2:違和感
朝五時、普段はまだ寝ている時間だ。
寝返りを打った身体に違和感を感じて目が覚めた。
枕に当たる耳の感じが少しおかしい。腰にも違和感がある。目を開ければやけにハッキリものが見える。視力0.1以下で眼鏡なしには生活できなかったのが嘘のようだ。
「どうした…俺」
枕元にあるスマホに目をやればメッセージが届いている。
『悠生、私のカラダおかしくなっちゃった』
シンプルなメッセージには一枚の写真が添えられていた。
それを見た俺は完全に覚醒した。
洗面所に行き、自分の姿を鏡で見ると耳が薄くなり、先が尖っている。
「これって…」
大急ぎで自分の着ている服を脱ぐ、もちろん全裸だ。
細かった身体の肉付きが良くなり、腹筋が割れている。
そして、股の間に目をやる──大きい、これじゃ○並みじゃないか。
「悠生、どうかしたの」
この姿を母親に見せるわけにはいかない。大急ぎでパンツを穿こうとしたら尻の所に引っかかるものがあり、自分自身に痛みを感じる。後ろを見れば十センチ程度の尻尾が生えていて、そこにゴムが引っかかっている。
無理矢理引き上げ、それを隠してから大急ぎで肌着を着る。筋肉が邪魔になって袖が上手く入らない。
「だ、だいじょうぶだから。気にしないで」
「そう、ならいいけど」
大丈夫なわけがない。
大急ぎで部屋に戻り、雛子先輩に電話をする。リアルタイムで話をしない訳にはいかなかった。
「雛子先輩、こ、これ、どうしてくれるんです!」
映像で見せたのは特徴的な耳だ。
「ふぁあ……鬼城院くぅん、おっぱよう……ふむ、成功のようだね」
「なに悠長なこと言ってるんですか。これじゃ学校どころかどこにも行けないでしょ」
「そう、そんなこと無いと思うけど」
「バカ言ってないでどうにかしてくださいよ」
「すぐには無理だよ。薬が切れないとダメだけど、遺伝子レベルで書き換えてるから元に戻るまでには最低でも二十日はかかるよ」
「は、そんな馬鹿なことって……」
「ところで安条さんはどうしたのかな」
そうだ、こんな身体になったのは俺だけじゃなかったのだ。
「馨から大変なことになったと連絡が来ました。写真もありますけど、先輩に送るのはちょっと」
馨の写真は上半身を写したものだ。裸の彼女の写真を見せる訳にはいかない。
「とにかく急いで学校に来てください。俺達もすぐ行きますから」
母親が弁当を作ってくれているが、それを待っている余裕はないので、仲間から急に連絡が来たからと言って制服に着替えたらすぐに家を出た。
体形が変わっているのと尻尾のせいでもの凄く違和感がある。
尻尾が上手く隠せているかどうかわからないが、恐らく多少の膨らみはあるだろう。スカートならどんなに良かったかと思いながら学校に急いだ。
途中で馨と合流して、二人で部室に着いたのは七時前だった。
運動系の部活がしている朝練のお蔭で校門は開いていた。部室に駆け込むと程なく雛子先輩がまだ眠そうな顔をしながらやってきた。
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