第19話19
私本人と、インド、中東で奪取した移動砲台はトバ火山方面に侵攻しない。中東からEU全土を踏み潰す。
トバが噴火するのを察知した天使が、全力で時間軸を戻り、世界に観測される前に阻止行動を取っている事だろう。
罠が張られているか、大勢の天使に預言者が待ち構えているかも知れないので、あちらの行動を囮とする。
私が天使に敗れてコピーまで死んだとしても、ヒマラヤの底面にある岩盤の一部が剥がれ、地球のマントルや金属コア方面に落ちていったから、放っておいてもこの地球の人類は滅ぶ。
ここ数日、周囲の岩盤を何度も割ろうと努力してきた結果が、ようやく結実したようだ。
大体数百年後になるが、シベリアトラップの小型版で地下からマグマが到来して吹き出し、大量の食糧や酸素と日光を必要とする生物植物は絶滅するだろう。
パンゲアと呼ばれた大陸の裏側が剥がれ落ちた時と同じだ。
海が茹で上がるほどではないだろうから、中型の海洋生物や、海底に張り付いている私と似たような小さなカニ(三次元)なら生き残るだろう。
マグマが分厚いヒマラヤ山脈を突き抜けるのが無理なら、周囲の脆弱で薄っぺらい場所から噴き出す。
まず大量の火山性ガス、呼吸すら不可能な超高温のガスで地上生物の肺が焼かれる。一瞬で絶命できるとても良い物だ。
その後は火砕流がユーラシア大陸の半分を焼いて、ガスが抜け始めると急減圧して、爆発したメントスコーラのように盛大に溶けた岩石や飽和水蒸気が破裂して噴出する。
勢いが強ければエベレストやカラコロムがロケットみたいに浮き上がるんじゃないかと思う。
その衝撃波が地球を何周も周回して、ツァーリボンバを全力で爆破したよりも強い振動が襲い、マグニチュードにすると10とか11、ほぼすべての建物や構築物が破砕される。
原子力発電所も壊れたりするが、メルトダウンなど細か過ぎてどうでも良い破滅だ。
規模にもよるが、数百メートルから千メートル級の津波が海辺を襲い、低い大地に移り住んだ者は、過去の津波と同じようにまたも洗い流される。
振動だけで両極の氷が粉砕されて解け始め、連動して南極にある火山も他のカルデラも終局噴火を始める。
どの時点で人類が全て滅びるかは知らないが、ドキュメンタリー番組で見たように、海中の潜水艦の乗組員が人類最後の生き残りになって、宇宙空間まで吹き飛ばされて地球の終わりを観測するかも知れない。
潜水艦に窓がついていれば、さぞ壮観な眺めだろう。私なら4次元の高みから見物できるだろうか?
これはもう天使であろうが神仏でも救えない。
4次元生命体を持つ誰かが、濃密すぎる場所に死のダイブをして、マントルに落ちた巨大な岩盤を持ち上げて帰ってくるなど不可能で、本物の神でも降臨しなければこの破滅を阻止できない。
イヴァンカも私のコピーも、今いる場所が主戦場から外されたとしても、梯子を外されたとは考えないだろう。
あちらでも思い付き次第でカムチャッカ半島や日本に行って、あの周辺のカルデラ全てを噴火させても良いと言ってある。
それだけでもチェックメイト、氷河期が来て詰みだ。
ただ、ハワイ島やオアフ島、ベーリング海峡を越えてアラスカに行けば、天使(エンジェル)や預言者(ジーザス)が配備されていて抵抗に遭うだろうから、軽率に侵攻しようとせず、世界を凍らせてから北米かモスクワで会おうと言ってある。
実は中国で騒ぎを起こしている間に、こっそりとミャンマーの山岳地帯を抜け、マレーシア、スマトラ島、ジャワ島へと浸透している私も居る。
屍兵ではない、4次元空間を泳ぎ続ける体力がある個体で、エビや動きが速いタコのような軟体動物数体で構成している。
あの辺りの新興国では、預言者(アラー)も天使も移動砲台すら用意できていないだろうから、案外そちらが本命だ。
予算も無ければ施設も資材も人材も居ないだろうし、イスラムでは偶像崇拝は禁止だから原理主義者が反対して、天使を無理に呼ぶような不敬を許さないだろう。
