第5話:彼女に質問
「
僕のコミュニケーションスキルではそれとなく聞き出すことは、まず不可能だろう。多少会話の流れが変でも聞きたいことをズバリ聞いてみることにした。
「江住さん、犬と猫だったらどっちが好き?」
「え? 犬と猫? うーん、どっちも好きだけど、どっちかって言ったら、猫かなぁ……」
「そうなんだ。僕も猫派かな」
「そうなんだぁ、可愛いよね! 猫!」
江住さんが目を細めて笑う。すごく可愛い笑顔。本当に猫が好きなんだろうなぁ。
「猫飼ってるの?」
「うん、1匹……」
「なんて名前?」
「それは……あ、
「はよー」
「尚ちゃん」とは、江住さんと仲が良い女の子の1人、福田さんのことだ。江住さん、福田さん、加留部さんがいつも仲良くつるんでいる。
福田さんは、江住さんの席の前なので、教室に入るとまっすぐ江住さんの前に来た。
「あれ? 宇留戸くん? 珍しい取り合わせね」
「うん、宇留戸くん話してみたら面白いんだよぉ!」
「いや……そんな……」
「で、何の話?」
そう言いながら、福田さんは自分の席に着きカバンを机の上に置くと横向きに椅子に座って後ろの江住さんと話し始めてしまった。
こうなると僕は入り込むことなどできはしない。当然、この後 僕と江住さんが交わした会話と言えば、放課後の「じゃあね」だけだった。
***
家に帰り着き、僕は改めて思った。収穫はあった。
この「
そして、彼女はこの存在を知らない。これを全部読み込むことで彼女のことを深く知ることができる。
今日の一件だって、江住さんの変な感じの答えは「コンプレックス」の欄にあった。
―――
コンプレックス
ペットの「ねこ太」という名前がセンスがないと、以前友人に指摘されてから、飼い猫の名前を聞かれても正確には回答せず、誤魔化すようにしている。
―――
そうだったのーーー!? もっとちゃんと読みこめばよかった!
そして、この事柄は益々この「
猫を飼っていることはむしろ聞いてほしかったこと柄だろう。猫好きなのだから。僕は猫の種類を聞くくらいまでで納めておいて、その猫を誉めればよかったんだ。
正解を今気づいたとしても遅い。
僕は、改めて「
それを考えるうちに、僕は「相手と仲良くなるための法則」のような物に行きついたのだった。
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