第17話 「マジで友達いないんですね」
ところかわってところてん。私たちは喫茶店にいた。オシャレな内装。でも、客はいないあたりこの店ってどうなってるんだろう。
「ねぇ、いさりさんって何でこんな店でバイトできてるの?」
「へ? えーっと、何か応募したらできました」
「ふーん」
「興味ないんか? 何で聞いたんや?」
いさりさんの胡乱な関西弁を無視しつつ、注文をそれぞれがしていく。興味がないと言うか、返事に困る回答でした。
「メロンソーダ」
「ゆかりそれだけ? 私はアイスレモンティーと……カツサンドお願いしまーす!」
「いさり、なんかおすすめある?」
「コーヒーかなぁ」
「おけ……アイスティー、ストレートで」
「ふざけんなよ……店長! 私はアイスコーヒーで!」
私はいさりの注文を小声で嗜める。
「いさりさん、ここのコーヒーネス◯フェですよ……ぼったくりです」
「ご存知の通り私ここでバイトしてますからね? 普通に嘘だって分かりますよ? なんでそんな風評被害ばら撒くの? ネス◯フェ別に不味くないでしょ?」
ボケの渋滞で本題がいつまで経っても始まらない。いさりさんってツッコミ側なの? いまいちキャラが分からない。
「ねぇ、ゆかりってそんな人のことおちょくるタイプだった……?」
あさひの問いかけに少し間を置く。
「めちゃくちゃマジな話してる時にぶん殴られるようなボケをかますくらいには」
「あー、そう言えばそうだったね」
白けたような目線に思わず照れる。……人との関わり方が分からなくて、適当なことを言うしか分からないなんて。そんな本音を言うのは憚られた。
「で、私の幼馴染を借りるってどういうこと?」
「そう言えばそこからだったな」
「私は貸し借りできるようなモンなんですか?」
あさひのものでも別にないですぅ〜! かつては私はあさひのものであさひはみんなのものだったけど今はみんなのゆかりちゃんになったのだ! こうして友達が私を取りあってるんだよな〜!!!
「いや、どうせこの子友達とか居ないでしょ? アンタの許可さえあれば予定はないも同然だからな」
「あれ? まつりさん?????」
取りあってない!!! ハナからボッチだとバレている!?!?!? 私が友達いないとか言ったっけ……言った気がする!!!
クソが……。
「わ、私にも予定あるかもだけどな!!!」
「どんな?」
「えと、宿題とか積みゲーとか……」
「ククク……マジで友達いないんですね」
やめろぉ! 私のハートをいじめるな! すがるようにあさひを見ると、あさひはこくりと頷いた。いしんでんしん! 心の友やで(確定演出)!
「ゆかりに私以外に友達はいないよ」
「あさひさぁん!?」
いや、あさひはこれ以上なく私の交友関係を知ってるけど……。にしてもえげつなくないですかぁ? 別に友達なんて多くはいらないけど、そんなこと言うのは良くないよ! 事実でも言っちゃダメなんだよ!
いさりぃ! 笑うなぁ!
「……ま、そういうわけでコイツと友情を深めるために一週間くらいコイツのログハウスで遊ぼうというわけだ」
まつりが話をちゃっちゃと進める。というか、この人進まない話にイラついてますよね。
「え、いさりさんのログハウスって……親御さんもいるわけ? まつりクソ気まずくない?」
「いや、コイツのお姉さんがついてくる」
「お姉さんは気まずくないの?」
「私をそんなに気まずくさせたいのか? テメェ」
「姉は物事を冷静に見れる人ですから……」
いさりさんの言葉に頷く。ふーん。
「それで、なんで私を誘おうと思ったんですかー? 友達もろくにいない私を」
「水臭ぇな……もっと仲良くなりたいって、言わなきゃわかんねぇか?」
「そう! 発案はこの私、石山いさりです! ……まつりは照れ屋で言い出せないはずだったので友達合宿を企画したんですよ」
なるほど。それはなんつーか、私も照れる。でも、そんなこともまつりは言えないのか。臆病者め。口に出したら今度こそ殺される。
「……やっぱり、信用できない。副会長もそこの怖い人も、ゆかりを騙そうとしてる。ゆかり、目を覚まして。ゆかりが変な宗教に騙されかけてる」
「おい、ゆかり。お前の幼馴染、殴っていいか?」
「……だから、私もついていく。オーケー?」
三人合わせて声が出た。
「は?」
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