第2話「捨てた母親」
タイムスリップしたんだ…
え、タイムスリップ、ほんとにそれあんの?
あ、あれか。死んだからか、死んだからだな。
とりあえずコンビニでも…
コンビニまだそんなにねぇのか
警察だな。
「あのすいません、帰りたいんですけど」
「どちらに?帰りたい場所を教えて貰ってもいいですか…?」
「帰りたい場所……いや、帰りたい場所なんかないや。ここでいいです。」
何もすることも無くただ公園で手遊び程度にマジックをしていると1人の子供が近寄ってきた。
「おじさん!すげぇ!なにそれ!もう一回やって!」
「え?お前マジック見た事ねぇの?」
「いや、マジックはあるけどそのマジックは見た事ない!」
「いや、Mr.マリックがよくやってんじゃん」
「だれそれ」
「あ、そっか。お前名前は?」
「光邦!とにかくさ!もう1回や…」
「光邦!?ねぇ!!!劇場知らない!?」
この子供は、やっぱりそうだ。
オーナーの子供の頃だ
「知ってるよ!案内してあげようか!」
この世界でなら、俺はやって行けるかもしれない。
そう、演芸場があるはずだ。
「支配人!このおじさんのマジック見てあげてよ!」
「あ?誰だこの男」
「あ、えっと春といいます。」
「春、ほう。男にしちゃ珍しい名前だな。
で、あんた誰に弟子入りしてる?」
「いや、誰にも…」
「冷やかしは帰った。あのな、マジックも漫才も舞台立ちたきゃ弟子入りが筋ってもんだろ。」
「そんな事言わないで支配人!おじさんすごいから見てあげてよ」
「ったく、仕方ねぇな。1回だけやってみろ」
俺は自信あるネタを精一杯やった。
すると支配人は、俺をじっと見つめ
「よし!俺が面倒見てやる!」と言ってくれた。
「ありがとうございます!」
「早速だが、今日から舞台立てるか?」
「あ、大丈夫です!」
「いつもマジックをやってるやつが連絡取れなくてよ。代わり頼むわ」
「あ、で支配人」
「桜木だ」
「あ、桜木さん!俺、住む家ないんですが…」
「心配すんな稽古場でもメイク室でもなんでもお前の好き勝手に使え。」
「ありがとうございます!」
ここから、俺の新しい人生が始まるんだ。
「おはようございます!」
何だこの美人な人は!?
「おう、舞香。どうだ?」
「まだ、連絡取れなくて…」
「そうか…よし!じゃ舞香!お前今日からこいつの助手をしろ!」
「えぇ!?」
「春、紹介する。お前の助手の舞香だ。」
「はぁ…」
「こいつはな、昔ここにいたパクって男の助手をしてたんだがパクが行方くらましやがってな。だから、舞香今日からお前がこいつの面倒を見てやれ」
「あ、はじめまして。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします!」
「春、お前はインドから来たマジシャン。Mr.ロン!ロンさんで行くぞ!」
「あ、はい!了解しました!」
「おじさん!よかったね!僕も早くマジシャンなりたいな!」と光邦は言った。
「なれる、きっと君も。」
俺はそう言った。
早速俺の初舞台だ。
「はーい!みなさん、今日も空席除けば超満員ね!」と舞香さんが話す。
300人以上は入る劇場に客は8~10人ほど。
その8~10人が微かに笑う。
「今日から、パクさんに変わって、インドからのマジシャン!ロンさんが来てくれてます!」
「ハジメマサテー!インドから来たロンさんよー!今日は、インドのイリュージョン見せるよ!」
俺は、得意のスプーン曲げをやった。
そして最後はそのスプーンを割って見せた。
8~10人の客は、全員盛大に沸いた。
「よしっ!!!ざっとこんなもんだな!ロン!」
桜木さんも喜んでくれた。
すぐに劇場のみんなは俺を歓迎会へと連れ出した。
「ロンはな、日本を背負う男になる。間違いない!」
「いやいや、そんなことは…」
あっちの世界とは違う。
こっちでは僕はヒーローだ。
「ロンさん、はいどうぞ」
舞香さんがお酒を注いでくれる。
「スプーン曲げ流行りますかね!」
「流行りますよ!スプーン曲げはブームになります!Mr.マリックってのがね、やってくるんですよ!ハンドパワーって言ってねwww」
「えぇ、なにそれwww」
「ホントなんですって!www」
「いや、でもブームとか分からないじゃないですか!」
「俺には見えるんすよ!ブームが!www」
「やだ、ロンさんたら面白い!」
「本当ですよ?未来が見えるんす。」
そう言うと、初めて舞香さんは本気な顔で
「そうなんですね」と言った。
えらい酔っ払ったらしく目を覚ますと神社にいて隣には舞香さんがいてくれた。
「よかったロンさん」
「あぁ、すいません!俺えらい浮かれたみたいで」
「そりゃ、あんだけ沸かしたら浮かれますよ!」
「すいません、、でも俺これでようやく『エース』とか『キング』になれんのかな」
「『エース』と『キング』?」
「あぁ、いえ」
「あの…!」
「あ、はい。」
「さっきのあれ本当ですか?先のことが見えるって!Mr.マリック…?」
「あぁ、冗談ですよw見えません見えませんw」
「ですよね…そうですよね…!」
舞香さんは何を気になってるんだろう…
次の日の朝。
「おい!ロン!」
「あ!おはようございます!桜木さん、」
「おめぇよお、1人で舞台立てるか?」
「1人で…?」
「おう、舞香が具合い悪くしたみたいでよお」
「あぁ、そうですか…見舞いとか行ったがいいすかね?」
「大したことは無い…って言ってたけどな」
「やっぱり俺行ってきます」
俺は、舞香さんの住所を聞き家へと向かった。
「舞香さん?大丈夫ですか?」
「あれ、ロンさん?どうして?」
「桜木さんに聞いて、体調は?」
「大丈夫です。実は妊娠してて…だから、別に体が悪いとかじゃないんです」
「あ、そうですか!よかった!というかおめでとうございます!」
「めでたいんですかね…」
「あ、そういえばお相手は?」
「元のペアです」
「え?パクさん?」
「はい、どこに行っちゃったんだか、しょうちゃん」
その時、舞香さんに電話がなった。
「はい?え………あ、わかりました、すぐ向かいます!」
「どうしたんですか?」
「しょうちゃんが、あ、えっとパクが警察に…私行かなきゃ!」
「ダメですよ!そんな体じゃ!僕が代わりに!」
こうして俺が、代わりにパクを警察に迎えに行くことになった。
警察に着き、案内してもらうと
「どういうことだよ、舞香の代わりって」
「あ、すいません舞香さん体壊し……」
ふと目をやると、そこにいたパクは
俺の親父だった。
そうか、舞香さんは……
あの女は……
俺はあの人から……
そう、俺がさっきまで話してた舞香さんは
俺を産んですぐに捨てた母親だった。
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