十七話 救出しに森へ
「準備はいいかい?」
「はい!」
俺達三人は急いで本部に戻り、受付に事情を話していると、そこに偶然通り掛かった妖里さんが救援を引き受ける。
今は準備妖里さんが準備を手早く終えて、早速向かうところだ。
と言っても、向かうのは俺と妖里さんだけ、柚香と日里士は異常事態だし危ないので待機、だそうだ。
ちなみに何故俺なのか聞いたら、一番速く動けるかららしい。
「道は殆ど真っ直ぐか…途中からの道案内は頼んだよ?流石に細かいところまでは覚えてないからね」
「途中まででもここの周辺全てを覚えているのはおかしいと思いますけどね」
「そのうち覚えるよ。徹君達もね。さてと、急いで向かおうか。二人がやられるな前にね?」
――――――――――
案内をし終えて、俺等が二人と別れた場所へと連れて行った。
ただ、道中妖里さんが道に沢山といた蜘蛛たちを瞬く間に倒して行きながら、俺の速さを上回るのには流石に引いた。
「凄いな。ここにいたのは参級の二人組なんだよね?しかも即席の」
「はい、そのはずですけど、これは一体…?」
目の前に広がる景色は蜘蛛が一体もいないどころか物音すら聞こえない。
あの時は大分音が近付いており、近くにかなりの数がいたのがすぐにわかったのだが、今はかえって何も聞こえない。まさに静寂だ。
「もしかしたら、倒したのかな?でも、来た道には誰もいなかったし…どういうことだろう?」
「妖里さんの経験上、こういう時はどうするんですか?」
「取り敢えず、探索!探そう、これなら生きてる可能性があるよ!」
「はい」
「僕は右の方を探すから、徹君は少し左に行ったところで探してて。なにかあったら急いで僕の方に来て。わかった?」
「わかりました。それじゃあ俺はこのまま真っ直ぐ行ってきます」
「頼んだよ。徹君」
走って向かったその先は、さっきまでいたところと何ら変わりなく、どこまでも木々で入り組んでいた。
それにしても、何故
妖里さんから聞かされてた黒雨は、建物などには効果が無い。
確かにその通りなのだが、それは、物に限り、生きているモノ、すなわち植物にも有効なはず、それなのに何故生えているのだろうか。
「それも、今じゃないか。今は二人を探さないと」
――――――――――
暫くしてから突如、轟音が森全体に鳴りひびく。
それと同時に蜘蛛が凄い数、音の鳴った方から出てくる。
「凄い音だ。妖里さんの方か?取り敢えず、今はこの蜘蛛達か…」
そうしてすぐに、残していた刻印痕に気力をまわして、能力をすぐに発動する。これで刻印型の弱点である、刻印に時間が掛かるのを、限定的だが無視して発動できる。
最も弱くなってしまってはいるが、元々が強力なので、問題はそこまでない。
「丁度いい。少し試すとするか」
最近は技を練習している。初めは少し微妙かと思ったがこの型は意外と応用がかなり利く。
そして研究した後、物を触れている間のみ、物を好きなように動かせる事がわかった。
それは刻印した物だけということと、その分の消費はするが、強力な事に違いはないだろう。
「取り敢えず一本。地面から出せるか?」
俺は地面に手を置き、力を流す。別に手で触れなくてもいいのだが、意識し易いので置く。
そして、地面に刻印するよう手を動かす。そこから、少しずつ地面を動かしていきながら、一本の土の龍を造り出す。
「模龍の傀儡完成だが、気力を凄い量持ってかれるな。人より多いからできるがあまり実戦で使わない方がいいな」
それでも出してしまったので、取り敢えず蜘蛛たちを轢いていく。
正直、噛みつかせるように動かしたのだが、最早質量で押し潰してしまっている。
意外にも対多なら有用かもしれない。それでも、触れていなければいけないのが少し面倒である。
「要練習か。取り敢えず乗って行くか」
跨がって見たが、見た目通り座り心地が悪いので少し動かして座りやすくする。
そして、土龍での移動は速く、段差などをものともしない。地面を泳いでいるため、岩なども関係なく動けるのは意外だった。
だが、残念な事に、空は飛べなかった。あくまでも土龍だった。
取り敢えずは、移動と戦闘に使えそうな型ができてよかった。
――――――――――
向かった先では妖里さんが、もう絡新婦と戦っていた。
奇襲攻撃として土龍を降りてからぶつける。
絡新婦の攻撃により、壊されるも土なのですぐに修復する。地面を経由しての操作なので、消費は激しいため、もう一撃だけして崩す。
トドメは妖里さんが、太く鋭利な刀で絡新婦を斬る。
絡新婦は倒れて塵となる。
「いや〜助かったよ。徹君」
「あんな爆音、何があったんですか?」
「それは、ちょっと力を武器に込め過ぎたら爆発しちゃってね?それよりも、さっきも龍はなんだい!?随分と面白そうだったよ!」
はぐらかした。それでやられてたらどうなってたか。
「これは刻印型を応用した技ですよ。刻印すると触れていれば自由に動かせれて、それで地面を刻印して土龍を造って動かしてたんです」
「いいね!戦略の幅が拡がりそうだよ!」
「でも、気力の消費は冗談にならないですけどね」
「まぁ、良い事もあったし結果オーライ。そこ」
指を指した先には、二人が転がっていた。まだ生きているようだ。
「生きているのは凄い事だよ?ほんと。凄い二人だ。それじゃあ帰ろうか?」
「はい!」
その後はまだ土龍を作らされて、それで帰ったのであった。
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