8. 初めての鏡
慣れているはずのウェットスーツのような衣類を脱ぐのはともかく、初めてのワンピースを上手く着られるのか疑問に感じつつ、
「
ドヤ顔で、両肘を曲げて両手を腰にポーズを決めていた
残念ながら、後ろ前に着ているのが一目瞭然で分かり、大爆笑した
「ははは! そうなる予感がしていたんですよ~、師匠!」
「何を笑っている、この不届き者が!!」
笑い続ける
「師匠は、ワンピースを後ろ前に着ているんです」
「やはり、そうだったのか! 最初、正しい向きで着たのだ! ただ、そうすると、ファスナーが上げられなかった! 逆向きならば簡単にファスナーが上がったから、てっきりこうなのだと思ったのだ!」
赤面しながら、罰が悪そうに言い訳した
「そういう形のワンピースは、確かに、ファスナーを上げるのが大変そうですよね。僕は、もちろん、着た事無いから分からないですけど。最後だけ、僕が手伝いますから、また呼んでください、師匠」
恥ずかし気に言い訳していた
22世紀の衣類と勝手が違って、困っているところだけ手伝ってあげたい気持ちになった。
「悪いが、そう言ってもらえるとありがたい」
恥をかいた後なだけに、いつもの血の気の多そうな口調ではなく、意気消沈気味になって言った
数分後、後ろ前だったのを直した
妹が着ているのは見慣れていたが、正しい向きに着直したワンピースを着た
「なんだ? まだ何か、文句有り気な様子だな、
見惚れて棒立ちになっていた
「いえ、師匠が、あまりにキレイ過ぎて見惚れてました!」
恥ずかしくなって、何か言い訳して誤魔化そうとしたが、よく分からない探知器が有るくらいだ。
もしかしたら、
「何をぬかす、正気か? 何か裏が有るのでは有るまいな?」
「師匠は、本当に疑い深い人ですね~! あっ、そうか、僕の部屋は鏡が無いから、自分からは見えてないんですね。妹の部屋に等身大の鏡が有るから、来て下さい、師匠!」
「なんだ、この手は? 無礼者!」
「あっ、すみません。別に悪気は無いんです、ただ、案内しようと思って……」
「そんな風にしなくても、私は1人でも歩けるのだからな!」
「はい、確かにそうでした」
等身大の鏡の前まで行き、
「これは……!」
鏡に映し出された等身大の自分の姿を見て、絶句した
「なんか、師匠の驚き方、大袈裟なくらいですね! まるで、初めて見たみたいですけど……もちろん、師匠の時代にも鏡なんて、フツーに有りますよね?」
「これが、私なのか……?」
まるで、自分の等身大の姿を見たのが初めてのような反応の
「えっ! 22世紀には、鏡って無いんですか?」
「有るには有るのだが……こんなではない……こんな鮮明な……」
「22世紀の鏡って、どんななんですか?」
興味深そうな
「自分の姿だけではなくオーラや、周りのエネルギーも全て映し出してしまうから、自分の姿は色んなエネルギー越しに、ぼやけてしか見えてない」
「それじゃあ、今まで、師匠は、自分の美しい姿をハッキリと見た事が無かったのですか?」
「過去の鏡の方が、良いな。余分な物を映さずに済む……」
「師匠は、生まれて来る時代を間違えたみたいですね」
個性を尊ぶ今の時代か、緋色の瞳が増え出すであろう22世紀よりもっと未来なら、これほど悩む事など無く適応出来ていたはずと思えた。
「いっそ、未来に戻らず、ここで生活するのはどうですか、師匠?」
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