十九話 日里士、技を練る

「眠気を振り切って、やらねぇと」


今は徹に勝つために、亜空界の支部で、技を一から調べ直している。

変術型は、壱之型だったら真っ直ぐ、参之型だったら壁にあたったら反射するなどそれぞれの型の軌道に特色がある。

それにプラスして、俺の気力量は人より少ない。それのお陰で幸か不幸か球が視認されにくい。何なら見えなくできる。

だが、柚香の攻撃を間近で見てわかったが、俺の攻撃は全体的に威力不足。

俺のでは一体をギリギリ貫通できる程度。もっと貫通力を増やしたいところだ。

それと、量。全体に気力の量が足りない。やはり、少ないのは、あまり良くないのだろうか。


「剣の腕も上げないとかな?ひとまず課題は、貫通力と球の数かな」


貫通力は尖ったものにできないか、試すとして、一番はあまり多く気力を放つ事ができないことだろう。

できるだけ小さく、少なく、視認しにくくする。


放ったそれの威力は、的にしたその辺の小石に、大きめのひびを入れる程度。

本来なら、完全に砕ける筈なので、威力は落ちているが、これならかなり視認しにくい。成功と言えるだろう。


「練習熱心なんだね?日里士君」


出入り口の方に目を向けると、そこには未瑠華さんが立っていた。


「未瑠華さん!どうしたんですか?」


「偶然横を通ってね。よければ、練習相手になるわよ?ただ壁に向かって撃ち続けるよりも、ずっといいはでしょうし」


「それなら、ありがたく胸を借りさせてもらいますよ。丁度伸び悩んでいたところだし」


少しずつ解決の糸口は見出してきているが、それでもまだ、完全じゃないので、未瑠華さんの意見を聞かせてもらおう。


「一試合だけやったら、アドバイスしてあげるわよ」


「それじゃあ、お願いします」



――――――――――



試合の結果から言うと、ボロ負けだった。未瑠華さんの広範囲の技の所為で俺の攻撃の全てが消されてしまった。正直、反則だとしか思えない。


「まだまだね!でも、センスはピカイチだからもっと強くなりそうねぇ…」


これが柚香と同じ型の技か。他の型との差がおかしいだろ!


「そうそう、アドバイス!私が今まで見てきた変術型の人はね、横に飛ばすだけじゃなくて、上からも弾が弧を描いて飛んでくるのよ」


それを聞いてハッとした。よくよく考えて見れば、弾を放ち、曲線を描いてやることはできていたが、全部横からの攻撃しかやれていなかった。


「確かに…気付かなかった。上に飛ばしたりできるな…」


「あともう一つ。剣術の腕は随分と上手だっから、それと交ぜてできるといいと思う。最初は私も難しかったけれど、慣れれば楽になるわよ」


「交ぜるって、言ってもどんな風にするんですか?」


「そうね…私の場合で簡単に見せると、剣を振るった軌跡に合わせて、波動を放つ。こんな感じよ」


そう言って、剣を振るって、波動が飛ばされる。

サラッとやっているが、俺が何度試しても、まだできた試しがない高等テクニックだ。


「イメージで言えば、振るう瞬間に力を剣先に飛ばす感じよ」


その言葉を参考にやってみると、剣先からなにかが薄っすらと湧きでていた。

しかし、形にすらなっていないそれは、出てすぐに離散してしまう。


「剣先に、飛ばす。まだ、慣れないですね」


「要練習ね。何度もやって慣れるしかないし。私が完璧に覚えるのは、大体一週間ぐらいだし。焦らずゆっくりと頑張るしかないわ」


やっている事は単純でも、その効果は絶大だろう。

一度に二度の攻撃ができるのは、かなりのアドバンテージとなるだろう。


「それじゃ、私はこれで、ちょっとは糸口が見えたっぽいし」


未瑠華さんがいなければ、気付けなかった事が沢山あるな。徹にこれで勝てなかったら申し訳無いな。


「色々とありがとうございました!」


「同門の弟子なんだから、当然よ!あとは、頑張りなさい」


本当に、助かった。

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