十二話 ただの優しい自慢屋さん

「なんの音!?怪我人は?全員無事!?」


そう言ってあの人は、この室内へ額に汗をたらしながら入ってきた。これだけの音がしたのだから心配になって見に来る人の一人や二人いるだろう。

まぁ、原因は俺と言っても過言ではないのだが…

幸い怪我人もなく、壁も無事であった。それにしても、この壁どれだけ硬いんだ?


「あ、優亜さんじゃないですか。お久し振りです!」


「ん?未瑠華に竜峰じゃない。久し振りね!二人がいるなら、まぁ問題ないか…」


問題ないと言っているが、こっち目線では問題大有りだと思ったが声にしないよう全力で黙った。


「あら、貴方達は?」


「彼等は僕らの弟弟子、つまり後輩です」


「へぇ…妖里様は新しい弟子をッ…」


未瑠華さんはこっそりと小声で俺達に教えた。


「優亜さんは、悪い人じゃないんだけど、妖里さんに取り憑かれてるというか、崇拝してるというか……ね?そういう感じなのよ」


そういうのに絡まれる姿を想像したら少し、というかかなり面倒くさい事になるとすぐにわかった。

やっと伴瓦さんが、後ろには気を付けた方が良いと言っていた理由がはっきりとわかった。


「それで、名前はなんていうの?」


「徹に、日里士に、柚香ちゃんよ。みんなすぐに色んな事を覚えてて、才能もすごいのよ!」


「あらら、それじゃ、私の記録も簡単に塗り替えられそうね!」


何かしらの記録を持っている事を誇らしげに言う優亜さんを見て、とても興味が湧いた。


「記録って、どんなものを持っているんですか?」


柚香がそう聞き、優亜さんは、待っていましたというか顔をして、言い始めた。


「ふっふ、私は弐級の妖怪斬りなのだけれど、それだけじゃ沢山居るの。でも、私はその中でも、歴代で最も早く弐級に上がったのよ!」


優亜さんは、鼻かなり高くなるまで、鼻高していきながら誇らしげに言っていた。


「そうなのよね。今じゃ優亜さんは、妖怪斬りの中じゃ、結構名の知れた実力派のエリートよね」


「そうなの、そうなのよ!まぁ、誰も怪我がないようなら、私はやらないといけないことが山積みなのと、訓練の邪魔しちゃ悪いから戻らしてもらうわね。それじゃあ〜ね。頑張って」


そう言って、帰って行った。相手に力を注ぐ事を考えては駄目なんだなと気付かされた、一連のながだった。

練習して、二人を護れるようにしないと。


「不思議な人もいるんだな。妖里さんって本当に人気が凄いんだ」


「日里士そういうことは言わないのが暗黙の了承だ」


「あ、ごめん」


「まぁ、驚きもあったけど、今日は結構な時間が経ったしな。帰る準備をしようか。剣とかは、元の場所に戻して、あとこれ。持っておいて。絶対に失くさないでよ?」


そう言って、カードを渡された。そこには自分の顔写真とフルネームが書かれていた。


「それが、この世界での妖怪斬りの権利証明書みたいなものだし、結構な貴重品だからね。失くさないように」


「あの、妖里さんは?」


「俺が背負って家に連れて行っとくから、気にしないでいいよ。あとはこっちでやっておくから、家に帰ってていいよ」


「「わかりました!!」」「了解でーす」


各々は自由に返事をし、家に帰って行った。自分も行こうとしたとき、人相の悪い人が歩いて来ていた。


すれ違い様に何かされるかも知らないと考えていたが何も無く過ぎ去り、俺は少し急いだのであった。


家に帰ってから、ご飯を作り始めた。ちなみに日はとっくに傾いている。

早々に食べたいから、今日は凝らなくてもいいだろう。幸い明後日までは休みのようだし今日は卵かけご飯にしようと、ご飯を炊いた。


「うッッ!!」


これは余談だが、卵に何かをかけるものときはしっかりと、中身は大丈夫か確認した上でかけた方が良い。



――――――――――



「う…不味かった…」


なんとか食べた卵かけご飯だったが、なんと日里士が置いて行ったハバネロが醤油に少量入っていた。

家は近いし後で蹴りに行こうと決心した瞬間だった。


その後は軽く片付けてから、外に出る準備をした。理由としては、日課の家の周り30週と日里士の家に文句を言いうためだ。


「戸締まり大丈夫だな。よし、行くか」


夜の街は不思議な空間だ。いつも通っているはずの道なのに全くも違う雰囲気を醸し出しているのだから。

そうして走っている内に日里士の家に着いた。


電気はまだついていたので、家のチャイムを押して呼び出した。


「日里士…いるか?」


「徹?こんな時間にどうした。なにかあったか?」


「あぁ…忘れ物を見つけたからな。届けに来た」


「ちょっと待ってろ。今開ける」


それから開けるまでに、ハバネロを出して待ち構えた。


そして日里士が玄関を開けて出てきた瞬間に口にハバネロ千切ったものをねじ込んだ。

勿論日里士はあまりの辛さに驚いていた。

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