ループの果てに君は何を望む

@Norimaki_2229

第1話 『時間遡行』

時間遡行と聞くと何を思い浮かべるだろうか。タイムループ?タイムマシーン?時間が戻る?進む?相対性理論がどーたらこーたら?

私は、時間遡行と聞くと2種類があると考える。まずは、タイムマシーンや超能力による、何かしら人的要因による時間遡行。これをAパターンと名ずける。もう1つは、事故や殺されることによる何かしら外的要因による時間遡行。これをBパターンと名ずける。

だが、名ずけた所で作品というものに既に組み込まれている。時間遡行と聞いて思い浮かべる作品は沢山あるだろう。あの誰もが知っている鼠が大嫌いで青いネコ型ロボットが出てくる物語や、リゼ〇、シュタ〇だったりもそうだ。それは、全てアニメやフィクションの話であり、現実では実現しない。と、石川 陽介は考える…。

「お兄!話を聞いてるの!?」

急に大声を上げられ体が猫のように身震いした。

「妹よ。少し冷静になれ。冷静にならねば、考えられたものも考えられぬぞ。」

冷静…なんと素晴らしい響だ。冷静、クールになればカッコ良い。そんな感じがっ…

「はいはい。いつもの厨二病は、はぁこれだから…」

「俺は厨二病では無いぞ!?」

「100人に聞いても厨二病と答えますよ。なんだっけ?我は大いなる闇に抗い、ダークネスリユニオンから世界を守る男なり!って部屋で言ってたじゃん。」

「ふっはっは。そうだ。その通り。我はダークオブリユニオンから世界を守る男、その名も…」

「ダークネスリユニオンじゃないんですか?」

妹、由紀が大きくため息をつきながら言った。由紀は、血の繋がりは無いが、ある事故がきっかけでうちに来ることとなった。

「それはそうとお兄。洗濯物。片付けてね。」

そう言うと由紀がTシャツを突き出してきた。

「妹よ。我はダークネスリユニオンに市民が襲われていないかパトロールしなければならないのだよ。」

「ポッチの散歩ね。私がやっておくからお兄は、それを片付けて!」

まぁ5着程度だし良いか。

「では、妹よ。ダークネスリユニオンに襲われないよう気をつけてな。」

「はいはい。事故にも合わないよう注意します。」

と言って由紀はリビングから出ていった。

「さてと、やりますか。」

5着程度なら1分もかからない。片付けたあとは何しよう。由紀も20分はポッチの散歩で帰ってこないだろう。テレビでも見るか。

「あれは…なんだ?」

Tシャツを持って2階にある自分の部屋に入ろうとしたとき、あるものを見つけた。

由紀は綺麗好きなためかなり掃除を行うはずだ。それもゴミひとつ残さないくらいに。

だからこそ、疑問に思った。

「これは…メモ?」

由紀は普段メモをするやつではないし、何か紙がちぎれたのかと思い、メモに書かれた文字を見る。そこには、

『ハイルナ』

そう書いていた。

「入るな?」

何処にだ?筆跡的には由紀でもないな。だが、俺でもない。いやまさか、これは、俺に対するメッセージでは!?この部屋、自分の部屋に入るな。そういうことを言っているのだな!?

なんて考えてみたけど馬鹿らしい。

さっさとTシャツを入れるか。そう自分の部屋の扉を開けた。

扉の先にはいつもの俺の部屋が広がっていた。

家具も荷物も全て何も変わらずただ俺の部屋がそのままに…

『アニメだとこういう時になにかあるものでは無いか!』

と、台詞を心の奥底に閉まっておきながらタンスにTシャツを入れる。

「まぁ何も無いことが一番平和か。」

そう呟きリビングへ帰った。

リビングに着きテレビを付けようとリモコンを取ろうとしたその時気づいた。

「いつもの場所にない。」

テレビのリモコンはいつもテーブルの小物入れの上に置いておくという、暗黙の了解があったのに、何故かそこには無かった。どこだ?と、机の下、ソファの下、キッチン、テレビの裏、本棚、冷蔵庫を探したがない。まぁ十中八九、由紀がどっかにやったのだろうな。そう思い、俺は冷蔵庫で見つけたプリンを食べて、食べ終わり片付けたあと、俺は、ソファで横たわって…

次目覚めたのは外の夕日が照らされ赤色になっているリビングだ。今は何時?少し頭が回らないながらも現在時刻を確かめた。時計の針は5:35分を指していた。寝る前が確か3:45分だったから結構寝たな。

