閑話 渡しもの

今日は妖里さんから俺だけ誘われて、亜空界に来させるられている。何でも渡したい物があるらしい。


そのはずなのだが……


「見えるかい?あれが今回発見された狐なんだって。そういえば徹君達は狐の所為でこの世界にきちゃったんだっけ?」


「はい、そうです」


「そうか…今のところは、あそこだけが行き来できる場所の筈なんだけどな?」


何故か色々な、話をされている。何なのだろうか。俺だけって…正直気まずい。


「…あの、入る気がしないゲートの事ですか?」


「んっ?そうそう。あれってこの世界亜空界僕達の世界通常界を簡単に行き来できているでしょ?アレの研究ができれば暗黒界って呼ばれてる、妖怪達が住んでる所にも行けるかもしれないんだけどね〜」


「調べられないんですか?」


「そう、何でかわかるかい?」


「…触って壊れてしまったら、帰ることができなくなるから、とかですか?」


「それもあるけど、あれって今の僕達よりも何倍も強い世代のっていう人が開いたゲートらしくてね。あ!因みに初代様っていうのはこの、妖怪斬りの組織を創った人でね。それに、僕たちが使うの基も作った人らしくてね…ってどうしたの?顔に手を当てて?」


「そのが型の基を作るまではどうだったのかなと思って」


「あぁ、それは完全に不明だね。ギリギリ初代様辺りは文献に…まぁ、一冊だけで、内容もそこまで詳しく無いけど、あるってぐらいだし…そもそもこの組織が表に全く出てないぐらいだからね。文献は殆どないから…探してはいるけど」


「そなんですか…そういえば、今よりも何倍も強いってどういうことなんですか?」


「それは簡単!単純に一人あたりの気力の量が年々下がっているんだよね」


「それって、ヤバいじゃないですか!?」


「まぁ…強大な妖怪の大体は初代様が倒してくれているからね。残ってるその中でも弱い妖怪達で、数は三体だよ」


「その三体ってどういう妖怪なんですか?」


「えっと…あった。一体は狐の妖怪でね〜玉藻前タマモノマエっていう妖怪でね。どっかで聞いた事ない?この文献に色々と載ってるよ!」


「確か、人間の女に化けた九つの尾を持った狐でしたっけ?」


「そんな感じであってるよ。実はその玉藻前って、実際に存在しててね!僕は一度だけだけど対峙した事があったけど、すぐに逃げられちゃった…」


妖里さんから逃げるとかどんなスピードをしているのだろうか…考えるだけで嫌になる。


「いや〜少し慎重になり過ぎちゃったからな。緊張のし過ぎで体が強張っちゃってね」


自分から聞いておいてなんだが、どんどん話が逸れていってる気がする。というかそれてしまっている。幸い時間は全然あるので問題は無いが…


「それで後の二体はどんな妖怪なんですか?」


「あぁ、そうそう。それでもう一体は酒呑童子シュテンドウジって言ってね。『黒い鬼の王』だよ。その名の通り馬鹿みたいに強いんだよね。僕が本気出しても負けちゃったし…」


「えっ…妖里さんが本気出しても倒せないって、ヤバいじゃないですか!?」


「正直本人だけの実力ならギリギリだったんだけどね。王ってぐらいだから仲間がいてね。その内の一人がもう一体に数えられる茨木童子イバラキドウジっていうヤツでね」


「どんなヤツなんですか?」


「簡単にいえば災害みたいな感じ?実力は酒呑童子に劣るだろうけど、それでもだいぶ強かったよ…あの戦いは流石に死ぬかと思ったし…というか少し前に戦ったあの白鬼も異常だったとしか言えないし。何か異常事態でも起きてんのかね?」


「妖里さん、それを聞かれても…俺にはわかりませんよ?」


「あはは!そうだね!今思い出したけど、これ返しとくよ」


そう言って渡されたのは見覚えのない、灰色の勾玉だった。


「これ…なんですか?」


「あれ?君のポッケに入ってたらしいけど?君たちがここに来た原因を探る為に、その勾玉に疑いがつけられてたけど、違うってなったから返されたんだけど…そうか、知らないか」


妖里さんは、そう言ってから考え込んでしまった。


「知らないのに持ってたってなると。う〜んなにかな…?」


何かブツブツと唱えながらくるくる回っているが、なんだろうか。

あと、この勾玉はどうすればいいんだろうか?


「妖里さん。結局これはどうすればいいんですか?」


「あ〜それは、御守りかもしれないから、肌身離さず持っておくのがいいかな?まぁ、任せるよ。あと、それのことは誰にも言わないように。二人には話してもいいけど、絶対に漏らさないよう口止めしといてね?」


「わかりました」


「それじゃ聞きたいことがなければ帰っても大丈夫だし、ここを見て回っても大丈夫だよ!その権限は師匠から貰っておいたし…今日だけだけど…」


まだいてもいいなら少し見て回っても良いな。様々な情報が得られそうだし、少しでも強くなれるように、知識を深めよう。


「それじゃあ、もう少しここに残ります」


「わかったよ。僕はこっちの方にいるからね。何かあったら聞きにおいで」


「はい!」


そうして、本を読み漁った。

なんと驚くべき事に、得られた知識は少なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る