【秋010】My favorite item

 私が四季のなかで一番好きな時期がやってきた。それは秋だ。イチョウや紅葉の鮮やかな色、金木製の香り、サツマイモや梨など素敵なものはたくさんある。しかし私が秋が一番好きなのは理由はそれではない。

 秋といえばファッションだ。茶色のチェック柄や赤いスカート、深い緑色のカーディガン、ベレー帽、金木製の香りの香水にブラウン系のネイル。どれもこれも素敵なものばかりだ。


 今日は見事な秋晴れのため、自分のお気に入れのアイテムを身にまとって出かける。アイボリー色をした長袖ブラウスに茶色のチェックスカート、そして同じくアイボリー色をしたかぎ網ニットを羽織り、ボルドーのショルダーバックを肩にかける。

 そしてお次はメイクをする。全体的にブラウンベースで決めよう。リップはマットな赤い色を塗ることで一気に華やかな印象に。そして香水は足首に金木製の香りを少しだけかけることで強く主張をしないようにする。

 最後に姿見を見て完成。これでばっちり……、なはずなのに、何か物足りない。そうだ靴だ。今日履いていくボルドーのスエードパンプスもいいけれど、この服にあうもっといい靴があるはずだ。せっかくだから今日はそれを探しに出かけようと決めて街に出かける。


 街は黄色や緑、赤など秋の色でいっぱいで思わず心が躍る。時々見かけるハロウィンの装飾だって可愛い。ハロウィンのコスプレなんて微塵も興味はないけれど、飾りだけなら素敵だなって思える。

 そんな浮ついた気持ちで街中を歩いていくつかパンプスやブーツを見てまわる。どれもこれも素敵なものだけど、この服にぴったり、びびっとくる感覚はない。少し休憩しようかなと思ってちょっと路地裏に入ってみると、そこには普段入らないような小さいけれど少しお高そうな靴を売っている店があった。

 ショーウィンドウに飾られた靴たちはどれも素敵なものばかりだ。高そうだけれど入ってみることに。


「いらっしゃいませ」


 男性スタッフが頭を下げて出迎える。私も少し頭を下げてお店に入り中を見てみると、そこには焦げ茶色の編み上げブーツが置いてあった。私はそれを見た瞬間、電流が走ったかのようにびびっと何かを感じた。これだ、きっと私が求めていたのはこれなんだ。

 どこか大正ロマンを感じさせるようなそのブーツをはかせてもらえないかと先ほどのスタッフの方にお願いをし、履いてみることに。すると足の形にもフィットして、歩くのも楽ちんだ。そして姿見をみて今日のコーディネートと一緒に見てみると、もうこれ以外の靴と合わせることなんて考えられなくなった。

 一瞬でこのブーツのとりこになった私はスタッフの方に値段を聞く。すると普段私が買う靴よりもずっと高いお値段であるという。さすがにこれは躊躇う。どうしようか、と悩んでいるとスタッフの方からこんなことを聞かれた。


「普段はどのようなお洋服を着ていられますか?」


 その質問に私はシックな服かガーリー系の服をよく着ること、ロングスカートが多いこと、この時期は深い緑色のものを身に着けることが多く、小物は赤系を身にまとうことが多いなど色々話をした。それを聞いたスタッフの方はこうアドバイスをくれた。


「それでしたらこのブーツはおすすめですね。編み上げブーツですがそこまで高さはないためロングのスカートからちらりと見える編み上げが素敵ですし、色も緑色や赤色とも相性がいいです」


 その言葉を聞いて私はこのブーツを買うことを決意した。買ったときにタグをとってもらい、今履いているパンプスが入る袋をもらう。スタッフの方にお礼を言って今日買った編み上げブーツを履いて外に出る。

 お気に入りを身に着けた私は今日も最高にかわいいと思うことができるのだ。

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