第27話:江住さんが僕の部屋に来た


「はぁー、私 大丈夫だったかな?」



 江住さんが僕の部屋でクッションに座って息をついた。



「母さんも恵美めぐみもメチャクチャ喜んでたから大丈夫だよ」


「そうかな、なにか粗相がなかったかな?」


「うーん、完璧すぎるまでに完璧だったと思うよ」


「そう? よかったーーー」



 少し気が楽になったらしい。


 江住さんが家に来て、リビングで小一時間 母さんと恵美の相手をしてくれていた。ちなみに、父さんは今日仕事だったのでいなかった。


 僕の彼女が遊びに来ると聞いて、会社を休もうとしていたみたいだけどどうしても休めなかったらしい。


 僕に彼女ができることがそんなに大事件なのか。そして、うちをあげて江住さんの来訪を歓迎しているのが分かった。


 たしかに、江住さんは可愛いし、感じもいいし、社交的だ。今日もちょっと制服っぽい感じの服で、スカートの裾にフリルがついていたりして、軽くロリータっぽい服ですごく可愛かった。


 彼女のこうした新しい1面を見せてもらう度に、僕は彼女のことが益々好きになって行った。



 *



「ここが、宇留戸くんの部屋なんだね」



 江住さんが座ったまま きょろきょろと部屋の中を見渡した。なんだか、僕の心を見られているようで、なんだかすごく恥ずかしかった。


 ちゃんと昨日までに大掃除して、変なものは表から見えない様にちゃんと隠した。



「すごく片付いてるんだね。男の子の部屋だからもっと散らかってると思ってた」


「昨日、一生懸命片付けたからね」


「ふふふ、片付けてくれたんだ」



 江住さんが笑ってくれた。



「女の子を部屋に呼ぶのが初めてで……」


「私も男の子の部屋に来るの初めてだよ」


「そうなんだ……なんか嬉しいな」


「へへへ……」



 江住さんはホントに可愛い。最高の彼女じゃないだろうか。


 そうそう、マンガもちゃんと事前に恵美から借りて僕の部屋に置いている。



「そうだ、少女マンガって恵美ちゃんのだったんだね」


「あ、分かった?」


「『なんで男子なのに少女マンガ?』って思ってたんだよ。あんな可愛い妹ちゃんがいたんだね」


「可愛いのかな? 妹だからよく分からなくて……」


「うっわ! 恵美ちゃんすっごく可愛いよ! クラスでもかなりモテるんじゃないかな!?」



 そう言えば、そんなことを言っていたような……実の妹なんてラノベやアニメと違ってあまり興味ないというか、良いことの方が少ないのだ。



「あ、その少女マンガは、恵美のおすすめをいくつか準備しといたから、色々読んでみて それも貸してもらえるように話はつけといたから」


「わ、そうなんだ。嬉しい♪ もしかして、妹ちゃんとも少女マンガの話できるかな?」


「多分できると思う。あいつ僕と違ってコミュニケーション能力高いから」


「宇留戸くんは、確かに口数は少ないけど、出てきた一言が重たいっていうか、価値があるっていうか……とにかく、いいと思うよ?」



 そんな風に思ってくれていたのか。嬉しいな。



「あ、あのっ! 宇留戸くん!」


「はい」



 急に江住さんが意を決した様に話し始めたので、思わず素の感じで返事をしてしまった僕だった。




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