第9話(閑話) ガタン後藤
どうして。どうしてこんなことに……。私はきっと、はしゃぎすぎてしまったのだ。同じ不登校友人相手にちょっと気まずい(まつりは気まずいどころの騒ぎじゃない)連盟を結んだ(結んでいない)せいで。すこし、はしゃいじゃって!
……朝、あさひが家に前にいた。ダジャレじゃなくて。
「あ、あさひさん? どうしてここに」
「……学校、ちゃんと行こうよ」
「えっと、うん……用事もあったし今日はいくよ」
呆れた顔。というか、こいつマジで? みたいな侮蔑も感じる顔であさひは言った。
「用事が無くても学校には行くべきでしょ」
「……敷居が高くて行きづらいんですぅ」
「それは、えぇっと、普通学校に行くときは使わなくない? あと、こっちのセリフだと思う」
敷居が高い。相手に不義理や面目ないことがあって、その人の家に行きにくいことをたとえていう。なるほど、どう考えてもあさひ側のセリフだ。
――と、普通ならばこう考えるじゃろうな。
「いやぁ、相手の告白にろくに返事もせず心配してきた相手の電話をそっけなく適当に返してる人間も十分面目ないですよ」
「自覚、あるんだね」
「お互い様ですな……着替えてくるから先行ってて」
あさひは、少しだけ悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「んーん。ここで待ってる」
不覚にも。というか、あさひはいつでもかわいい。
まつりも……顔は整っていた。怖いけど。
「私の周りには美人しかいないな……」
「人間、心が大事だよ、ゆかり」
聞かれていたらしい。こちとら心もさび付いているのである。ブリキで出来た人形がおいらなのさ。心をくださいな、魔法使い様。なんつって。
私は、小さくため息をついてから。呟くのである。
「絶対、見た目の方が大事でしょ」
「……ゆかりって根っこが日陰者だよね」
う、うるせぇ! そんな本人も自覚してるようなこと言ってくるんじゃねぇよ!
「て、てか根っこが埋まってないやつなんかいなくね。性根は全部日陰にあるべきでしょ」
「返しが屁理屈すぎるでしょ、さすがに」
「う、うるさいよい! 屁でも理屈は理屈だよい!」
「……クソ理屈」
「ランクアップするなよ!」
「屁からクソってランクアップなの?」
なんだよその返事! どう考えてもあさひさんも屁理屈使いだありませんこと!?!?!?
電車は、遅刻してるくせに騒いでいる私たちを運んでいった。がたんごとん。ガタン後藤。売れないピン芸人。なんつって。
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