第4話:彼女にアピールできる項目

 僕は、江住さんの取説を読み進め、僕が彼女に好かれるようなことをアピールできる項目を探していた。


 そんな中、1ついい項目を見つけたのだ。


 それは「仕様表」の欄にもあった。



―――

ペット

猫を1匹飼っている(名前は、ねこ太)

―――



 そして、「好きなもの」の欄にもあった。



―――

好きな物

猫。犬派と猫派で分かれるとしたら、迷わず猫派。しかし、通常時は空気を読み「どちらかと言えば」という枕詞を付けることで人間関係の決定的な摩擦を回避しています。

―――



 江住さん、中々、色々配慮しているんだなぁ。流石クラスで敵なしの人気ナンバー1だ。敵を作らないことも、好かれることの秘訣なのかもしれない。


 これらの情報を元に、僕は明日、彼女にコンタクトを取ることを決意した。



 ***



 翌日の教室。僕は、江住さんと会話するタイミングを増やすためにいつもより30分早く学校に着いた。


 彼女はいつも早めに教室に着くのだ。僕は通常、チャイムが鳴る5分前くらいに着くように時間を調整していたので、朝は彼女と挨拶くらいしか交わさなかった。


 なぜそんなギリギリかと言えば、教室で特に話す相手もいないのであまり時間が長いと間が持たなかったから。



 教室には既に数名の生徒が来ていて、好きなように固まって話をしている。江住さんは既に席についているけど、いつも仲良くしている他の女子はまだ来ていないらしく、一人で座ったままだ。


 すごくチャンス!


 僕は、おもむろに教室に入り、江住さんの隣の席である自分の席を目指して歩いた。



「あ、おはよう。宇留戸くん。今日は早いね」


「あぅ……はよ……」



 それだけ言って、僕は自分の席に着き、カバンを机横のフックにかけた。


 ……僕は人見知りだったー‼ クラスの人気者トップの女子に話しかけるだけのコミュニケーションスキルが無かった! 全ての計画が破綻したーーー!



「……」


「……」



 とりあえず、席について横並びだけど、会話がない! 気まずさマックス!



「江住さんってさ、身長148センチ?」


「え⁉ ええ!? そ、そうだけど、よく分かったね!」



 気まずさから無理やり話しかけたけど、話題を最大限に間違えたーーー!



「う、うん……なんとなく。雰囲気で……」


「ぷっ、あはははは。宇留戸くんっておもしろいね! 今まで誤解してたかも」


「ご、誤解?」



 やっと僕は、ここで江住さんの方に少し身体を向けた。



「私、宇留戸くんに嫌われてると思ってたから。こんな冗談言ってくれるなんて、今日は早く来てよかった♪」


「……」



 ここで小粋な返しができれば、僕はきっと陰キャボッチキャラじゃなかっただろう。せっかくいいことっぽいことを言ってもらったのに、華麗にスルーしてしまった。


 それはそうと、あの取説に書いてあったデータは本当だった。身長148センチ。流石に体重やB・W・Hなんかは確認することができない。


 そうだ! 取説!



「江住さん、取説……どう思う?」



 なんだその質問はーーーーー! 僕1回死んだ方が良いんじゃないの⁉



「トリセツ? 取扱説明書? あ、西野カナ? いいよね、西野カナ。可愛いと思うよ。宇留戸くん、西野カナ好きなの?」


「え? うん、まぁ……」



 江住さんは「江住えすみ恋愛れあ取扱説明書」に反応しなかった。じゃあ、あれは一体誰が……


 ここで、僕はもう一つ踏み込んで質問することにした。

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