十五話 初依頼

「ここか?」


「依頼の場所は係の方がいるって妖里さんから聞いてるし、まだ先だろ」


「こっちの道を通れば会えると思う」


今は依頼を始めるために、日里士君が先行して進んでいる。

私と徹君は少し下がって、後ろからついてる。


細道を通り抜けると、少しだけど開けた場所に出た。

少しベースキャンプみたいな感じになっていて、数名の人がいた。


「おや、君たちが今回の…?」


「はい。火吹蜘蛛の討伐です」


「そうか。なら気を付けろ。火吹蜘蛛は数がとにかく多い。そして絡新婦ジョロウグモに出会ったらすぐに逃げろ。いいな?」


「わかりました!」


「絡新婦はかなり強いが、移動の速度は逃げられない程ではない、が奴の奇襲には気を付けろ」


係の人は、少し上から待機して、見守るらしい。基本的には監視だけで、それ以外は警告などをやるそう。


「ここの森は隠れるのは向いているが、実のところ火吹蜘蛛と、この森の相性は悪い。最悪自分の火で燃え尽きちまうぐらいだ。奴らは不用意に火は使えないことを覚えておけ」



――――――――――



「何体見つけた?」


「7体だ」


「私の方は10体も」


「俺の方は6体だから、計23体か…」


少し緊張が残ってる。少しでも力を出せるように柄は硬く握った。


「それじゃあまずは、敵の数が多い柚香の方から行くぞ。後ろから、俺がサポートするから二人でトドメを頼む」


「わかった」


「…うん」


覚悟。命をこれから奪うんだ。

私…結局……怖いな。でも二人がいてくれる。


「行くぞ?3…2…1!!」


その合図に私達は動き出す。まず日里士君の真っ直ぐ飛んでいる弾が、目の前の火吹蜘蛛の1体に当たる。

でも全ては倒しきれず、すかさず残りが連なって向かってくる。

でも素早いのと辺りが絶妙に暗くて、私は残りを見失ってしまった。


「前から4体!少し離れたところの右からも5体来てる!気を付けろ」


「任せて!」


「右は俺がやっとく。日里士は他にいないか探してくれ」


私は自分の持ってる刀に力を流す。とにかく流す。

気力を目一杯溜めきった刀をゆっくりと振るう。


「はぁー!」


「おぉ…滅茶苦茶か?」


少し地面を削っちゃったけど、大丈夫だよね。


「こっちも丁度終わった」


「次は、戻って7体のとこか」


「そこなら襲いかかってきたから倒しといた」


「は?………残り行くか!」


流石におかしい気がするけど、徹君はたまに凄いことをすんなりと、やってのけるし…ありえなくはないのがなぁ…


「そうだね。徹君は大丈夫?」


「あぁ、何も食らってないはずだ。見えない攻撃がなければな」


「流石に無い、とは言い切れないか…」


「なんかあったら殴っといてくれ。できれば柚香」


そういえば日里士君は見た目に反して、力とか凄く強かったな。確かにそれだったらやって欲しくないだろうな。


「わかった。俺が殴ろう」


「取り敢えずは、まだ残ってる蜘蛛を探そう。さっきのところから動いているだろうし」


「そうだな。まずはさっきいたところまで、日里士、案内を頼む」


「おう。確かこっちだ」



――――――――――



「あったここで終わりだ」


「まさか木に印をつけながら歩いていたとはな」


「たまにはやる男だからな。それと、お目当ての蜘蛛達はまだ、移動してな……」


「どうした?」


「何か聞こえる…大きい、近付いてくるぞ!逃げろ!」


木々を薙ぎ倒して近付いてくるそれは、女性の身体に蜘蛛の足がついた、おびただしい生物だった。


「お前らかァァ!!」

 

「絡新婦ってのはあれだよな?」


絡新婦、監視員の人が、出会ったら逃げろと言っていた妖怪。

私達は、その言葉に従ってすぐに後ろを向いて走り出す。


「急げ!」


「森に入って来たのはどっちからだ!?」


ここの森は枯れ木がチラホラとあるのに、意外にも入り組んでおり、迷いやすい場所だった。


「こっちだ!」


「ここを突っ切るのか?」


「そうだ!」


「絡新婦らは少し後ろにいるけど、まだ追ってきてるよ!」


「取り敢えず森の外まで走れ!」


「あと少しだ!」


そうして、なんとかその森から出ることが叶った。

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