ましてやその天使が、頭が足りない背教者に寄生虫である上位生命体を植え付けて、それをもう一度巨大な生物に寄生させて支配して、天使として降臨させるなどという、おぞましい行為を宗教指導者が決して許しはしないだろう。
四次元世界での下等で巨大な虫が天使の正体であった、などと言う戯言はイスラムでは許されないし、バチカンの頭が固まった馬鹿どもがよくも認めて許可したものだ。
寄生体とは呼ばずに、天使体だとか綺麗な言葉で飾っていたから、正体までは知らされずに金だけむしり取られたのだろう。
東南アジアに行かない決心をした私は、三次元体のコピーを大量に生産して、中国方面にも発送する体制に入った。
もちろんインド中東ヨーロッパ方面にも派遣するが、西に移動する前に全力で中国に送る。
ゴキブリかクモになったような気分だ。私の分体がワラワラと出現して、カニモドキが生んだ幼生体のように散らばって行く。
量産しすぎて小さめで、目鼻も手足もさらに簡略化されてるが、砲台を乗っ取る機能は有るので大丈夫だろう。
移動しながらも、一匹二匹と三次元に転げ落ちて、移動砲台があると思われる瓶詰めの男の子の悲鳴が聞こえる方に向かって行く。
通常時間でなら、砲台は出動準備する暇もなく、関係者と共に土砂と鉄砲水に洗い流されて壊れる。
三次元の最上位に設置している、操縦席とか瓶詰めの子供は無事かもしれないが、始動にかかわる関係者と機材は全滅。
映画のように基地の上空に来た敵機を見てから、航空機が緊急発進して叩き落すなんてのは無理な話なのだ。
レシプロの戦闘機なら燃料と弾薬が残っていれば飛べるかもしれないが、ジェット戦闘機なら綿密な計画によって整備して燃料を補給して、タービンブレードを使用期限までに交換して、耐用期間が終了したものは交換しておかなければ動かない。
一般の旅客機でも、全てのチェックシートと点検ランプがオールグリーン。最後まで整備した整備責任者が旅客機を送り出し、帽子を取って手を振って送り出すほどの大事業だ。
後進国のオンボロ飛行機で、製造から30年も経過したガラクタとは違う。
最新鋭の戦闘車両で、近代戦の概念を覆すほどの兵器だ。
全てのチェックを省いて緊急始動するか、スクランブル発信できる機体を常時用意していなければ起動できない。
ただ、本物の天使にはそれが不要だ。四次元生物として生命維持活動を続けて、食料を補給していれば寿命まで死なない。
眠っていても上位世界か泥(ヒッグス)の底に隠れていれば、捕食者にも会わずに済む。
しかし他の寄生体に接続され、死を命令されて自死することはあるかも知れない。ぜひその研究をしておこう。
ハリガネムシに溺死を命じられたバッタやカマキリは、水の中に身を投げて死に、腸内に潜む寄生虫であるハリガネムシを水中に返す。
抗ウィルス薬を投与された人間も、同じように高い場所から飛び降りる異常行動で自死を命令される。
薬効があって死を迎えそうなウィルスか菌類に指示を受け、自らの肉体を破壊してでも次の宿主に捕食されて引っ越せるように命令を受ける。
天使を殺すべき猛毒を探そう、奴らに死を命じることができる、魔法の言葉を。
『天は全ての罪を許したもう、汝告解をせよ』
ヒマラヤを降りてカシミール、パキスタン方面に降り立った私。この国境付近では、女が産まれても口減らしのためにもすぐに殺してしまうそうだ。
生きていても、どうせ国境を越えて山賊や軍隊が来て、若い女は子供の頃から全員レイプされて誰の子か分からない子供を産まされ、美しければ国境の向こうに連れて行かれて奴隷にされるので、90%の女は生まれれば殺される。
子供を産ませるのは、逆に国境の向こうから略奪してきた奴隷に無理矢理産ませるか、誰も手出ししなかったような不細工な女だけ。
まともに生まれて生活できるのは、高い地位を持っていて守られているマハラジャの娘だけだ。
