六話 訓練準備

次の日になって、妖里さんが来ていた。


「いや〜徹君、生きてて良かった!」


「はは…生きているのが、僕にも不思議ですよ」


「そうそう、それについても話があってね!」


「話ですか?」


「そう、君って結構この世界でやっていけるっと、僕は思うんだ。第一に、君はあの白鬼の一撃を耐えたでしょ?あれが出来る奴はほとんどいない。つまり、君は上に登れる才能があるってこと」


妖里さんがそう言って、提案してきた。


「そういう所も見て、僕は君に妖怪斬りになって欲しい!それにしっかりとサポートするしね?」


正直悩んでいる。命が散ってしまうかもしれない、それだけでどうしようか悩んでしまう。


「それと、妖怪斬りにならないかって話を、日里士君にも改めてしたら快諾したけど?」


「やります!」


つい、勢いで言ってしまった。日里士がやる、それだけで恐怖を少し感じてしまった。

もう失いたくない、命などを気にするのは二の次だと思ってしまった。


「柚香ちゃんにも、しっかりと聞いとかないと」


「柚香も…ですか?」


「僕の見立てじゃ、彼女が一番強くなるだろうね。いや、彼女がトップになるかもしれないんだよね。まぁ…いや、何でもない」


つまりは、柚香の潜在能力は妖里さんから見ても凄いらしい。


「それじゃ、明日辺りには完治するって錬島さんが言ってたから、退院したらここに来てよ」


そう言って紙――ある場所が示された地図――を渡されたが、妖里さんが急に知らない人の名前を言っていたので聞いてみた。


「あの、妖里さん、錬島さんって誰なんですか?」


「あれ?知らないのか、おかしいな。昨日あの人が起きている間に見に来たって言ってたのに…?」


「昨日?」


よーく昨日の記憶を思い出すと、夜中辺りに誰かと会話したのを思い出した。


「ん〜まぁ、錬島さんは錬島レンジマ 野人ノヒトを一言で言うと、“出来る男“かな?凄く格好良くて、空気の読める人なんだよね〜それと、ここの医療関係の最高責任者だね」


「こ、ここの!?」


「まぁ、そんなことは、置いて僕は先に行って待ってるからね!」


「ぁ、妖里さん!」


そうは言ったが時既に遅し、妖里さんはすぐに退室したのだった。



――――――――――



次の日となり、俺はすぐに退院ができた。それに後遺症もなく動けていたので、すぐに妖里さんからもらった紙に示されている所へと向かった。


示されていた場所は一軒家のようで、そこそこ広い敷地だった。


「どうも!徹君。鍵は開いているから、いつでも入れるよ?」


チャイムを押して一番に聞こえたのが、その言葉だった。

俺は庭を少し通って、玄関前に立ってドアを開いた。

鍵を閉め、靴を揃えて置いてから中に入ると妖里さんがキッチンに立っており、その隣には柚香がいた。二人で料理しているようだ。


「それにしてもよく、こんなに良い材料買えましたね?」


「いやね?あの白鬼倒したおかげで、報奨金が入ってね。これで小金持ちだよ!」


妖里さんと柚香がその他にも色々と話していた。


「妖里さん、こんにちは」


「徹君、と日里士君じゃないか、いつからいたんだい?」


妖里さんの言葉に急ぎ後ろを見ては、驚いていた。


「日里士!!本当に、いつからだ!?」


「ははは!ついさっき徹が玄関を開けるところでだ!」


「そうなのかい。それじゃあ皆揃ったね?まぁ、訓練の前にお昼時だし、ご飯食べようか?その後は訓練だよ!」


妖里さんはそう言って柚香と一緒に作った料理を運んでいた。俺らも食膳の準備を手伝って、ご飯を食べてから、妖里さんの家からみんなで移動した。


「さてと亜空界へいくよ!」


そう言って来た場所はあの門の場所だった。


「あの、ここって?危ないんじゃ…」


「それはごもっともなんだけども、ここだと何もできないんだよね。だから、亜空界でしか訓練はできないってわけなんだ」


「そうなんですか。それじゃあ、妖里さんの使ってた技とかもここじゃ、発動できないんだ」


「そう言う事だね!兎にも角にも、まずは中に入ろうか」


そう言って今度は日里士と俺だけ押して、門を無理矢理くぐらせた。あとから、妖里さんと柚香も通って来た。


「それじゃあ、こっちに来てもらうか。この先が、訓練場でね、二人にもこの時間に待ってもらうよう言っておいたし。ここで会っておいた方が色々と、丁度が良いしね」


「あの?二人って誰なんですか?」


「あぁ、徹君には話していなかったね。二人は僕の少ない弟子だよ!これから兄弟弟子になるんだから、会っておかないとね!」


そう教えてくれた。どうやら俺のいない間に、三人で色々と話していたようだ。後で詳しく聞くか。


「さぁ、着いたよ。そして紹介するよこの二人が僕の弟子、伊並イナミ 未瑠華ミルカ伴瓦ハンガワラ 竜峰タツミネだよ!」


扉を開きながら妖里さんは、二人の名前を紹介した。ただし、扉の先に人はまったく見当たらなかった。

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