二話 謎の男

少し経って、少し高めの所から辺りを見回したが、建物の一つもなく、それどころか木すらもほとんどない、本当に荒れ果てた地となっていた。


「本当に何処なんだよここはよ!」


「日里士少し落ち着け、焦っては何も始まらんぞ」


「それは分かってる、それにこれがあの急に人が消える理由だろう…」


「それに、ここじゃ水や食料もないしどうしよう…」


「本当に不味いなったな、他に俺らみたいな人はどうなったんだろうか…」


様々な事を考えては、諦めて辺りを一心不乱に、人がいないか探していた。

そんな時に、マントを被った人が現れており、日里士は恐る恐る警戒しながら近づき、コンタクトをとろうとしに歩いたとき、その男から刃を向けられた。


「君は何者だい?」


さっきまで無かったはずの刀を、その人は手にして、言い放っていた。


「俺は…気づいたらここにいた、ただの学生です…」


「そうか、それじゃあ君の後ろにいる二人も同じかな?」


「っ!そうです…」


その人は、日里士の直ぐ近くに寄って刃を収めた。日里士は俺と柚香の存在を伝えてないのにも関わらず、その人は俺らの存在を言い当てた。普通の人ではないことがそれだけで良く分かる。

俺と柚香も岩陰から出て、面と向かって視認できる位置に立った。日差しは無いのに明るいのを不思議に思ったが、今は気にする事ではない。


「ここにまで、来た経緯を話してくれるとありがたいんだけど?」


「それは…帰り道を歩いていたら狐にあったんです。そして少し経ったらこの場所にいたんだよ!」


「おいおい、気持ちは分かるが僕に押し付けられても何もないぞ、そもそも僕はここの調査に来ただけだし…」


「…あぁ、すいません」


「はい、取り敢えずは分かった、元の場所までは案内しよう」


「本当ですか!?」


柚香が急に喋ったので、俺は少し驚いた。余程焦っていたのだろうか。


「ん?君は…あぁ、なるほど…」


「どうかしました?」


「いや、何でもないこっちの話だ、それと…ここからの道のりは大分あるけど大丈夫かい?」


「体力には自身がありますが…」


「ん…?あぁ、ここにいる化け物なら僕に任せて貰えば良いよ、こう見えても僕は強いからね」


そうは言うが、彼の身体は筋肉質だが細身で、戦闘面では、些か信用に足らない様に俺は感じたが、今はまさに藁にもすがる思いで頼りにしなければ、やっていけない。


「それでっと、そういえば近くになんかおかしな気配があったからね、もしかしたら戦闘になるかもしれないね」


「それって鬼か何かですか?」


「ん、そうだよ、この辺りだとね、出るのはまさに鬼だね」


「それって…実はさっき白い鬼を見たんですが…もしかし「ちょっと待って…白い鬼…マジで?」」


「は、はい?」


「不味いな、白鬼は俺でも勝てるかわからないな、他なら勝てるんだけどな…」


「えっ!?それじゃあ、どうするんですか?」


「う〜ん、隠れながら、ゆっくりと行くって形になるだろうね。そういえば君たち名前聞いてなかったね!」


「俺は日里士です」


「俺は…徹です」


「私は柚香です」


「了解っと…!日里士に徹に柚香ね?僕は妖里ヨウリだ!それじゃあ隠れながら行こう!」


そうして隠れながらの出発となったが、妖里さん曰く「最初の予定よりも隠れながらだし、遅くなるかも」だそうだ。

いずれにしても、油断のできない状況が続いていることだけは間違いじゃない。


少し経って、後が大体半分とまで来た頃に、妖里さんが「急いで隠れて」といい、臨戦態勢となっていた。

そこでもやはり、さっきまで無かったはずの刀を持っていた。何処から出しているのだろうか…?


「おやおや、人間風情が俺様と一騎打ちか?舐められた物だな」


「そうだね…でも君ぐらいなら僕で妥当じゃないかな?」


妖里さんは、目の前の薄橙の肌をした鬼に向かって、煽り気味かつ冷静に話していた。

その後は、怒りの顔に満ちている鬼が先制をかけたが、妖里さんに軽くあしらわれ、反撃を受けて片腕を肘から斬られていた。


「人間如きが!!」


「その人間にやられているのは誰だろうね?」


妖里さんの戦いは一言で言ってしまえば巧みだ。まるで未来が見えているかの様に、敵の攻撃を全て避けきっている。


「くそ!人間如きにコレを!!」


と言い放った直後、鬼は急に自身の手を爪で切り裂いて血を流した。そして、その流血はどんどん流れて行った。

だが急に血が逆流してった。物理法則などを無視して上に登って行き、それは塊となり、気付けば棍棒となっていた。


「なるほどね、妖血か!」


妖里さんの持つ刀はとても長くほぼ真っ直ぐだ。対して、その鬼の持つ血の棍棒は1メートルは簡単に越えるくらいの物だ。まともに当たったら一溜りもないだろう。


「さてと、大詰めかな?」


「おらぁぁ!!」


鬼の振った棍棒が妖里さんの刀に触れたが、すぐに滑り落ちてしまった。

その刹那の間に、妖里さんは刀を片手で持ち、もう片方の手には、地面から生えた刀を持って鬼の胴体を斬り裂いた。

血の塊が落ち、鬼の体から血が辺り飛び散った。

その後に鬼は塵となり消え去っていった。

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