三十二話 大自然
「どうだい!免許取り立ての頃よりはずっとマシでしょ!?」
「でも荒いわよ!もっとゆっくりでもいいじゃない」
「まぁ、確かにマシになってる。多少だけど」
「そ、そうかい…。まぁ、着いたから行こうじゃないか!」
外に出ると大自然一歩手前のところ。まさに森という感じだ。奥の方をよ〜く目を凝らせば何かが動いているのも見える。野生動物だろうか。
「さてと!荷物を持って行こうじゃないか!ここから奥は妖怪斬り関係しか入れないただの私有地だから気を張らなくて大丈夫だよ」
「この広さが…!?」
「そうそう。最初は驚くよね!僕も見たときは驚いたよ!さてと、荷物は全部取ったよね?行こうか!」
道は多少開拓されているようだが、それでも野性味溢れる道路である。だが、不思議なのはそれぞれの木に斬撃のような痕が見える。これはいつ付いた傷なのだろうか。
「その傷が気になるのかい?」
「はい」
「それは妖怪斬りの人達が遺した鍛錬の名残り…。元々は剣術訓練をしていたらしいんだけど、帯刀が禁じられたからここも廃れちゃったんだけどね」
「もしかて今も妖怪斬りが低迷しているのも廃刀令が影響してたりするんですか…」
「…割と。まぁ、それ以前から人の数が少なくなっていたけどね。そこにそれで大打撃って感じかな?ま、今のこと日本を考えると、廃刀令も良かったのかな?」
変な歴史の絡み方だ。学校で学んだ内容がこんなところで関わってくるとは…。考えもしなかった。
森を歩いて着いたのは、川の横に二階建ての家が建っているところである。
「今日から泊まる一番近い宿!この家は結構広くてね!十人くらいなら、一人一部屋にできるくらいなんだよね!」
「遠くから見たらそんな大きくないって思ったけど、近くで見たら結構大きいな…!」
「奥に長く続いてる感じなのね…。結構いいじゃない」
「さて、荷物を置いてこようか。今日は僕たちの貸し切りだからね!」
そう言って先頭に立って宿屋に入る。なんというか、修学旅行とかの気分だ。
「おや、妖里様。お待ちしておりました」
「うん!久し振りだね!みんな、この人はここの管理をしてる
「どうも皆様。ご紹介にあずかりました。柊 雪風と申します。御年還暦の老いぼれですが、覚えてくださるとうれしいです…!」
「そうだ。柊さんも元々は妖怪斬りだったからなにかアドバイスとか欲しかったら聞いて見るのもいいかもよ!それじゃ、部屋割りだね」
「皆様良ければですがこちらの方でやることもできますが、皆様でお決めになられた方がご納得されやすいので、ご自身でお決めになるのも良いですよ」
「だって。どうしようか?」
「俺はどこでも、大した荷物もないしな」
「了解。ミネはどこでも良い…」
「私は決めようかしら、どうせならこの森がよく見えるところとかいいわね」
「それなら2階だね。あと三人は?」
「俺はこの一階の部屋で」
「私はこっちにしようかな」
さて、どこにしようか。こういうときは悩んでしまう。だが、さっさと決めるとしよう。
「俺はここで」
「よし、三人は固まって…ならミネは未瑠華の隣、僕はその隣にしようかな」
「それでは皆様お部屋がお決まりになりましたね。お食事などは決まった時にお呼びいたしますので、ご心配せず。ごゆっくりお過ごしください」
「ありがとうね!さて、部屋も決まったことだし、荷物置いて、僕は外にいるから何かあったら呼んでね!」
「「「わかりました」」」
「「はーい」」
あぁ…やっと着いたと実感する。さっきまでの気分がとんで楽になった。
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