八話 気力操作

今の妖里さんを助けようとする気が何故か起きない。さっきの恨みも相まって更に、何かしようとする気が失せていく。

何があったかを簡単に言えば、妖里さん曰く、気力を妖怪斬りとしての訓練の為に色々な確認をしている所で、さっきにはその適性が何かを調べる方法を使い探るというところまでは良かった。だがしっかりと、説明がされないままやらされ、そのせいで死ぬ程痛いものを食らってしまった。

どんな感じかを説明すると、腹に焼かれた杭を打ち込まれる様な感覚である。

なにはともあれ、今は話し掛けに行った伴瓦さんに任せる事にした。

ちなみに柚香は、食べ終わった未瑠華さんと自身の型について聞いていた。


「うぅ…一気に気力が吸い取られた…」


「それで、倒れたんですね。でも、あの子熱がった様子もなかったし、相当な気力の量ですよね?」


「そうだね…柚香ちゃんの気力は膨大。それも、僕より大分あるね。あぁ、何回か適性を調べる事はして来たけど、こんなの初めてだよ」


「そうなんですか」


「あの?妖里さん、結局は大丈夫なんですか?」


「あ〜動くのは、無理…」


「それじゃあ、妖里さんはここで休んでてください。それで、あとのやる事は何ですか?」


「気力の操作と武具の配布だね」


「わかりました。では」


「あの?座れるとこに運んでくれると助かるだけど?ねぇ!僕一応、君の師匠なんだけど!?」


そう喚く妖里さんを無視して、伴瓦さんはこっちに来た。妖里さんは、辛そうにしながら椅子のある所に移動していた。


「それで気力の操作についてだけど、人によってはここが一番難しいんだよね。まぁ、頑張ろうか?」


「「はい!」」


「まずは、自力で体内で動かせる様にしようか!」


――――――――――


それから少しして、伴瓦さんの助けてあってのものだが、気力の操作の大体の感覚を掴んだ。徹も同じく、掴んだようだった。


「うんうん、上出来だね。それじゃあ、次のステップだよ」


「次はどんなのですか?」


「今は体内で回してるだろ?それを体外で行う。それだけの様に感じるかもしれないが、これがかなり難しい。だが一番必要な技術、何ならこれが出来なければ妖怪斬りとして働けないな」


「そうなんですか…」


「よし、それじゃあ始めるぞ。イメージは少しずつ体内の循環をずらしていく感じだ。これに関しては日里士、お前が最も出来なくてはいけないからな」


「なんでですか?」


「それは簡単だ。お前の型は変術型だよな?変術型の本質は放出と言ってもいい。それを如何に操るかで、生存率は跳ね上がる」


そういえば伴瓦さんの型は、何なんだろうか。何故か無性に気になった。


「そういえば伴瓦さんの型は、何なんですか?」


「俺か?俺は体術型だ。どういったものか簡単に言ってしまえば、身体を倍以上に強化する型だ。基本的に強化倍率の最大は十倍って所だ」


「そうなんですか。あと、あそこでのびてる妖里さんは?」


「妖里さんは武具型だよ。それもかなり巧みに気力を扱う、妖怪斬りのエース的存在だよ。あの人の師匠も凄いから、あんなんでも結構ファンとか多いんだよ。だから、君達も後ろには気を付けた方が良いよ。僕も数人程に迷惑してるし」


「そうなんですか…わ、わかりました」


意外な事を聞いてしまって、少し頭がまわらなくなっていた。妖里さんって凄い人だったんだ。


「それじゃあ、妖里さんの師匠はどんな人なんですか?」


「妖里さんの師匠…か…俺のイメージじゃ怖い…人だな。あくまで妖里さんから聞いたイメージだが。実際に会ったことはないな」


「そうなんですか」


「何かと忙しい人らしくてな。誰かは俺も知らないな。未瑠華も知らないだろうしな。もしかしたら見栄のため嘘かも知れないな」


そうして伴瓦さんはチラっと妖里さんの方を少し見てすぐこっちを向いた。その顔は悪意に満ち溢れているのが容易にわかった。


「それじゃあこれで、質疑応答…って程じゃないか。まぁ、質問は終わりだよ。訓練の再開と行こうか?」


「「はい!」」


――――――――――


頭の中で色々と想像してのイメトレを行っていた。なぜかは、簡単だ。全くコツを掴めなかったからだ。

意外にも簡単に気力をまわせた。だが、伴瓦さんや徹のやっているものよりめ数倍見劣りするものしか出来なかった。二人がやるとオーラみたいなものが体から体外に出ているのが目で見える。

伴瓦さん曰く、見えなかったりするのは気力の操作に何かしら問題があるか、気力か少ないかだそうだ。

気力操作は誰でもできる基本動作――手足を動かすようなもの――らしく、一般人でも知らず知らずの内にできているそうで、可能性は一番薄いらしい。

だが、気力が少ないというのは妖怪斬りにも少なからずいるようで、俺もその一人の可能性が大きいらしい。


「う〜ん。これは吉なのか凶なのか」


「これは、そうだな。変術型との相性は絶望的だけど、見えない弾を飛ばせるっていう点では良いかもしれないな。だけど、変術型は気力消費の激しいだから工夫して戦うしかないね」


「日里士ならそこには問題がないな」


「酷い事を言ってくれるな、お前は」


これはじゃあ今日は寝れないな。さてと、どうしようかな…

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