第31話 サテライト。

 私は――。人を好きになることはあっても、人に好かれたくはない。ひどい話である。押し付けるだけ押し付けて、お返しは絶対受け取らない。歪すぎて。あさひには申し訳ない。

 そして。私が好きな人に告白して、それを受け入れられることがあるとするならば――。

 そのとき、私はどんな気持ちを、心を抱くことになるだろうか。


「――ねぇ、まつり」


 夕食のバーベキュー。石山姉がビール片手にホルモンを焼き始め、手持ち無沙汰のまつりの隣に座りつつ声をかけた。

 まつりが手に持っているのは小さな瓶ビール。ご丁寧にライムの欠片まで入ってあるのは、まつりのこだわりか。それとも石山姉の気が利くだけなのか。

 まつりはちらとこちらを見て。ビールを一気飲みして、小さくげっぷをした。


「飲みたいのか?」

「いらないよ。ビールは苦いって聞くし」

「子供舌め」

「未成年飲酒女のくせに……」


 私の呟きに苦笑しつつ、今度はよくわかんない瓶のお酒を開けている。


「で、どうしたんだ?」

「うーん……こんなところで言っていいものか分かんないけど」

「変な下ネタとか茶化しじゃないなら……」


 飲めよ、と栓の開けられたよくわかんない酒を渡される。受け取り、深呼吸してから一気に飲む。冷たい。と同時に、グレープフルーツっぽい柑橘系の爽やかな味が口に広がる。そして最期に、変な風味……薬っぽい、慣れない味がした。


「そんなに一気に飲むな、バカ」


 まつりは私から瓶をひったくり、残っていたお酒を全部飲み干した。大体四割くらい?


「吐くなよ、私が潰したみたいで気分悪いから」

「酒飲むのは気分良くするためじゃないの?」

「半々だな。気分良いのを通り越して最低の気分になる時もある」


 らしい。馬鹿みたいな話である。高くて身体に悪くて、気分も悪いものを飲むらしい。公園で飲んでるのは見たことない。


「公園では飲まないの?」

「補導されたくねぇからな」


 購入はできるらしい。老け顔。つーか、子供離れしてるんだよな。面構えになんか年季を感じるというか。ロリババアじゃなくて……おっさん臭いガキ。


「失礼なことを考えたな?」

「内心の自由はあるでしょ!?」

「……さて、酒を飲むような悪ガキがルールに守られるかなぁ?」


 それは! 守られるだろぉ!? 別次元の話を出すな! てか何で私の考えることが分かるんだテメェ! 妖怪か! 妖怪老け顔ババア! 一年歳上! 留年寸前! ウルフカット!


「なんか、頭ん中うまく回らんのだけろ」

「呂律もな。……酒弱いなぁ、ゆかりさんよ」


 へへへ、と笑う。私は当初目論んでいたことを何も話せずに、そのことを忘れた。


「ねぇ、まつり」

「なんだ」

「吐きそう」

「絶対吐くなよ!?」


 何も考えずにくだらない会話をする時間が、一番好き。

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