五話 現世に帰って
私は柚香、色々とあって今はぐったりとしてた。
でも、私はあの不思議な空間――亜空界――で何もできていなくて。幼馴染みの徹君も重傷で、倒れてしまっていた。
そんな徹君は、今は病床に伏せている。私達は側にいる。
助けてくれた妖里さんからの説明によると、妖怪やあの世界のことは、一般人には伏せており、今回の件は通り魔に刺された事になるらしい。
命に別状派ないらしく、妖里さんによると、妖里さんの使っていたような力を、無意識に使ってたらしい。
「いや、本当に生きてて良かった…死んでたらと思うと怖いね」
「本当にそうですね、徹君…私は見てるだけしか出来なくて…」
「その辺も含めて、力を意識的に扱える様に手伝うよ。まぁ今回みたいに戦うのは駄目だけど…」
「そうなんですか」
「まぁ、本部か支部の人たちに言ってればいいけどね」
「そういえば妖里さんが使っていた力って一体、何なんですか?」
「詳しくは明日言うけど、気力、僕達妖怪斬りは呼んでいるよ」
「気力…」
「それを型に沿って扱う、それだけだよ」
「型ですか…?」
「そうそう、空手とかにも型はあるでしょ?まぁ、人によって使える型は変わるんだけどね。」
「それじゃあ、いくつか型はあるんですか?」
「うん、八つあってね……武具型とか、補助型、刻印型、魔具型、体術型、感知型、変術型、波動型とかいう感じだよ」
「そのような型があるんですね」
「それじゃあ、その徹君が使っていた力は何ですか?」
「う〜ん、多分刻印か補助…辺りだね。調べる方法はあるけど、本人がこの状態じゃ、ね?」
「そうなんですか……」
「柚香ちゃんは、とにかく今日は帰ろうか、疲れているだろうし」
「そう…だね」
そうして私達は激動の入学一日目を終えた…
――――――――――
「――ぅり君、娘は頼んだよ」
「それはもちろんなのですが…本当にいいのですが?妖怪に関わらせて…」
「…私は、あの姉妹二人には普通に生きて欲しいと願っている。だが、それは叶わない運命なのだろう。どれだけ離しても、いずれは関わってしまうのだ」
「運命…ですか?嫌なものですね。私も彼に会うとは思いもしなかったですし」
「そうか…君はもう表から消えた存在だったね」
「えぇ、ですから、私の全てを持って彼らを育てて見せます!」
「それは、期待している。君なら問題ないだろうしな」
――――――――――
白い天井。それは目を開けた瞬間に見えた物だった。
一瞬だけ、何が起きたのか理解が出来なかったが、すぐに思い出した。
そしてここが何処かも感づいた、病床だろう。何故あれを食らって生きているのか、自分でも不思議だった。胴体が非常に痛く感じる。
起きたばかりなのに、すぐに睡魔が襲ってきたのだった。その時、ドアが開く音がした。
ドアから出できた白衣の男は、まったくの知らない人だった。
「よう、体は大丈夫か?」
「あの、貴方は?」
「俺か?気にしなくていいさ。俺はしがない医師だ」
ここには俺と、あの白衣の男しか居らず、他の人は一人も見当たらなかった。
「あの、みんなは?」
「お前以外はしっかりと無事に帰っている。安心しろ。それと、お前は通り魔に刺されたという事になって世間に報道されている」
「通り魔…」
そこで妖里さんの言葉を思い出した。世間には隠していることに俺の怪我が入ったのだろう。
そこで俺は、疲労の所為か、眠気が急に襲ってきた。
もう少し話そうと頑張るが、眠気が限界に近づいていたが、それに白衣の男は気付いたのか、すぐに別れを告げて扉から戻って行ったのであった。
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