こうして植民地支配を受けたインドでも、朝鮮半島のようにレイプ遺伝子が濃縮され、街中の女や無防備な外国人旅行者がいれば即座に誘拐されてレイプされる。
偽装バスに乗って来た女を乗客全員でレイプした実績がある国だ。
他の植民地や属国、宗主国が数百年に渡って好き勝手やらかした場所では、治安も人心も崩壊していて、慰み者にされた女が生んだ子供の子孫が性欲を抑えられずに暴れまわっている。
現在でもカースト最下位の不可触民には人権がない。レイプされても女の方が処罰されたり、息子が穢れたと言われて犯人の一族に殺されたりする。
顔も知らないような好きでも何でもない男からの求婚を断った女も、顔に酸を浴びせられて失明して、残りの人生も滅茶苦茶にされる。
中東でもレイプされた女が処罰され、姦通罪が適応されて石打の刑で殺されたり、名誉殺人で親族に殺されるか、レイプ犯と結婚させられる。
もう少し中東寄りに行けば、ローマ水道を敷設させられた場所があり、その下水道には男児の赤ん坊の遺骨が積みあがっていたそうだ。
売春宿では女児は母親の資産となって、新たな娼婦として子供の頃から体を売って生きて来た。
何の価値も無い、遊郭や売春宿街で生まれた男は精神も肉体も正常に育つことも無く、売春婦から男に復讐するために虐待されて育って、女を憎んで内臓狩りをやるような猟奇殺人者になるので、死刑が廃止された国でも特例として死刑執行された。
狂っているのは私ではない、この世界こそが狂っているのだ。
下らない動物如きに余計な知識や知能を付けたので、更に醜く汚らしく成長した人類。
ボノボと言う猿人と同じく、挨拶代わりに交尾をする化け物。
さあ、この穢れた大地でも裁きを行おう。凍った土地からやって来る侵略者を迎え撃つだけの数は残しておかなければならないが、飢えたロシア人に犯されから殺されて、人肉として食われるだけの一般住民など不要だろう。
焦土戦略として食える人肉も減らしてやる。
先行している私のコピーと屍兵達は、既に自動砲台の奪取のために暴れている。
地平線までの電子機器を焼く、電磁場の暴風が数回私にも降りかかった。
誰かが光の速さで汚泥(ヒッグス)を吹き払って、移動砲台がある駐屯地や、天使降臨実験場の職員を全員血祭りにあげたのだろう。
聖歌を大音量で鳴らして制圧し、始動前に瓶詰めの子供を壊して死なせてやり、その後釜として寄生体ごと乗っ取る。
私のコピーなら上位生命体の根幹まで乗っ取るので、他の聖者や福者のように、ただ神経に接続しただけではない、私と同じ化け物で悪魔が産まれる。
聖人だけを生かして救う手段がないのが心残りだが、それは凍った後の世界から探し出すとしよう。
これからは侵攻場所に合わせて、イスラムの聖歌ナシードやアジーンを覚えなければならない。
『アラーの他に神は無し、アラーの他に神は無しっ!』
アラーは預言者であって、奉る神はヤハウェではなかっただろうか? まあ、大音量さえ出ていれば制圧できるので、歌詞は気にしない。
私は全力で時間軸を逆行しているので、土石流と焼けた石の塊が坂道を駆け上って行く奇妙な光景が見える。
このままでは私が最前線に突出してしまうではないか。
破壊を振りまいている奴らも、降臨実験場を一か所を破壊すれば、できるだけ過去に向かって移動して、次の破壊を振りまく前に警告を発せられないようにしているが、破壊のために留まっている間は通常の時間経過が起こる。
私は最前線に出ないように、姑息卑怯に姿を隠さなければならない。これ以上南下しないように、西に向かって移動する。
次はイランイラク方面だ、劣化ウラン弾がばら撒かれて遺伝的に殺されかけているアラブ人。枯葉剤とダイオキシンで遺伝を破壊されたベトナム人のお友達だ。
サウジアラビアのメッカにも足を延ばして、悪魔が封じられているといわれる塔でも破壊しようか? 案外私が封印されていたのかも知れないな。
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