悪夢のあと

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悪夢のあと

【目覚まし音】(夢からやっと抜け出せた感じで)「っんはっ!はぁはぁはぁ〜」


俺は夢日記というものを小さい頃から付けていて、すぐ書けるようにとノートを枕元に置いている。


【ページをめくる音】「変な夢を見始めてから今日でニ日目かぁ…」


【日記を読んでる風に】変な夢を見た初日。

俺は電車の先頭車両に乗っていてすぐ後ろの車両が騒がしい。そちらに目をやると人だかりができている。

乗っていた電車が停車。乗ったままじゃ危険だと判断し、俺は電車を降りる事にした。


【鉛筆で書いてる音と共に】ニ日目、前の日の続き。

後ろの車両からゾロゾロと人が降りてくる。その人達はなぜかオノやカマなどを持っていて、俺に向かって走ってくる。【←鉛筆の音はここまで】


「(大きなため息)はぁ〜あ。明日はあんな奴らと戦うのかよ?夢の中の俺って、武器になるもの何も持って無かったけどどうやって戦うんだ?」【ノートを閉じる音】


ナレーション:俺はこの後、いつも通り満員電車に乗った。吊り革に掴まっていた俺のクツに何かが当たり手を伸ばして見てみると普通の鉛筆だった。鉛筆なんて学生が使う物だし、近くに学生がいるのかと首を動かしてみるが、周りにはスーツを着た男性やおばさん、おじいさんなど鉛筆を使う世代では無い人達ばかり。駅に着いたら駅員さんにでも渡そうと、とりあえずバッグにしまった。

大きい駅に着くと乗客が一斉に降り、俺の前の座席が空いた。俺は座席に座り、スマホのアラームを掛けて目をつむる事にした。


《夢の中》(心の声)…んっ?この薄暗いホームは…あっ、夢の続きか…って事は、あいつらから逃げなきゃ。とりあえず地上に出ればどうにかなるかな?


【アラームのバイブ・ブーブー ブーブー】(心の声)あ、もう降りる時間か。まさか電車の中で夢の続きを見るとは。ノートは家に置いたままだし、メモ帳にでも書いておくか。

【バックのジッパーを開ける】(心の声)あれ?ペンが見当たらない。仕方ない。さっき拾った鉛筆借りるか。それにしてもあいつらから逃げ切れるのか?うーん、あいつらの弱点が光だったらどうにかなりそうなんだけどなぁ。


そんな事を考えながらメモしていたら、いつの間にか職場の最寄り駅に到着していた。


(心の声)今日は家にペン忘れてきたみたいだし届けるのは帰りでいっか。


昼食を食べ終えると急な睡魔に襲われた。

【走る音】ハァハァハァ〜なんで俺逃げてるんだ?あっ、また夢の続きか?おっ、明るくなってきた!もうすぐ地上だ。…あれ?さっきまでうるさかった足音がしない。って事は無事に逃げ切れたって事か?はぁ〜良かったー


【スマホのバイブ・ブーブーブーブー】(心の声)う、うーん。俺いつの間に寝てたんだ?(スマホの画面を見て会話)「あ、はい。午後イチで。あ、はい。分かりました。…はい。失礼します」

そうだ、さっきの夢、メモ帳に書いておかなきゃ。【ページをめくる音】あいつらの弱点、光だったな。俺の願望通りになった…いや、まさか、偶然だよな。…でも、もしかしたら【鉛筆で書く音】


ナレーション:俺はメモ帳に願望を箇条書きで書いてみた。

空を飛んでみたい、お金持ちになりたい、透明人間になってみたい、○○(他に願望があれば)…


【目覚まし音】メモ帳に書いた俺の願望は、夢の中で全部叶ってしまった。夢の中では幸せだった。でも最初に思ったのは、絶望感だ。夢の中での幸せ度が高い分、今が現実だと受け入れるまで時間がかかった。

「はぁ〜あ、やっぱり思った通りだったかぁ〜」

この鉛筆は、夢の中で願望を叶える不思議な鉛筆だった。


よし、それじゃあ今日は…【鉛筆で書く音】


幸福感よりも絶望感を抱いていたのは、夢の中にはキミがいない事が大きかった。

《毎日キミに会いたい》と不思議な鉛筆で書いた。

それから毎日夢の中でキミと会う事ができた。

キミとはもう実際には会う事が出来ないと思っていたから、眠る事が楽しみになっていた。キミとまた離れたくなくて、睡眠薬を買うまでになってしまっていた。睡眠薬が効きすぎて、仕事を遅刻する事もしばしば。しまいには仕事をクビになってしまった。


【鉛筆で書く音】《ずっと目覚めずキミと一緒にいたい》


この不思議な鉛筆で書けば、何でも夢が叶うという。

しかし寝ている間に見る夢の中だけの話。

あなたならこの鉛筆で何を書きますか?

くれぐれもハマり過ぎないように…

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