4話 遭遇_2
息が荒い。心臓がバクバクと脈打つ。
「大丈夫ですか?」
大丈夫じゃない、ちっとも大丈夫じゃないと、そう言おうと思っても言葉がマトモに出てこない辺りどれだけ必死だったのかがよく分かる。ココは鬼追坂の中腹にある神社。そんなモンあったか?と過去の記憶をほじくり返せば、よくよく考えればこの辺りまで来たことが無かったのを思い出した。
「この辺りの方では無いようですね。」
へたり込む俺の頭上から透き通った良い声が聞こえ、次に声の余韻に浸る俺の頬を冷たい何かが触れた。見上げれば腰当たりまで伸びる長い髪をした女がほほ笑みながら俺を見ていて、冷えた水の入ったコップを俺の頬に伸ばしていた。
「あぁ。まあ、そうだな。久しぶりに戻ってきた。いやそれよりもッ!!」
何とも素っ気ない返事だが余裕が無かったから仕方が無い。が、そんな事よりもイカれた女だ。あの速度ならもう追い付かれていても不思議じゃない……
「大丈夫ですよ。」
「何がだよ?アンタは知らないだろうが妙な格好した女がッ!!」
「ソレはアレのことですか?」
相変わらず良く透き通る声で語り掛ける女がそう言いながら俺の後ろを指さすと、俺はつられるように背中へと視線を移し、"ヒッ"と情けない声を上げた。ソコには滅茶苦茶な速度で俺を追いかけてきた女の姿があった。
が、その女は何をどうしてか俺を見失っているようで神社の周囲をウロウロとしている。こんな粗末で、しかも壁らしい壁は無く
「ウフフ。だから大丈夫と言ったでしょう?」
「なに?なんだコレ?どうなってるの?」
「一種の結界です。ココはそういう場ですから。」
俺を落ち着かせるような声が聞こえた。不思議だ。何処かで聞いたことがある様な無いような、それなのに不快感や違和感など感じず、寧ろ聞けば聞くほどに落ち着く良い声だ。
「でも、夜にこの辺りを走るなんて無謀ですよ?それにこの辺りにお住まいならば、何故に
「
そう聞いた俺はポケットを弄った。どうしても外に出るならと手渡してきた
「でも、伝承って伝わるにはそれなりの理由があるんですよ。」
女はまるで俺の心を読んでいるかのように、微笑みながら答えた。バカバカしいと俺は思ったが、しかし女は尚も微笑みながら俺に色々な事を語ってくれた。この場所の事、あの女の事。その他にも色々。
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