第18話:告白の答え
場所は駅。江住さんの家の最寄り駅のホーム。何回か電車が通り過ぎて行った。電車が通り過ぎるたびに江住さんの髪が少しだけ風に棚引く。そして、その後 少しだけ静寂が訪れる。
僕と江住さんは棒立ちで向かい合っている。
―――
デートの最後に、
―――
僕は既に彼女の取説にこの様に書き込み済みだ。彼女は僕の告白を断らない。それは分かってる。それは分かっていても、「万が一」をどうしても考えてしまう。
しかも、人生初めての告白だ。緊張しない方がどうかしている。
「江住さん……」
「は、はい……」
彼女もなにか雰囲気から察している様子。
「今日は楽しかったよ」
「うん……」
「その……これからも、僕と……また こうして遊んでほしいんだ」
「うん……」
「僕と……付き合ってほしい!」
「はっ、はひっ」
「……」
「……嚙んじゃった」
「OK……ってことでいいのかな?」
「はい、よろしくお願いします」
江住さんは俯いて顔が真っ赤。そして、僕もきっと顔は真っ赤だっただろう。
「その……家まで送るよ」
「ありがとう」
僕たちは無事付き合い始めたのだった。
*
「兄さん、結果は……聞かなくても分かります」
家で僕はある症状に見舞われていて、深刻な状況だった。どうやってもそれが治らない。顔の皮が異常に突っ張ているのだ、痛いほどに。
「兄さん、分かりましたから、そのニヤケ顔 何とかなりませんか? 無性にムカつくんですけど」
「そう言うなよ、僕は今、すごく困っているんだ」
「全っ然っ、そうは見えないですけど!?」
「顔の皮が異常に突っ張っているんだ!」
「そりゃ、それだけニヤケていたら顔くらい痛くなるでしょう。どうせなら、自分の部屋で密かにニヤケてください」
「でも、今日何があったのか、
「要らないですから! もう8割がた把握してますし!」
「そう言うなよ、聞いてくれよ!」
「あー、あー、聞こえない聞こえない」
そう言いながら、恵美は耳に掌を当てたり離したりして僕の言葉が聞こえない様にしていた。
そして、そのまま恵美はそのまま自分の部屋に行ってしまった。なぜか、僕は恵美に嫌われ気味みたいだ。
その日は、本当に夢見がちで江住さんにメッセージを送ってみると、すぐに返事が返ってきた。
「学校では付き合ってること秘密にする?」
『言いたい! 恥ずかしいけど
尚ちゃんって福田さんか。別に言ってもいいけど、揶揄われないかな? でも、江住さんに「だめかな?」とか聞かれたら断れるわけがない。
「いいよ、僕は。でも揶揄われたら助けてね?」
『もちろんだよ! でも、尚ちゃんは揶揄ったりしないよ?」
そうなのか。まあ、江住さんの友達だし、信じていいだろう。明日の登校を不安に思いつつ、楽しみにもしている僕だった。
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