十八話 その後

徹君と妖里さんが二人を連れて来た後、私達の依頼は緊急時のため、特別成功とされた。

ちなみに、特別成功とは、目標を倒していれば、イレギュラーが起きても成功として扱うモノだそう。


そして、今は徹君の家で色々と雑談をしてる。


「まさか、徹が倒すのに一役買ったとはな」


「ただ、隙を作っただけだろ。俺はそれ以外は何もしてないぞ?それに土龍を造るのも大分集中が必要だったし、妖里さんが暴れててなかったら造れてなかったぞ」


「そうだな。使


「もう!日里士君もそんなにからかわない」


徹君はあの後、帰ってくる時に土の龍に乗って帰ってきていた。

それと、あの活躍から龍使いっていう二つ名が密かにつけられたらしい。

多分帰りと活躍を聞いた人達が勝手に付けた二つ名だろう。徹君は気に入ってないらしい。


「本当にやめろ。聞いてて恥ずかしくなる」


「妖里さんもあれは凄かったって言ってたんだし、良かったんじゃねぇの?」


「まだまだ最適化できる。これは、未完成なんだ。それでとやかく言われても嬉しくない」


「そっか…」


徹君は少しだけ滅茶苦茶なところがあるのはここでも変わらずのようだ。


「それでさ、話しは変わるんだけどよ。團さんと岸さんが弐級に昇格するらしいぞ。どうやら絡新婦を払い除けて、俺達に逃げる時間を作ったのを認められてだってよ」


「おめでたいな。昇格か…俺達はまだまだ先の事だろうしな」


「俺達は伍級。見習いの立場だからな。当分は肆級には規定でなれないって妖里さんが言ってたしな」


「それでも、肆級からは、トントン拍子で弐級まで上がれるだろうとも言っていたが、イマイチ想像ができないがな」


「コツコツと頑張れば強くなれるってことだよ。今は慢心せずに頑張れってことなんじゃない?」


「だろうな。徹、なんか面白そうな案ないか?俺もお前みたいな代名詞的な技を作りたいな」


「そんな簡単には作れるものじゃないだろ。俺の場合は偶然の産物出しな。偶然動かせる事に気が付けただけだしな」


「気付きねぇ。俺もあるにはあるんだよ。でも地味すぎてなぁ…」


そう言って、気落ちする日里士君は、片手で桃を持って皮を向いてから食べる。


「球が見えなくできるのはいいんだけどよ。徹のような派手で強そうだと威嚇にも使えそうなんだけどな」


「地味だか、日里士のは普通にやってることは半端じゃないからな?技の練習に手伝う側にもなってみろ。見える球の中にある見えない球も避けなければいけない地獄をわかっているのか」


今にも噴火しそうな徹君を宥めながら何気ない雑談をする。妖里さんを待ちながら。



――――――――――



「本当に遅れてごめんね。これは詫びのケーキだからみんなで食べてて」


妖里さんが来たのは約束から三十分が経った頃。みんなで話してればあっという間だった。


「まさか、あそこまでの人混みで電車が地獄になるとは思ってなかったよ。あそこまで酷いのは初めてだったよ」


最近は新しいお店が近場にできたので、お客を集めているらしい。そのせいで、電車などの交通機関は大変らしい。


「最近できたお店のせいですかね?」


「確か、テレビでもやるぐらいの人気だったっけ?凄い人気だよね。美味しいってモノは時に恐ろしいよ」


「それで、用事ってなんですか?」


「そろそろ、ある祭りが開催してね。興味があったらって…これだよ!」


手に持ってる紙に書かれていることは、どうやらトーナメント形式の武闘祭をやるそうで、参加者を募っているらしい。


「そうだね…今、自分達がどのくらいの力を持っているのかを知れるいい機会だから、僕からは参加をオススメすよ」


「武闘祭か、俺と徹は参加で」


「勝手に言うな。まあ、参加でいいが」


「それじゃあ私も、参加で。自分の力をしっかりと知りたいし」


「それじゃあ全員参加ね。後で僕が申請しとくよ。話しは以上。何か説明がほしければわかる範囲で教えるよ」


「それじゃあ、勝つって何してもいいんですか?」


「正々堂々の方が好ましいけど、ルール違反ではないよ。まぁ、殺人は駄目だけど、決闘開始前に何かするのは有りだよ。事前準備を怠らずにやってこその妖怪斬りだからね」


「それなら能力を使ってからとかもいいんですか?」


「もちろん大丈夫だよ。僕は出れないけど三人はジュニアで出れるだろうから」


「出れないってなにかしたんですか?」


「柚香、そんなの暴れすぎて出禁くらったとかじゃない?」


妖里さんの方をみると、明後日の方を見ている。どうやらそうのよう。


「まぁ!そんな話しは、いいから。みんなは頑張ってよ!やるからには優勝を!」


「優勝…頑張るか。徹にだけは勝ってやる」


「それなら、俺も日里士にだけは負けられないな」


そんな感じに各々が息巻きながら自由にして、暫らくしてから、徹君の家を出た。

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