その時、そういえば由紀は?そう考え

「由紀ー?帰ってきてるかー?」

そう呼んでも返事がない。

由紀も寝てるのかな?そう思い、暫く待っていた。何分たっただろうか。30分は待った。

ちょっと声をかけてくるかと2階に行った。あれ、そういえばさっき2階に何かあったような…まぁいいかと思いそのまま由紀の部屋の前まで来た。

「由紀ー?寝てるのか?ご飯にしないか?」

返事がない。

「入るぞ?由紀?」

由紀が心配になった俺は、由紀がいるのかその確認をする為に部屋に入ることにした。

部屋のドアノブに触れドアを開ける。

部屋を見た俺は思わず「えっ」という声が出た。

由紀の部屋のはずのそこには…何も無かった。いや正確には、ダンボール箱がいくつかある程度だ。

何も無いはずはない。俺の見間違いか?と、ドアを見た。確か由紀の部屋のドアには『由紀の部屋』という木の看板が掛けられていたはず…

…何度見てもない。さっき俺は2階に来ていた。その時看板は掛けてあったか?

思い出せ…

ダメだ思い出せない。…いやひとつ思い出したぞ。あのメモはどこに行った!?

俺は、あのメモを見た後、床に置いておいたはずだ。

俺は直ぐにメモのあった場所に行った。だがそこには何も無かった。

するとその時、玄関の扉がガチャと言った。

由紀か?

そう思い、急いで階段を降りる。

「由紀!?」

俺は、由紀が帰ってきたのだと安心したのかもしれない。いつもの顔で『ただいま。お兄。』そう言ってくれることを願った。そうして家に帰ってきた人と目が合う。

「お兄ちゃん?なに?由紀って?」

由紀じゃ…ない。黒髪でロング、それに声も違う。

「お前…だれだ?」

「え?何言ってるのお兄ちゃん。まさかボケてる?」

本当に知らないのだ。そもそも由紀はお兄ちゃんとは呼ばない。さらに由紀は黒髪ロングではない。金髪のショートだ。

どういう事だ?俺には由紀以外にお兄ちゃんと、認識される存在は知らないぞ。

「お兄ちゃん、この荷物運んでくれない?結構重いんだよね。」

「あ、あぁ。」

よく分からなかったが思わず返事をしてしまった。

「お兄ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」

「あぁ。」

疑問に思いながらもこれはドッキリだろう。そう信じて荷物を受け取った。

「お兄ちゃん、夕飯どうする?」

俺はなんて返せばいいか分からなかった。思考が回っていないからか?

「お兄ちゃんの大好物のレバニラならすぐ作れるけど、どうする?」

「レバニラ!?」

思わず大きな声で言ってしまった。

「どうしたの?お兄ちゃん、いきなり大きな声を上げて。」

だって…レバニラが好きなことは由紀以外知らないはずだ。友達にも言ったことは無い。

いや、これがドッキリなら由紀に聞かされてなくてもおかしくない。

そうだ。これがドッキリの証拠だ。

ここは泳がしてみるか。

「ごめんごめん。今日の夕飯はレバニラで大丈夫だ。」

「分かりました。」

そう答えると女はキッチンへと向かった。

それから10分無言の空気が流れた。

「ふぅ、出来たよ。お兄ちゃん。皿とか用意しておいてくれると…って、もう出来てる!珍しい。お兄ちゃんが手伝うだなんて。」

別に珍しくなくてもいつもしている事なのだが…

無言の時間は食事中でも流れた。

だが、流石にドッキリ的にもここまでだろうと考え、俺は言った。

「なぁ、ドッキリなんだろ?そろそろなんかドッキリ大成功的なあれは無いの?」

女はキョトンとした顔で

「ドッキリ?なんの事?」

「いやさ、君と由紀が入れ替わってる的なあれでしょ?」

「その…由紀って人は私は知らないけど、入れ替わってるとかどういうこと?」

「いや、由紀は俺の妹で、君と由紀は入れ替わってるんでしょ?」

「え?お兄ちゃん私以外に妹いたの?」

え?私以外?つまりはこの女は俺の…いやいやそんなバカげたことがあるわけないじゃないか。

「えーと?君は俺の妹なのか?」

「そうだよ?お兄ちゃん。何言っているの。」

はっと思い出すように立ち上がり本棚からある本を取り出す。

それは…アルバムだ。アルバムを見れば由紀がいたっていう証拠に…

…由紀が写っているその場所には女が映っていた。いや、由紀の存在が消え代わりにこの女が存在しているような…

「急にどうしたのお兄ちゃん。あっ、それ懐かしい〜その写真祭りの時のやつでしょ?」

本来は俺と由紀が手を繋ぎ写っている写真のはずだ。父さんが撮って…

「再度君に質問する。本当にこれはドッキリとかの類ではないのだな?」


「ドッキリ?本当になんの話をしているの?」

分かった。いや分からないこともあるけど多分これなのだろう。そうだ。これしか有り得ない。じゃなきゃおかしい。俺の妹が由紀ではなく見知らぬ女にすり変わっているのは…

「…君。驚かず聞いて欲しい。私は並行世界から来た人間なのかもしれない。」








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