四話 輝く剣
俺こと日里士は不思議な光景を目にしていた。
それは鬼と人の争いだ。ちなみに人の方は妖里さんだ。
徹は吹き飛ばされ、妖里さんは駆け出したけど間に合わず、ずっとギリギリで戦っていた。
その時、急に妖里さんの持つ剣が輝いたのだ。
光り始めたその剣を両手で持ち、戦い始めた。その速度は目で追えず、両者共に互角の戦いをしているように見える。
「力の使い方はなっていないが、その工夫とやらはしっかりとしているらしいな、その心意気や良しだが…」
白鬼が少し距離をとって…
「だか、それだけでは足りない」
そう言い放った白鬼は妖里さんに向かって、途轍も無い速さで拳を振るい、それを妖里さんは剣で受け止めていた。
「ぁ〜あ、駄目か…」
「久し振りに楽しめたそ若造、貴様の戦闘は…「まだ、終わっていないよ…」」
妖里さんが急に言って、剣をまた振るった。駄目な結果になるかと思ったが、その剣は綺麗に白鬼の片腕を肩から切り裂いたのだった。
「ッッ!!やっと、一味違くなった、と言う事か…」
妖里さんがもう一撃放とうとした時に俺は、柚香の方へと向かった。途中、徹の方を見ると体が動いていないのを見て、俺は肩を貸していた。
「徹、お前…大丈夫か?」
「……あ…なんとか…だが足は…駄目のようだ…動かない」
「妖里さんは…大丈夫だろうか…」
「……大丈夫だ…ろう、俺らは隠れた方が良い……」
「そうか…そうだな」
俺らは隠れて――徹は気を失っているが――妖里さんの戦闘を見ていた。否、傍観してしまっていた…
到底俺らが敵う相手ではなく、後のことは妖里さんに全て託すしかなかった。
――――――――――
僕は妖里、気軽に妖里さんって呼んでね!
今の所は流暢に話してるけど、目の前の状況絶望的なもの。鬼には肌色で強さが粗方決まる。その順番は赤<青<薄橙<白ってなっている事がわかっている。
何故こんな事を話すか、それは今、鬼と戦っているからだ。それも白鬼、鬼の中でも最も強い部類だ。
僕は妖怪斬りの仕事をしており、階級は弐級だ。弐級と言うと六つある内の上から三つ目だ。それなりに強い筈だが目の前にいる白鬼は壱級がなんとか倒せるぐらいの強さ、つまりは普通の弐級ではすぐに殺されてしまうだろう。
「まだ、倒れないか…」
「血が流れて倒れるのを期待しているのか?残念だがそれは無理だ…」
「そうなのかッッよ!」
本当に余裕がない、今は様々な力をいくつも並用してなんとか行き繋いでいるのだ。だが、いつ殺されてもおかしくはない。身体に掛る負担も時間が経つにつれて、酷くなっていくのが感じ取れる。
「次で……」
そう、この一撃は今僕が出せる最大火力。この神器の力を最大限放出し、己の身にある気力を神器のエネルギーに変えて、神器を持った。
刹那の間、俺は鬼の胴体を自分の目にすらも見えない速度で切り裂き、なんとか白鬼を倒した。
「ッッ!!不覚ッか…見事……」
「はぁ…はぁ……なんとか…かな、今日が命日とは、確かにツイテないね」
「ふっ…聞いてたか。だが、その…よう…だ…な…」
最期に白鬼が少し笑い、その後は塵となって消え去った。
――――――――――
徹と柚香の所へ逃げ数分後、決着がついた。妖里さんの勝利だ。全くの無事ではないものの、俺らが生きれる。
その後はかなりふらついている妖里さんに寄って肩を貸した。徹はなんとか歩けるぐらいには回復したので、移動を再開した。
もう妖怪は、一体も襲って来るどころか、姿すらも見えなかった。
途中で建物と人が見え、でかい壁には門番がおり、検問をしているようだった。
妖里さんは顔パスで俺達の事は妖里さんが説明してくれた。
「さぁ…ついたよ、ここが通常界と…亜空界を繋ぐ…ゲートだよ…」
妖里さんは途切れつつも話した。どうやらさっきの戦いでの消耗が酷かったらしい。でも、その顔はさっきよりかはマシになっていた。もう一人で歩けるくらいには回復もしたようだ。
「ここを通れば妖怪斬りの本部だよ…」
「この先が…」
俺らは前に歩くのを躊躇っていた。本能的何かが通ってはいけないと騒いでいた。
「ほら、通りッな!!」
「「「うわ!!」」」
俺らが躊躇っているのを見て、妖里さんが押して赤い門を通った。
本当に一瞬だったがここに来る時と同じ感覚を感じながら、身体がドロドロに流されている感覚があった。
――――――――――
「あ〜ぁ、明日からどうしよう…」
「どうしようとも、君たちは妖怪斬りになるしかないけどね?」
俺達はあの赤い門を通ってから、妖里さんから呼ばれた係の人に案内されてソファーに妖里さんと対面する形で座っていた。
徹は治療のため、何処かへ連れて行かれていた。
「それに、僕が手取り足取り説明してあげるから、大船に乗ったつもりでいなって!これでも弟子が二人いるから教えた経験もあることだし!」
「妖里さんの弟子ってどのような人達なんですか?」
柚香が、俺も気になっていた事を聞いた。
「う〜ん、一人は体術のまさに天才だね!でも…色々とあって無理させられない子でね。もう一人は努力家だね、地道に修行してるよ?」
「おっ、妖里!そいつらが、アッチで見つかった人達か?」
奥に見える通路から、小刀を腰に携えている人が現れた。
「座実さん!そうです。この子ら、どうせ上の人からとやかく言われるんだし、弟子にしようかなって思ってましてね」
「弟子か…おっと、そういえば自己紹介がまだだったな!俺は
「座実さんは凄腕の妖怪斬りだから、わからないことがあったら聞くと良いよ!」
「何でお前が、得意気に言ってるんだよ…」
「そ、そうですね。私は比留木 柚香です。よろしくお願いします!」
「僕は五十嵐 日里士です。よろしくお願いします」
「五十嵐に…比留木か、よろしくな!それと妖里ちょっと来てくんね?」
「はい?わかりました」
そうしてから、帰ってくるまでは十何分かかったのであった。
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