


 面白そうな顔をして先輩が俺の下半身を覗いている。


「あれじゃ、セックスはできない。硬くなる度に貧血を起こすようじゃ話にならないだろう」


 どうやら冗談ごとではなく、下半身に血液が行きすぎて脳貧血になったらしい。


「これがその証拠」


 そう言って、スマホを見せる。そこには二リットルのペットボトルもかくやという俺の持ち物が写っている。


「こんなのを入れられる女性はいないし、仮に入れても男が貧血で倒れたんじゃ、ね」


 まあ、あれだけの血液が身体から流れていけばそういう状態になるのだろう。

 要するにエルフの男性は不能者と一緒なのだ。結果的にEDと変わりがない。過ぎたるは尚及ばざるがごとしとは正にこの状態だ。


「でも、わかったことが沢山あるね。やっぱりエルフの実物がいるといないじゃ大違いだよ」

「と言うと」

「ふふ、これを見てよ」


 そこにはバスタオルを巻いた馨がいた。


「さすがにあなたに馨ちゃんの全裸を見せる訳にはいかないけど」


 いや、何度も見てるし、VIOエリアにホクロが三つあることも知っているんですけど…というツッコミはしないでいたら、馨が上半身を露わにした。

 そこにはアメコミどころではないド迫力ボディを身に纏った姿があった。


 俺の知る彼女はほぼ寸胴と言ってよく、ブラジャーだって見栄で着けているとしか思えないほどだった。それでも俺が胸を揉むと先端が可愛く起立するのだけど。とても揉み応えがあるとは言えなかった……のだが、今は片手では絶対に掌に納めきれない。両手でもどうかと言うほど巨大なモノになっている。


 凄い……あれに顔を埋めたい……そう思ったらまた意識を失った。



「これじゃ授業を受けられないね」

「ですね。どうしましょうか」

「とりあえず一限は保健室でしょ。まだ登校時間中だからあとで私と二人で連れて行こ」

「わかりましたが……」


 そんな会話が耳に残った。



 気が付くと保健室のベッドに寝かされていた。


「あ、鬼城院君、起きたのね」


 声を掛けてくれたのは保健の九重ここのえ桃依ももよ先生。


「あの~、俺」

「心配しないで、安条さんから事情は聞いているわ」


 そう、俺は雛子先輩から怪しい薬を何度も飲まされ、ある時は吐き気、ある時は目眩、そしてある時は動悸が止まらず、何度も何度も放課後の時間お世話になっているのだ。


「でね、うふふ…エルフって凄いのね。初めて見たわ」


 下半身の感触がいつもと違うと見れば、何も身に付けていない。いわゆるモロ出し状態。


「柔らかい状態でもアルコールの瓶くらいはあるのね」

「あ、あの」

「ふふ、大丈夫よ。貧血の原因を知りたかっただけよ。それとこのことは誰にも口外しないから安心してね」


 先生は皆から合法ロリと言われるくらい小さくて可愛い。そして皆に優しく、とても人気がある。そんな先生がとても興味深そうに自分の身体を見ている。


「それにしても、エルフって色々凄いのね。勉強になるわ」


 そう言いながらふくらはぎに手を添え、軽く擦られる。時折太股まで散歩してくる掌の優しく柔らかい感覚が絶妙で、とても良い気分になって、頭の血が奪われていく感覚がある。


「あらあら、って。これじゃダメよね」

「だ、だ、だいじょ、ぶ……」


 再び意識を失い、目が覚めたのはそれから暫く経ってのことだった。

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