第22話 冒険者掲示板その3!
1:名無しの攻撃手
うおおおおおおおお!
2:名無しの銃撃手
うおおおおおおおお!
3:名無しの遊撃手
うおおおおおおおお!
4:名無しの狙撃手
うおおおおおおおお!
5:名無しの遊撃手
ちょっ、なにあれ、いやめっちゃ感動した!
6:名無しの狙撃手
いや、ほんとマジでな! っていうかUSAちゃんすごいな⁉ なんで〈剣姫〉さんとあんな風に連携とれるんだよ⁉
7:名無しの攻撃手
どうよ、俺が見つけ出したあの子はすごいだろ。
8:名無しの銃撃手
いや、お前が見つけ出したんじゃねえし。っていうかその理屈で言ったらグノーシスが先だし!
9:名無しの狙撃手
いや、本当にグノーシスさんにはやられたわ。マジでこの動画見せたらウチの社長がこの子を欲しがるだろうから、なおさらに。
10:名無しの遊撃手
うお⁉ ってことはユグドのスカウトも来るってことですか⁉
11:名無しの銃撃手
いや~、ここまでの実力を見せたらグノーシスやユグドどころか、他の四大企業であるフェニックスやヘスティアも見逃さないでしょう
12:名無しの遊撃手
四大企業……グノーシス・アドベンチャラーズ・ファームに、ユグドラシル・ファーム、フェニックス・エージェンシーに、ヘスティア、か……。
13:名無しの狙撃手
特にヘスティアあたりが欲しがるんじゃないかな。あそこ、動画配信とかも含めたタレント系が強いから。
14:名無しの攻撃手
あー、確かに。人材の量で優る狙撃手さんとこのユグドラシルとか、少数精鋭主義のグノーシス、迷宮災害対処が主なフェニックスよりもどっちかっていうとヘスティア向きだよねえ、USAちゃん。
15:名無しの銃撃手
なんか妙に解説調な説明ありがとう。まあ、その理屈で言ったらフェニックスとユグドはむしろUSAちゃんに向かない感じか?
16:名無しの狙撃手
いやいやいや、あの子の実力で欲しがらないファームはないでしょう。あれほど戦えるんだったらウチのAチームにだっていますぐ所属できるよ!
17:名無しの攻撃手
Aチーム! 星征旗の優勝常連! ユグドラシル最強チーム!
18:名無しの狙撃手
なお、去年は〈黒閃〉くん一人に全員やられてしまった模様。
19:名無しの遊撃手
あれはしゃあないでしょ。七星剣が強すぎた。
20:名無しの銃撃手
まじ〈黒閃〉一人で無双してたもんな、去年の星征旗。
21:名無しの攻撃手
いや、あれはグノーシスの他のメンバーがそれとなくフォローしていたから、あんな風に戦えたのであって、そうじゃなかったら狙撃手さんももうちょっとやれたでしょ。
22:名無しの狙撃手
フォローありがとね。でも〈黒閃〉くん、俺の狙撃を平然と避けやがるような奴だからなあ、しかも〈皇帝〉さんとやりあっている最中に、だよ。
23:名無しの銃撃手
あれ、マジヤバかったよなあ。攻撃手世界ランキング第一位で同じ七星剣の〈皇帝〉さんとやりあいながら狙撃をよけるとか、ほんと。
24:名無しの遊撃手
え? 攻撃手ランキングの第一位って〈黒閃〉さん第何位だっけ?
25:名無しの狙撃手
元だけど、第二位だったはず。って言っても、このランキング、それぞれのポジションごとに、その年で稼いだエーテルの総量で決めるから、ユグドのバックアップありで高難易度迷宮もぐりまくっている〈皇帝〉さんがそんだけ上に行くのは当然なんだよね。
26:名無しの銃撃手
……なあ、確か〈黒閃〉さんってソロ専で東京の無限迷宮でもソロでの最長踏破記録打ち立てているような人じゃなかったっけ?
27:名無しの狙撃手
……うん、まあ、その。ぶっちゃけ純粋な実力は〈皇帝〉さん超えるんじゃないかな?
28:名無しの遊撃手
〈皇帝〉さんを超える実力の持ち主である〈黒閃〉さんってマジ何者?
29:名無しの狙撃手
しいて言うなら、この世界の主人公? とか? もうそれぐらいの存在だよね、彼。
30:名無しの遊撃手
〈黒閃〉さん現実チート主人公ってことですか、さいですか……うほん。じゃあ話を戻すけど、いやマジでUSAちゃん、すごいよな!
31:名無しの銃撃手
露骨な話題転換! でも俺はそれに乗る! 本当になあ、あの未知のモンストラスが出てきたときはどうなるかって、思ったけど、それを攻略しちまうんだぜ!
