【冬013】価値観の違い

 大学の講義も終わり吉水と二人で寒い寒いなどといいながら大学を後にする。今日の夜はバイトあるの? いや、ねーよ。そっちはあるのかよ。などと話しながらこの後どうするか話をしていたら上からふわふわと白いものが降ってきた。

 雪だ。それを見た瞬間俺は思わずこう口にした。

 

「うわ、最悪」


「やったー! 雪だ」


 最悪と口にした瞬間、吉水のうれしそうな声がかぶさる。そしてお互い顔を見合わせて互いに全く違うことを口にしていたことに気が付いた。ああ、まただ。こいつといるのは楽しいが、なぜかこういった価値観は全く合わない。


「なんでやったー、なんだよ。雪なんて雪かきが大変だし交通機関も乱れて予定に間に合わない。寒いしどう考えてもいいことなんてないだろ」


「いやいや、何言ってるの。このクリスマスの近い時期に雪が降るなんて幻想的でロマンチックじゃん。それだけで気分が盛り上がるし最高以外の何でもないでしょ」


 そういって話す吉水の顔はもう楽しみで仕方ありません、なんて顔をしている。そんな顔をみると、でもお前彼女いないじゃんなんていう突っ込みを言う気も失せてしまう。


「大体さ、田口は考えすぎなんだよ。正月について話をした時だってネガティブなことを言ってさ。正月は美味しいものたくさん食べられるしお店もにぎやかでいいじゃん! 初詣も楽しいし、家でゴロゴロゲームするのもいいでしょ」


「それはお前の家の話だろ。俺の家は親戚の連中がくるからその挨拶して出迎えとかしなくちゃならないからゴロゴロしてられない。それに料理もおせちなんてすぐ食い飽きるし、初詣も何が楽しいんだよ」


「はー、田口は現実的というかなんというか」


 なんで俺はこいつに呆れられなきゃいけないんだ、なんて考えながら道路を歩く。ちなみに行先は結局いつも集まる場所になっているメンバーのアパートだ。ちらちら降る雪をうっとおしく思いながらも俺は傘をささずにいた。

 傘をさしながら横を歩く吉水はさらにこういった。


「バレンタインの時だっていやそうにしてたよな。チョコレートもらえるのうれしいじゃん!」


「それはお前がチョコレート好きだからだろ。俺は甘いもの好きじゃねえし、お返しのものとか気を遣うからめんどくさいんだよ。もういっそ廃止になってくれ」


「それは困る! 俺お菓子作って女の子たちと交換するの楽しみにしてるんだから。というかお返しの心配するとかモテアピールですか?」


「ちげーよボケ」


 そんな話をしながらコンビニに入る。店内は暖かくてほっとする。そしてこれから行く先に持って行くお菓子を二人で選びながらちょっと疑問に思う。こうも正反対な考えをもつ者同士なのになんでこんなにも一緒に居られるのか。

 少し考えた結果、それは俺もこいつもお互いに意見はいうものの、本当に譲れないところや大切なことは否定しないからだろうな。なんて考える。まあこういう関係も悪くはない。実際もう中学生のころからつるんでいるしな。


「クリスマスは結局いつものメンバーみんな予定ないから鍋パしよう鍋パ。きっと楽しいよ」


「そうするか。今日遊びに行ったときその話してみようぜ」

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