十四話 妖里さんの家で
放課後、妖里さんの家に柚香と一緒に行くと、もぬけの殻で、何も返事が返って来なかった。
「なにかあったのかな?」
「さぁ、来るまでは待つしかないんじゃないか?」
「そうだね」
そうして話しながら、ゆったりと待っていると、すぐに、妖里さんは走って来た。相当急いでいたようで、頬には汗がそこそこ流れている。
「はぁ…ごめんね二人共。あっちで色々とあって遅れちゃってね。あと日里士君のことは本人から聞いてるよ」
そして妖里さんは、流れるような手付きで扉を開き、手招きをする。
「さ!入って、ずっと立ってて疲れてるでしょ?」
「ありがとうございます」
「前々から思ってたけど、堅苦しいのはいいよ?徹君」
「えっ…と、その、身に付いてるものなので、簡単にはできないんですが…」
そうして悩んでいると、柚香がさっと妖里さんに話す。
「徹君は、そういうところがちょっと駄目だから、直すのは無理ですよ…」
「あ〜柚香ちゃん?そういうことは本人の前で言わないほうが良いと思うんだけど…」
そう言いながらこっちを見る。正直に言えば辛い。それに妖里さんの視線も相まって更に締め上げられる。
「まぁ、それはさて置き。さっさと入って本題に入ろうか?」
「…はい」
そう言ってゆっくりと入って行った。
――――――――――
「それで、話しなんだけども。妖怪とはこっそり戦ったら駄目、というのは知ってる?」
「いや、聞いてないですね」
「そうか…まぁ、不慮の事態とかに備えれる為に、本部や支部に行って依頼を受けないといけない。ていうだけだからね。破ってもお咎め無しだし」
「それがどうしたんですか?」
「僕達妖怪斬りには四つの責任っていうのがあってね、『選択の責任』『失敗の責任』『依頼の責任』『守秘の責任』。これらを守んないと…最悪処刑だね」
「処刑!?」
「あくまで最悪だし、ここ数十年間は処刑が行われていないから。大丈夫だと思うよ?」
「ちなみに、何をどうしたらそうなるんですか?」
「妖怪関係を一般人にバラす事が対象だね。それ程これは重い事なんだよ」
そんなに重い事なのか。それにしても処罰が重過ぎるような気もするが…ん?そういえば…
「……妖里さん。俺達にそれを言うのって良かったんですか?」
おもむろにそっぽを向き始めた。あと若干目が泳いでる。
「ま、まぁ…君たちの場合は、既にあの世界の事を知っちゃってるし?べ、別にいいんだよそんなことは」
良く無いだろう、結構軽いのでは?それとも妖里さんが特別偉いだけだろうか。
「それに、最悪権力で握り潰すから問題無いよ」
「それは…良くないと思います」
「柚香の言う通りですよ」
「とにかく!四つの責任について簡単にまとめた紙があるから、覚えておいて。あとこれ日里士君の分」
〜〜四つの責任
・『選択の責任』
依頼は基本自分の級に合ったモノしか選べず、それ以外の依頼は受けれるが完全自己責任になる。
・『失敗の責任』
依頼失敗の責任は重く、基本は活動休止などだが、最悪〜〜
なんだか難しくて途中で読むのを断念する。
隣で柚香は真剣な顔で見ているが、やはり柚香は優秀なんだな。
後で家に帰ってから続きを読もう。
「まぁ、それを守ってれば基本何してても許されるからね。それに結構緩いし抜け穴も多いしで、結構ザルなんだよね…それ」
「いいんですか…それ?」
「ぶっちゃけ良く無いね。正直思うけど、良く世間にバレないなって思うんだよね。それも逆に言えば、情報統制がしっかりとれてるって事でもあるけど」
なんかこの組織が大丈夫なのか心配になるな。
「取り敢えず、暫くは依頼に慣れるよう、いくつか受けてみようか。ちなみに自分に合った依頼を受けた方がいいよ。最悪死ぬから。それに辛いし…」
そう言う妖里さん顔は見た事がないくらい本気顔をしていた。
「師匠は地獄しか見せれないし…ヤバいし…人間じゃないよあの人…」
「あの?妖里さん?」
呼び掛けても反応せず、何かをブツブツと言っている。自分の世界に入り込んでしまっているようだ。
「取り敢えずそっとしておこうか」
「そうだな。そろそろ帰っても大丈夫だろう」
「その前に、日里士君の分は徹君に任せて大丈夫?」
「あぁ、たしか俺の方が近いからな」
「それじゃあよろしくね」
そうして、俺達はそれぞれの家に帰った。
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