第2話 そうだ、人面犬を見つけよう!
(SE)チャイムの音
モブ(1)
「きりーつ、れい」
モブ(大勢)
「「「ありがとうございましたぁ」」」
(SE)教室のざわめき、迫る足音
リナ
「キョーン、キョン!」
キョン
「小泉今日子かしら?」
リナ
「それ、だあれ?」
キョン
「え⁉ 小泉今日子を知らないの?」
リナ
「知らなーい。有名なの? ユーチューバー? ティックトッカー?」
キョン
「ごめんなさい。私がわるかったわ。それで、今日はどうしたの?」
リナ
「そうだった。あのね、あたし
キョン
「人面犬」
リナ
「そう! 人の顔をした犬なの!!」
キョン
「それはそうでしょうね。名前のまんまだもの」
リナ
「自分と同じ顔の人面犬を見つけたら、その人は死んじゃうんだってぇ」
キョン
「人面犬ってそんな話だったかしら。なにかと混ざってるんじゃない?」
リナ
「あとね、声を掛けたら『なんだ、バカヤロー』って返事するんだって」
キョン
「え? 人面犬ってドリフターズのファンなの?」
リナ
「あ、ちがった。『ほっといてくれ』だった」
キョン
「ひとつも被っているところがなくて、私はいまとても驚いているわ」
リナ
「スピードはなんと時速100メートル!!」
キョン
「めちゃくちゃ遅いじゃない! そんなんじゃ、すぐに保健所に捕まっちゃうわよ」
リナ
「あ、ちがった。『時速100キロメートル』だった」
キョン
「だと思ったわ」
リナ
「そういうことだから、探しに行こう!」
キョン
「とても興味深いわね。でも、残念。私、今日は参考書を買って帰らなきゃいけないの」
リナ
「いらないよ」
キョン
「いるのよっ! だから今日はダメ」
リナ
「参考書って駅前の
キョン
「え? そうね。あそこが一番品揃えがいいし」
リナ
「じゃあ、通り道だ! ついでに行こう!!」
(SE) 椅子が引きずられる音、衣擦れの音
キョン
「へ? あっ! ちょっと、袖を引っ張らないで! やぶける! ノースリーブになっちゃうから!」
♡ ♦ ♡ ♦ ♡
(SE) 蝉の鳴き声、風の音、犬の声
キョン
「それで……どうして私たちは公園のドッグランにいるのかしら」
リナ
「犬がたくさんいるところといえば、やっぱりここでしょ」
キョン
「うん、そうね。そうだとは思うけど……人面犬って飼い犬なの?」
リナ
「だって、野犬が集まってるところなんか怖くていけないもん」
キョン
「あ、
リナ
「あっ! 見て見て! あの犬!! 生活指導の
キョン
「似てるっちゃ似てる……んだけど、
リナ
「あっ! 見て見て! あっちの犬!! うちの校長にそっくり!!」
キョン
「ぶっ!! 本当ね。こっちはちょっと引くくらい似ているわ」
(SE) 犬の呼吸音
リナ
「はっ! タナセンと校長が急接近!」
キョン
「飼い主同士も知り合いみたいね」
(SE) 犬の呼吸音、舐める音
リナ
「はっ! タナセンと校長が……そんな、濃厚な……ディープ――」
キョン
「やめなさい。それ以上言ったら胸の脂肪を鷲掴みにするわよ」
リナ
「ひぃっ!」
(SE) 胸を隠す衣擦れ音
キョン
「もぉ……。気持ち悪い想像しちゃったじゃない」
リナ
「え……キョンってば、そういう趣味が」
キョン
「無いわよっ! 少なくともオジサンは無い!」
リナ
「じゃあ、もしイケメンだったら……」
キョン
「それはまぁ、無しでは無いわね」
キョン・リナ
「「……………………」」
リナ
「じ、人面犬、いないねぇ」
キョン
「露骨に話をそらすくらいなら、最初から聞かないで欲しいわ」
リナ
「えっと……おっぱい揉む?」
キョン
「……………………ふんっ」
(SE)リナの胸を掴む音
リナ
「ぎいぃぃやあぁぁぁ! いたっ、いだい!! 両手はダメッ!! せめて片手で! 左右逆回転とか鬼ですかっ⁉ ちぃぎぃれぇるぅぅぅ!」
(SE)パン、パンと手を払う音
キョン
「今日のところはこれくらいにしておいてあげる」
リナ
「あ、ありがとう、ございます?」
キョン
「さ、帰るわよ。私はこれから本屋にも行かなきゃいけないんだから」
リナ
「うん……。あっ、ねえ最後にあの犬の顔だけ見ていこうよ」
キョン
「えーー⁉ あのゴミ漁ってる犬? いやよ。なんか、汚いじゃない」
リナ
「いーから、いーから。ほらっ、わーんちゃん!」
犬(オッサンの声)
「なんだ、バカヤロー」
(SE)犬が走り去る音
リナ・キョン
「「…………(息を吸う)、きゃああああああああ!!」」
(SE)二人が走っていく音
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