第2話:僕はそれを家に持ち帰った
僕は家に帰って自分の机の上に教室で拾ったそれを置いた。
「
漠然と、これがヤバいものだと理解した。
白い冊子は手書きとか、手作りとかじゃなくて、印刷されたものだった。
テレビや洗濯機の取説みたいにちゃんとした冊子だった。
なんだこれ!?
なぜ、江住さんの名前が書かれているんだ!?
恐る恐る僕は、冊子のページを開いた。
『この「
なんだこれ。冗談にしては手が込んでいる。
本好きの僕としては、無意識の目次の欄を見て全体を把握しようとした。
『基本編、応用編、仕様表』の大きく3つに分かれているようだ。ラノベならば頭から読み進めるのだけど、これは取説だ。
先に「仕様表」を見てみることにした。
『身長:148cm
体重:47kg
B
・
・
・』
ちょっと待て! ちょっと待て!
僕はバンッと取説を閉じて、机に叩きつけた。
本当かどうか分からないけど、めちゃくちゃ赤裸々に個人情報が書かれてるじゃないか!
ご丁寧にバスト、ウェスト、ヒップについても魅力的な数字が並んでいる。これは僕が見ても犯罪にならないの⁉ 事案!? 掴まる!? 逮捕!?
そのまま下を読み進めると、「視力:左1.5、右1.5」とか「靴のサイズ:左23・0、右23.0」とか、肩幅、腕の長さなど色々なことが数値で書かれていて表になっていた。
更に下には、家族構成やペットのことも書かれている。
「なんだこれ……」
変な汗が出てきたのだけど、このデータが正しいのか、判断することが僕にはできないことが分かった。
なぜなら、僕が彼女について知っていることと言えば、名前とすごく可愛いってことくらい。
僕が持っている情報は全て「定性的」。つまり「すごく」可愛いなど人によってその程度が変わる言い方。
一方で、この取説に書かれている仕様は、全て「定量的」。148センチは、誰が見ても148センチ。数値を使って誤解がないように示した言い方。
正に、取説だった。
この取説が、冗談の産物なのか、本物なのか(本物とは!?)、いずれにしてもこんな個人的なことを書き連ねる目的ってなんなんだ!?
そして、改めて僕はとんでもないものを拾ってしまったことを実感していた。
ただ、既に家に持ち帰っている。これを作ったのが仮に江住さんだとしたら、無くしてしまって焦っているかもしれない。慌てて教室に戻ってきて探すかもしれない。それでも絶対に見つからないだろう。
なぜなら、ここにあって、僕がみているのだから。
僕は、もう少し情報を得るために、「基本編」の方にページを移動した。そこで、今僕が最も知りたい彼女の情報を見つけてしまうのであった。
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