七話 適性確認
妖里さんが、二人の名前を言って扉を開けたのまでは、格好が良かった。
だが、今の妖里さんは汗水垂らして胸元から手帳を出して色々と確認をしており、さっきまでの雰囲気が台無しになっていた。
「あ、あれれ…?お、おかしいな、誰もいない…でも、間違ってもいない…」
そう独り言を呟いており、顔に焦りと困惑があった。その時、後ろから人が現れた。
「妖里さん、やっと来たんだ」
「あ!未瑠華、良かった合ってた…。あれ、でも竜峰は?」
「私と同じでお手洗い。そして、お腹空いたからご飯買いに行ってもらってるわ」
「要はパシリにされてると!?それだと、困るんだけどな…」
「妖里さんが遅いのが悪いんですよ。自分から、時間指定しておいて、遅れるってどういう事ですか?それに今回で…「ストップ、ストップ。僕が悪かったから。だがら、一旦ストップして!」」
「はぁ…そうですか。どうせ直さないんだろうけど。あと、ミネちゃんはそろそろ帰って来ると思いますので、少し待っててください」
「はい…」
そう言った妖里さんの顔は、さっきの真反対となっていた。
「それと、貴方達が妖里さんの言ってた人達ね?
「「「よろしくお願いします!」」」
「私の事は気軽に未瑠華って呼んでいいからね?」
それからは、自己紹介を軽く済ましてから、部屋の中に入ってもう一人を待っていた。その待ち時間に妖怪斬りとして必要な知識を教えてくれた。
それから少しして細身だが高身長の男が、袋を両手に持ってやって来た。
「妖里さんに…あれは、聞いてた新しい弟子か!」
「あ、来た。ミネ、売店にカレーパンはあった!?」
「落ち着けって、ほらちゃんと買ってきたから。それと、君達が妖里さんから聞いてた3人だね。僕は
そう言って両手に持つ袋の中から、カレーパンの袋二つを、未瑠華さんに投げつけた。
「レシート貸して。えっと代金は…財布何処だっけ…」
「う〜ん。まぁ、二人は食べ終わったらでいいか…」
そう言うのと同時に、未瑠華さんは財布からお金を取り出して伴瓦さんにわたしていた。
「え〜と、それじゃあ君たちの型の適性は何か調べようか?」
「調べるって言ってもどうやるんですか?」
「その質問はごもっともだけど、その前にやらないといけない事があってね。日里士君。手出して、そう」
妖里さんは日里士の出した手に、自身の手を重ねた。
「無理矢理君の中で渦巻いてる、力を動かしているけど感じるかな?」
「なんか、気持ち悪い感覚なら…」
「まぁ、本来とは違う動きをさせているからね。でも、感じるって事は妖怪斬りとしての適性あるって事だからね。ほら、徹君は竜峰に、柚香ちゃんは未瑠華にやってもらって」
俺と柚香は、妖里さんの言う通りにし適性をしっかりと確実にした。
「それじゃあ、向いている型を調べようか。まずは日里士君から、ほら、背中出して」
椅子に座らせて妖里さんは片手を背中に合わせた。
「はい」
「少し衝撃が強いから耐えてね!」
「えっ?…ッッ!!」
日里士は声にならない叫びをあげて、床を転げまわった。
「あ、ご、ごめん。力込めすぎちゃった…でも、しっかりと分かったから許して!!」
「は、らが…や、ける…」
「ちょっと待っててね」
そう言ってまた、妖里さんは手を日里士に当てた。
「これでどうだい?」
「大分マシになりましたね!?」
「ご、ごめんって。そんな怒らないで」
「他に方法はないんですか?」
「あるにはあるけど、色々と面倒なんだよね。」
「そうですか…」
「それで日里士君の型はね、変術型だね。詳しくは、二人に聞いて、僕はあと二人の適性を確認しないといけないから。次は失敗しないから、徹君。ほら座って」
「はぁ…妖里さん、面倒事の押し付けですか…それも一番の面倒事じゃないですか。ばぁ…わかりましたよ」
伴瓦さんは面倒事そうに日里士に色々と教えていた。
俺は、勇気を振り絞って座った。死ぬわけじゃないんだ。そう、死ぬわけじゃ。
「それじゃあいく、よ」
強過ぎる衝撃に耐えたが、その後に起こったのは燃える様な痛みだ。
「うっ…」
「ちょっと待っててね?」
さっきと同じように妖里さんは行動した。
「え〜徹君は刻印型だね」
「今度も同じで、二人に聞いてね」
「おう、徹もここ座りな。日里士大体わかったか?」
「はい、なんとなく」
「最初はそんなもんでいい。だが、しっかり全て覚えろよ。それで、徹。お前の、型についてだが…簡単に言えば自身又は他人を対象に力をバフ、デバフを与える能力だ。基本技も"刻印彫刻"の一つしかない」
「そう、なんですか」
「だが、一つしか無い分、技の力は絶大。それに工夫次第では、生存率もかなり跳ね上がる。地味だが有用な型だな」
「そういえば日里士の型は、どのようなモノなんですか?」
「俺の?う〜ん、使い方次第?」
「本当にそんな感じだな。玉を作って飛ばす。簡単に言えばそんな感じだ」
「俺なんかより、柚香の方はどうなんだろ」
「さぁな、妖里さんの結果を待つしかない」
そう言って柚香の方へ視線を向けると、妖里さんが倒れていた。無論さっきまではピンピンとしていた。
「「「……?」」」
男三人がシンクロして固まった。話し合って仲でも深まったのか。否、目の前の何故そうなっているのかわからない状態に同時に気づき、困惑しているだけである。
「お〜い、妖里さん?」
伴瓦さんが、近づいて話しかける。
「か、身体が…」
「身体?がどうしたんです?」
それから、しっかりと話せる様になるまでは時間がかなりかかったのであった。
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