二十一話 祝 肆級
「みんな集まったね。それじゃあ!三人の
今日は私達が伍級から、肆級に昇任祝いに妖里さんが、自分の家に招待して、色々と料理を作ってくれるそう。
伍級は見習いの立場だったけど、肆級になったから、私達は晴れて本格的な妖怪斬りとして活動できるそうで、それ以外にも色々な活動の幅が広がるらしい。
「おめでとう!!みんな凄いわね。3ヶ月も掛かってないなんて。私なんて半年も掛かったのに」
「まぁ、二人の場合は時期が悪かったのもあるだろうし、それでも十分早いと思うけどね。僕よりも早いし」
「妖里さんはもっと早いんじゃないですか!?」
「日里士君の言う事はそうなんだけど、僕の場合は師匠がね…本当に厳しい人だから、中々一人前って認めてくれなくて、自立ができてなくってね」
「それのせいで時間がかかったんですか」
「そうだね。軽く五年はかかってたはずだよ」
「五年…」
「普通の人でも一年経てば肆級に成れるってのに、ここぞとばかりに総司令官の権力を使ってどれだけ頑張っても肆級に成れないようにして、修行に集中させるってのは頭がおかしいんじゃないかって思ったぐらいだよ!本当に!」
妖里さんも、相当な苦労をしてきたそう。本当に、妖里さんのお師匠は大丈夫な人なんだろう?
今まで妖里さんから聞いてきた話だと、とても怖くて厳しい人ってイメージがあるけど、どうなんだろう?
「改めて、妖里さんのお師匠さんはどんな人なんですか?」
「そうだね…正直なところ、できれば会いたくないね。まぁ、根は良い人なんだけど、いかんせん…地獄と大差ない修行の日々の記憶がトラウマになっているんだろうね」
「そこまで辛いって…想像しにくいんですけど、どんなことをやってたんですか?」
「例えばね、師匠と竹刀で面を取るまでやって、その次に師匠の作った罠が張り巡らされたフィールドで師匠から逃げ回るとか」
そう言いながら妖里さんの顔色はどんどん悪くなる。
「弟弟子に小鳥遊っていう、まぁ同い年なんだけと、そういう奴がいてね。二人で協力して逃げ回ってたよ。一度も逃げ切れた事はないけど…まぁ、今日は三人のお目出度い会なんだし!こういう話はここまでにしよう!」
「日里士、お前はそんな皿に盛って食べ切れるのか?」
「徹、甘いな。こういうのは盛った者勝ちなんだよ。それに竜峰さんを見ろ。俺よりも持っているぞ」
「ミネ、今食い意地を張るのはちょっと…」
「ここは祝いの場だけど、食べれる時に食べたいからね。これでも栄養に気遣ってるし、俺と違って甘い物ばかり食べてると太るよ」
「うるさい!」
未瑠華さんが竜峰さんを思いっきり殴った。結構痛そう…
「二人共そこまで、三人の肆級祝いなのはそうだけど、料理が足らなくなったら、僕が買いに行って作るだけだから、沢山食べて良いよ」
「って言っているね」
「……釈然とないわね。ミネ、後で覚えときなさい!」
「はいはい。そういえば、来週だったけ?三人があの大会に参加するのって」
妖怪斬りの大会である武闘祭。新星の妖怪斬り達が己の技量を魅せ、競い合う祭り、と外の貼り紙に書いてあった。
それがもう、来週にまで迫ってきている。
「そうなんですよ。正直周りがどんなことをしてくるか、この二人ぐらいしか予想がつかなくて…」
「これは…俺が見たイメージだけど、妖里さんみたいな奴はいない。ちなみに強さの話じゃなくて、技術の話なんだけどね」
「私は勝手に出場したけど、一人ぐらいしか強かった人はいなかったわね。それに、その人結構良いところの出だったから。私みたいな付け焼き刃じゃ勝てっこないって」
ふと妖里さんの方を見ると、頭に手を抱えて呟いていた。
「……ここ、祝の場なんだけどなぁ…そういう話やらない方がいいと思うんだけどなぁ…」
少し遠くて、何を言っていたかはわからないけど、妖里さんも大変なんだろうな。
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