32:名無しの狙撃手
ぶっちゃっけ一流のプロ冒険者でも未知のモンストラスって相対するのは結構厳しいのに、それを〈剣姫〉さんとの連携もあったとはいえ、初見で倒すとかマジすごい!
33:名無しの攻撃手
っていうか、あの連携なに⁉ 本当に息が合いすぎていて鳥肌がたった!
34:名無しの狙撃手
最後とかほとんど合図無しで、連携決めてたよね。〈剣姫〉さんが〈陽炎の刃〉叩き込んで、その間に跳躍したUSAちゃんが、上からの逆落としを決めるって奴。
35:名無しの銃撃手
狙撃手さん。興味本位で聞きますけど、同じことあなた達もできます?
35:名無しの狙撃手
うーん、どうだろ? 〈皇帝〉さんとだったら似たようなことできるかな? でもまあ、それを去年やって〈黒閃〉くんに避けられたわけだけども。
36:名無しの攻撃手
おい、止めろ! これまで狙った的は外さないが売りだった狙撃手さんは、去年〈黒閃〉さんに避けられたことがトラウマになっているんだぞ! そっとして差し上げろ!
37名無しの遊撃手
その発言が結果的にとどめとなっているんじゃないかな?
38:名無しの狙撃手
あははは、大丈夫、大丈夫。気にしないから。それはそれとして、攻撃手くん。ダンジョン内では常に頭へ気を付けようね?
39:名無しの攻撃手
めっちゃ気にしているんじゃん⁉ なに、俺いつか報復で狙撃受けるの⁉
40:名無しの銃撃手
それはそれで羨ましいような。まあ、それはさておき、これでUSAちゃんの実力が世間に知らしめられることになるだろうな。少なくとも四大ファームを含めた大手ファームが彼女のことを放っておくわけがない。
41:名無しの狙撃手
そうだねー。ちょっとこれは本格的に社長へと報せようかな。
42:名無しの遊撃手
うわー、故郷の町のために健気に頑張る女の子をめぐって、四大ファームが鍔迫り合うとか恐ろしい状況になってきたー。
43:名無しの攻撃手
いいなあ、俺なんて、あとどれだけ頑張ればそんな扱いを受けることやら。
44:名無しの銃撃手
まあ、頑張れや。ちな、俺も狙撃手さんと同じプロで四大ファームほどじゃないがそこそこ大手のファーム所属な。
45:名無しの遊撃手
ちなみに僕も同じくプロで、まあ平だけど、四大ファームのフェニックス所属。
46:名無しの攻撃手
あれぇ⁉ なんか俺だけ身分が低くございます⁉
☆
という、やり取りをスマホ越しに見やっていた〝名無しの攻撃手〟
掲示板には他の三人から、頑張れや、とか、君もいつかプロになれる、とかいうコメントが返ってくるのに、しかし彼は苦笑しながら、呟く。
「ま、実を言うと俺もプロだったんだけどな」
いくら匿名の掲示板とはいえ、安易に自分の個人情報を切り売りしない、というのは現代っ子にとって鉄則ともいえることである。
なので、本当は自分が元プロである、という事実を隠して、さもまだまだプロじゃない一般の攻撃手というようにふるまっていた彼は、ひょい、と肩をすくめながら顔を上げる。
はたして、そこには一人の女性が座っていた。
いましがた、出張から帰ってきたその女性を見やって〝名無しの攻撃手〟は言う。
「さて、誠さん。どうです、俺が見出した彼女は?」
「ああ、素晴らしい人物だったよ。才能ももちろんだが、その精神性が見事だ」
薄く笑って、そう告げる女性──グノーシス・アドベンチャラーズ・ファームの代表住良木誠に〝名無しの攻撃手〟はそうですか、と頷いて、
「それで、司さんはなんと?」
彼からのそんな問いかけに果たして誠はこう答えた。
「あの迷宮にはなにかある、だそうだ」
目を細め、誠は告げる。
「いくら何でも当時の国際迷宮機構が低能だったしても、さすがにあの迷宮はおかしい。上層部であのような高難易度のモンストラスが出て、最奥には未知のそれまでいるときた」
やれやれ、と首を横に振って告げる司。
「いま当時のことを調べさせているが、どうにもきな臭い様子だな」
そんな司の言葉に〝名無しの攻撃手〟は、ふうん、と呟きを漏らし、
「……『天使』でもいるんですかね」
「……? どういう意味だ?」
彼の言葉に怪訝な表情を浮かべた誠へ、しかし〝名無しの攻撃〟は首を横に振り、
「いいえ、何でもありません──それよりも調査には、やはり?」
「ああ。君にも帯同してもらう必要がありそうだ。引退したのに、すまないが、力を貸してくれ。もちろん、きちんと報酬は払う。だからどうか頼む──」
そして、誠は告げた。
「──〈黒閃〉
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