二十話 喧嘩日和
「よぉ!徹…だったか?」
「團さん!もう動いて大丈夫なんですか?」
「まぁ、激しい運動はできねぇがな。一応は、な?」
完全なイレギュラーに巻き込まれて、前回の失敗が帳消しとなり、次の依頼を探していると、その前回でお世話になった二人が来た。
「随分と無理を言ってるな?」
「なんだよ、別にいいだろ?医者の奴らは、激しく動かなければいいって言ってんだからよ」
「それは安静にしてたらのはなしだ。動いていては意味が無い」
「そうなんですか。じゃあ、座ってた方がいいんじゃないんですか?」
「後輩にまで、言われているぞ?」
「うるせぇ…なぁ。いいだろ?俺の身体だぜ!?」
「はぁ…大体お前は――」
どうやら歯車が奇跡的なバランスで合っていないようだ。俺の事はそっちのけで喧嘩してしまっている。
係の人や、周りの人も手伝って、どこかへ運ばれていた。
「依頼の方を探すか」
妖里さんから、今は火吹蜘蛛はちょっと危なさそうだからやめとこう、と言われた。終わった後で聞いたが、本来は五匹程度しか群れをなさないらしく、あれは平気で十匹はいた。つまり、異常はすでに示されていたらしい。
「俺でもできそうなのは、妖孤の群れ…群れ?」
どうやら群れで、肆級相当のようだ。これならば、奇襲と逃げで、なんとか倒せそうだ。油断さえしなければ、一人でもいけるだろう。
「準備を今からするか。必要なのは…」
ふと視線を感じて後ろを振り返ると、さっきまでいなかったところに偉そうな男いて、こちらを睨んでいた。
周りの人もその人を避けるように動いて、あそこだけ雰囲気が最悪になっていた。そしてその対面に座っているのは、前に妖里さんが紹介していた座実さんだった。
「はぁ…それで、なんのようだ?侶人」
「そうだな。と言ってもわかってるんじゃないか?前回の掃討作戦の時に決まってるだろう?」
掃討作戦?なんの話だろうか。妖里さんに聞けば話してくれるだろう。
「はぁ…?それで、今度は何が問題だって言うんだ?もっと協力しろってか?」
「それもあるが、そうじゃない。俺が言いたいのは、お前のその時の行動だ。他人にまで被害が出る程の荒々しい動き、それは必要か?」
「はぁ…俺は、好き勝手動く。お前らは、お前らで好きに言ってろ。それが要件か?なら帰らせて貰おう」
「……そうか」
そう言って、その場は解散した。なんというか…そういえば、あの人は誰なんだろうか。こっちを見ていた気もするけど、一瞬だったから良く分からなかった。
「後で考えよう。今はこの依頼を受けよう」
そう言えば今日は喧嘩を良く目にする気がする。ここに来る道端でもやってたな。今日は喧嘩日和なのか?
だとしたら、本当に嫌な日だな。喧嘩日和とか最悪以外なんでも無い。
「今日はさっさと帰ろう。変な感じになるな…」
その後は、依頼書をもって受付へ行く。
だが、どうやら一歩遅かったそうで、該当地域の妖孤の群れは、別の戦闘の余波で殲滅したそうだ。
どんな戦い方をしたのやら…
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