第1話 夢⑥
その後、町に戻る前に、メニシア(とついでに巨漢二人)を魔法で治療した。
巨漢に関しては、放っておいても大丈夫だろうということで、その場に放置して、サクラたちは町に戻った。
町の入り口には、宿の女店主がいた。
どうやら、サクラたちが去った後、色々な人から情報を得ながらサクラたちを追っていた。
サクラが町の外に出たと聞いて入り口まで来た。
しかし、町の外に出たという情報以外は特に何も無く、うかつに外に出たらすれ違う可能性もあったので、ずっと入り口で待っていたようだ。
全部ではないが、一応何があったかを説明した。
当然心配された。
さすがに疲労が限界を迎えようとしていたので、サクラは説明後すぐに宿に戻った。
メニシアも自宅に戻ろうとしたが、女店主の勧めもあって、宿で泊まることになった。
ちなみに、後で聞いた話だが、メニシアの両親は仕事で他国へ行っている。
そういう事情もあって、メニシアは現在一人暮らしだ。
誘拐されたということもあり、自宅で一人にするのは危険だという女店主の判断だ。
三日後。
メニシアは未だ宿でお世話になっていた。
サクラはというと、旅立つ準備をしていた。
と言っても、荷物をまとめていただけで、物資などの必要な物の買い出しはこの後すぐだ。
宿の外に出ると、すぐ目の前にメニシアがいた。
「おはようございます、サクラさん」
「うん」
メニシアは、宿の掃除の手伝いをした後で、これから散歩しに出かけるところだった。
サクラのこの後のことを聞いて、「ぜひお供させてください」と言ってきた。
断ろうと思ったが、出会った時のように押し切られそうだったので、その申し出を受け入れた。
一時間くらい経った後、物資の補給を完了した。
宿に戻る道中、色々なことを話していた。
「そうですか、そろそろこの町を去るのですね」
「うん」
寂しげに言うメニシアに対して、サクラは素っ気なく答える。
エリアスに滞在していたの数日間という短い時間だ。
その短い時間に起きた出来事は濃厚過ぎた。
アビル、そして魔鏡との戦いで、サクラは
たとえその可能性が小さくても、あの女に少しでも近づけるのならそれは大きな成果と言えるだろう。
そのようなことを考えていた、メニシアが衝撃的な発言をした。
「サクラさん、あなたの旅に私を同行させてください!」
「……は?」
さすがに驚きを隠せない。
何故なら、このようなことを今まで言われたことが無いからだ。
「無理」
驚きはしたが、すぐに冷静さを取り戻して答える。
「何故ですか?」
「危険だから」
間違ってはいない。
エリアスの森で起きたようなことが、サクラの旅では平気で起きる。
「だったらなおさらです! サクラさんは確かに強いです。強いですが、それ以前にサクラさんは女の子です。女の子の一人旅は危険です!」
「……それでも無理。僕の旅の目的にキミを巻き込めない」
サクラは冷たく、人を遠ざけるような声で答える。
「そもそも、キミは僕の旅の目的を知らないでしょ」
「確かに知りません、ですが――」
「復讐」
「え?」
「魔女に復讐する、それが僕の旅の目的」
それからサクラは淡々と話していく。
サクラが復讐しようとしている魔女は、サクラにとって大切な場所、友達、そして両親、何もかもを破壊した。
その魔女に復讐を果たす為に旅に出た。そしてその道中が地獄過ぎたことも。
全てではないが、これまでの出来事をメニシアに話した。
それでも……。
「なおのことお願いします!」
メニシアは食い下がる。
「どうして……」
「今の話を聞いて復讐をやめろとは簡単には言えません。ですが、それを抜きにしてもあなたを放っておけない。一人にしてはいけない、そう直感が叫んでいるのです!」
「そもそも、僕はクオン以外誰一人として信用していない、キミも同じだよ」
「それでもです!」
ここまで言ってもメニシアは諦めない。
実際にサクラは、クオン以外を信用していない。
心を開いていないというのは本当だ。
それこそ、魔女にすべてを破壊されたあの日から。
……一人だけ例外がいない訳ではないが、またそれは別の話。
どうしたら諦めてくれるのか、そう考えていると、クオンがメニシアに飛びついた。
「クオン……」
サクラは、クオンがここまでサクラ以外に懐いているところをあまり見たことがない。
クオンは、その人の本性を読み取ることが得意なようで、クオンが懐く人は、偽りがなく優しき心を持っている者だ。
このようすだと、メニシアは少なからず信用に値する。
クオンのメニシアに対する態度を数回見てそう感じた。
……それにクオンが離れようとしない。
「……わかったよ」
「では!」
「クオンがここまで懐いているし……完全に信用している訳じゃないけど、よろしく」
「はい! よろしくお願いします!」
こうしてメニシアは、サクラの旅の仲間に加わった。
翌日。
サクラは女店主に別れを告げ、宿を出る。
メニシアはすでに町の入り口にいる。
前日に、サクラと共に旅に出ることを女店主や食堂の店主など、知り合いに話しまわっていた。
話す人皆、驚きを隠せなかったが、それ以上に励ましの言葉を多く貰った。
永遠の別れと言う訳ではないが、メニシアは涙を流した。
サクラが町の入り口に到着する。
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