第3話:僕が知りたい彼女の情報
江住さんの取説を読み進めて今度は「基本編」についてみることにした。なぜだろう、僕の鼓動が激しい。これまでテレビやゲーム機の取説は見たことがあるけど、こんなに胸が高鳴る取説は過去にない。
はやる気持ちを抑えながら、できるだけ丁寧に「基本編」のページを開いた。
取説に書かれている項目を見ると以下のような物があった。
―――
好きなタイプの人
嫌いなタイプの人
好きなシチュエーション
嫌いなシチュエーション
コンプレックス
―――
取説を持っている僕の手がわなわなと震えているのに気づいた。彼女の「好きなタイプの人」と「嫌いなタイプの人」を知ることで、自分を「好きなタイプの人」に寄せていけばいいのだ。
それで、僕は彼女の理想の男になれる。
そして、「好きなシチュエーション」を知ることで、それにそった告白をすればOKがもらえる可能性が高い!
ただ、僕はアニメやラノベの主人公のように浅はかじゃない。現状を手放しに信じる様な愚か者じゃない。確認はする! 確認はするけど……
まずは、読み進めることにしたのだった。
―――
好きなタイプの人
他人の悪口や日ごろの愚痴を口にしない人物が好みで、内面を重視し、外見へのこだわりは特にありません。
好きになった人物がそのまま理想像になって行きます。
―――
フツメンの僕にとってとても嬉しい情報だった。
しかも、「誠実な人物」の定義などについても詳細に説明があった。授業中に消しゴムを落としたのを気づいたら拾ってくれる、など具体例がたくさん書かれてあった。
たしかに、冷蔵庫の取説などもドアポケットに入れたらいいものとか、チルド室に入れた方がいいものとか具体的な物について記載があるな。アレと同じと考えたらいいのだろうか。
他人の悪いところは目につくことがあるけれど、僕は悪口はあまり言わない。言う相手がいないというのもあるけど……
愚痴についても不満を感じない聖人君主じゃないけど、それをわざわざ他人に言ったりはしない。言う相手がいないというのもあるけど……
ここで僕は気づいた。
この情報を得て、明日、江住さんにアピールするとしてなんて言う?
「僕、誠実なんだぁ」
「僕、嘘つかないんだぁ」
「僕、他人の悪口言わないんだぁ」
「僕、愚痴を言わないんだぁ」
こんなことを言おうもんなら、ヤバいヤツ決定だ。残念、これはアピールに使えない。
しょうがないので、その他の項目にも目を通すことにした。なにかアピールするための手掛かりになれば、と思って。
冷蔵庫やスマホの取説だったらこんなに興味を持って読んだりしないけど、これは江住さんの取説。一言一句読み逃さない気持ちで読んでいた。
そして、この考えは当たっていて、アピールするのにぴったりな項目を発見するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます