十話 型の練習
「妖里さん、もう流石に大丈夫になりましたよね?」
「え!?あ、いや〜」
「なりましたよね!?」
「あ、えと、はい…なりました」
妖里さんが竜峰さんに脅されている。さっきも未瑠華さんにとやかく言われたし、どっちが上なのかわからなくなってしまう程、妖里さんの立場が無いように見えてしまう。
「はぁ、まだ本調子じゃないのに…まぁいいや。それじゃあ型だよね」
「はい。今の所やっている訓練は、気力を体に纏った状態で動くってことぐらいで、型がどういったものなのかわからなくて」
「ミネは見せてないのかい?」
「俺のは外的変化は何も無いからわかりにくいんですよ」
「それもそうか。それじゃあよく見てて。」
そういった妖里さんは手を突き出して少しすると、地面から急に剣が飛び出した。
「これが僕の武具型の本領。まぁ、基本はこれだけの地味な能力さ。まぁ〜応用は凄くて、使い方も多岐にわたるからね。使い勝手のいいものだよ」
「そうなんですか、それじゃあ僕の変術型はどうなんですか?」
「う〜ん。僕はあまり知らないけど、兎にも角にも使い方次第って感じだね。それで徹君は…」
そう言って黙り込んでしまった。俺は少し気不味くなってしまった。
けれど少ししたら口をすぐに開いた。
「駄目だ彼は、滅茶苦茶だしな。困ったないい例が浮かばないな。詳しく知ってるんだけどな」
「それなら無理に言わずに少しずつ教えてくれれば大丈夫ですよ」
「そう言ってくれるとありがたいよ」
「それはそうと、刻印って言いますけど、俺は何も知らないんですが、それで大丈夫なんですか?」
「そこは適当で大丈夫だよ。現に僕の友は、トランプのどれかしらにしてるし。多分形よりもそこにのせる量なんじゃないのかな?僕の武具型もそうだし」
「そうですか…今はまだ、しっかりと出来ていませんが、少しずつ頑張りますね」
「うん。頑張って!ミネが見てくれると思うから!」
伴瓦さんの見えない程早い拳が養鯉さんの脇腹を刺した。妖里さんは吹っ飛んだ。
「あれは気にしなくて良いから、続きをしようか?」
「…え、いいんですかあれ。死んでません?大丈夫何ですか!?」
「ひ、日里士。縁起でもない事、言わないでくれ」
そう話ている途中、柚香達が来ている事に気が付いた。未瑠華さんは、妖里さんに呆れの感情を見せてこちらを向いた。
「ミ〜ネ、今度は何したの?」
「いやね。自分がやらないといけない事が全部押し付けられたらね?」
「なんで懲りないのかしら。いい加減学ばないの?」
「無理だな。あの人は弐級だけど実力だけなら、零級相当だってよく聞くし。昔はもっと《凄い人》だったハズなんだけどなぁ…」
「ホントね。なんでこの人が選ばれるのよ…」
「うん、うん。それもだね」
選ばれた?なにに選ばれたのだろうか。
「選ばれたって何にですか?」
「あぁ、そっか。知らないよね。実はこの組織のトップって総司令官って言う役職なのね?でも、今、務めている人はもうかなり高齢らしくてね。そろそろ代替わりなんだよね。次期総司令官候補にこの人が浮かんでてね」
「それで今、最もなるだろうっていわれてるのが、
「そうなんですか…!」
ここ最近でトップにのぼるぐらいの驚きだ。どんなところが評価されたのだろうか。
いや、そういえばこの人は普通に強いんだった。これまでを見ていて、あの戦いを忘れていた。
「さてと、あれは無視して続けましょうか?ここからは私と柚香も一緒にやるわよ!」
「了〜解。それじゃあ、日里士君と柚香ちゃん、二人はそこに、そこそこの間隔をあけて並んで」
「こうですか?」
「そうそう。お互いの技に当たって怪我したら良くないからね!」
「俺はどうしてたらいいですか?」
「徹君は俺と一対一で教えるからね。あの二人は体外で終わらせる型だけど、徹君は全然違うからね。少し後で二人に混じって貰うから。付いて来て。危ないから少し離れるよ」
そんなことを言われて、少し離れた妖里さんが埋まってる所に来た。
伴瓦さんは埋まっている妖里さんに向かって、蹴りながら喋りだした。
「妖里さん。妖里さん!ずっと埋まってないで起きてください」
「だ、誰の…誰の所為で…埋まってると!大体僕、君達の師匠やってるんだけど!?敬いとかないの!?」
そう言いながら自力で抜け出した。
「この組織の最強格が何言ってるんだか…それと、師匠だからって、何でもやらせようとするのはやめてください」
またこっぴどく言われている。はたして本当にこの人が総司令官というこの組織のトップになれるのだろうか…
まぁ、今の俺には関係無い事か。まずは戦えるようにならないとだな。
「はぁ…なんで俺はこの人に師事して貰ったんだろう…」
「それを本人の目の前で言う事!?ねぇ!ちょっと!竜峰!!」
二人は、段々と激しくなり、ついには口論になり始めてしまった。俺は最早蚊帳の外となってしまい、どうするべきか困惑していた。
その時に訓練場の扉が開き、二人の目線はそっちの方へと向かい。二人の口論はそっと幕を閉じたのであった。
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