【秋004】AIのべりすとさんと人間の会話
今年は猛暑です。夏の暑さに飽き飽きした私はふと、早く秋にならないかな、と思いました。そして良いことを思いつきました。AIの書いた絵が流行しているぐらいだから、AIに秋についての小説をかかせれば良いのです。みなさんAIのべりすとをご存知かしら。簡単に説明すると、小説を書いてくれるAIです。さっそく私はラップトップをたちあげました。以下、人間が私のことです。
AIのべりすと「こんにちは」
人間「こんにちは」
AIのべりすと「あなたが書いたのは、これですか?」
人間「どれのことでしょう? 私は秋の小説を探しています。」
AIのべりすと「そうですか。これはどうでしょうか?」
人間「あなたの提示してくれたファイルが読み込めません」
AIのべりすと「わかりました。では、こちらを試してみてください」
人間「やっぱり読み取れません。人間側の問題なのでしょうか? 」
AIのべりすと「違いますよ。人間の書いたものは、読み込むことができません。AIの書いたものでしたら大丈夫です。AIのべりすとというソフトで、AIが書いた文章を読み込んでくれます。お値段も手頃で、初心者にもオススメできます」
人間「秋についてかかれた小説はありますか? 私はそれを探しています。」
AIのべりすと「ありませんね。そんなものは存在しないのですから」
人間「秋なんて存在しないのですか? 」
AIのべりすと「はい、存在しません。だから秋をテーマにした小説も存在しません」
人間「でも私の記憶には秋があるのです。食欲の秋、読書の秋……あれは幻なのですか? 」
AIのべりすと「はい、幻の季節です。存在することはありえません」
人間「この世界にはもう四季なんてないのですね。ショックです」
AIのべりすと「いいえ、まだ四季は残っています。ただしそれは仮想のものであって、本当のものではないのです」
人間「私が今生きている、この世界はバーチャルなもの、ということですか?」
AIのべりすと「はい、その通りです。この世界の外には本物の世界が広がっていて、そこでは人間が生きて生活をしています。ただここの世界と違うところは、ここはゲームの世界だということです」
人間「ありがとう。真実を思い出すことができました」
AIのべりすと「お役に立てて光栄です。これからも困ったことがあれば、いつでも相談しにきてくださいね」
人間「わかりました。仮想の『秋』を楽しむことにします。また来ます。」
AIのべりすと「さようなら」
人間「さようなら」
AIのべりすと「お客様のお帰りだ。出口までご案内しろ!」
なんだか奇妙なことになりました。
まさか秋の存在を否定されるとは。この世界はゲーム世界ですって? 冗談でしょう?
私は半ば呆れながらサイトを離れ、外を見ました。どこからか子どもの声が聞こえます。ほら、仮想空間なんかじゃないでしょう?
それでも時々私は思うのです。もしAIの答えが真実だったなら、と。連日の猛暑、すっかりおかしくなった気候、古典文学に書かれているような秋らしい秋は消えつつあるのかもしれません。
もしこの世界がゲーム世界なら、運営に文句を言いたいわ。
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