3:身体測定

「どれどれ…いや~、想像通りというか、こりゃ最高だ」


 俺達の顔を見て雛子先輩はご満悦の様子で声を出す。


「バカ言わないでください。これじゃ授業も受けられません」

「そんなことないよ。ま、多少のカムフラージュはいるかも知れないが、そんなの些細なことだよ」

「雛子先輩、これじゃ両親にも顔を見せられません。どうしてくれるんですか」


 馨もさすがに怒りを露わにして先輩に迫るのだが、この手のやり取りには慣れているのだろう。


「大丈夫、だ~いじょ~ぶ。お姉さんにまっかせなさ~い。でね、それよりも大事なことがあるのよ」


 全然堪えていない様子で、出てきたのはとんでもない言葉だ。


「裸になって身体測定させてくれない」

「は、何言ってるんですか。大事なのは今どうするかですよ。このままじゃ困るんです」

「それは絶対に何とかするよ。学校も休まなくて済むようにするから大丈夫」

「さっきから大丈夫しか言ってませんけど…」

「とにかく絶対に何とかする。それができなければ私が部長を辞めるよ」

「責任の取り方として全然軽い気がしますけど」

「それ位何とか出来る自信があると言うことだよ」



 そんなやり取りをしているうちに俺は全裸になって、身体測定をされるのであった。


 身長は変わらないが、体重は増加している。筋肉が増えたのだろう。

 耳が伸び、聴力も上がっている気がする。視力は言わずもがなで、嗅覚も多少敏感になっているようだ。

 頭髪以外の体毛は全て抜け落ち、ヒゲもない。脇の下もVゾーンもツルツル。その中で男性器だけが異様に大きい。

 尻の筋肉が増え、太腿周りが倍近くなっている。そして十センチほどの短い尻尾が生えている。ここには筋肉が着いていないようで、だらりと垂れ下がっているのが鏡越しに見える。ちなみに撫でると気持ちが良い。


「ふむ、男のエルフの情報が極端に少ないからどうなるかと思ったが、これはこれは興味深いことになってるな」


 雛子先輩は狩人の眼で舐めるように身体を見てくる。


「ゴクリ」


 馨が俺の下半身を見て喉を鳴らす。

 馨とは中一の時からずっと同じクラスだった。雛子先輩は綺麗なお姉さん系のオトナ美人なのだが、馨はそれよりも遙かに目立たない容姿で、顔面偏差値は五十程度。スタイルだって凹凸のない寸胴体形をしていた。

 ただ庇護欲をそそるような仕草が可愛いのと自分同様成績が良いため、一緒に先生とやりとりする機会が多く、話す機会がそれなりにあった。結果、中三の時に俺から告白して付き合うことになり、今に至っている。

 因みに、カップルとして経験することは全て済ませてある。お互い二人きりになると性欲を隠さないし、身体の相性もかなり良いと思っている。


 とは言え、


「馨、その眼」


 そういう色っぽい眼で見られるだけで下半身は正直に反応する。

 血が吸い取られていくのを感じるくらいにある部分が膨れている。


「ふむ、これがエルフに男がいない理由かも」


 アブナイ漫画のワンシーンみたいに巨大化したそれはもはや凶器だ。こんなものを人間の女性は受け入れられないだろう。エルフの女性が人間と同じだけのキャパシティしかないとすれば、全員が壊されてしまうから厄災を始めから間引いておくことはあるのかも知れない。


「まあ、それはあとで解明するとして…」


 隣に立つ馨はと見れば無茶苦茶に変わっている。

 まず顔からして違う。丸顔だったのが少し顎がシャープになり、眼が大きくなり、唇も小さく、薄くなっている──とんでもない美人だ。顔面偏差値は優に70を越えている。

 髪の色も若干青みがかっているように見える。


 そして、カラダは以前の面影が全くなくなっている。

 凹凸はハッキリしていて、制服越しでも胸と尻の膨らみはグラビアアイドルなんぞ目ではない。アメリカンコミックの世界だ。凄い。

 この体形に合うブラジャーもパンツも馨は持っていないだろう。どうやってここまで来た…

 俺同様に体毛は全て抜けていて、ツルツルの手足が見えている。恐らくVIOも…華奢だった手足にもしっかり筋肉が着いている。このカラダを見て興奮しないオトコは誰一人いないだろう。


 そんな風に思っていたら身体の力が抜けていく。目の前が真っ白になり、俺は立っていられなくなった。

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